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色気に圧倒される中上健次の凄まじいマスターピース7冊

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 暗い過去を投影した私小説と、土の匂いのする幻想小説

被差別部落の出身であり、部落のことを「路地」と表現する。羽田空港などで肉体労働に従事したのち、執筆に専念する。初期は大江健三郎や石原慎太郎といった当時の新進作家から文体的な影響を受けた。
後に知り合った年長の友人である柄谷行人から薦められたウィリアム・フォークナーの影響で先鋭的かつ土俗的な方法論を確立、紀州熊野を舞台にした数々の小説を描き、ひとつの血族と「路地」のなかの共同体を中心にした「紀州サーガ」とよばれる独特の土着的な作品世界を作り上げた。
1976年(昭和51年)、『岬』で第74回芥川賞を受賞、戦後生まれで初の芥川賞作家となった。1992年、腎臓癌の悪化により46歳で死去した。
中上健次 - Wikipedia

フォークナーから多大な影響を受け、熊野のフォークナーを自称していた中上健次。大江健三郎石原慎太郎などにも影響を受けた、男臭さがそこかしこに感じます。一方で谷崎潤一郎に憧れていたという面もあって、そこがまた底知れない深みを与えているんですよね。
また、極道の生みの父親と自殺した腹違いの兄、複雑な血縁関係などを語る私小説的な小説や、地元である被部落差別"路地"をテーマにした、幻想的で神話的とさえ言われる熊野サーガシリーズ、などを描いているのですが、共通して言えるのは、その強烈な色気でしょう。直接的な性描写ももちろんそうですが、あまりに土の香りのする性衝動や色恋沙汰の数々が、作者自身の色気を感じさせます。(実は素朴だったという噂もありますが)
読んで幸せになれるかと言われればNOでしょう。ただし、圧倒的な芸術に、恍惚できるはず。
この記事では中上健次のおすすめ小説ベスト7をランキング形式で紹介します!

目次

ランキング

  • 独自ランキング
  • 繰り返される壮絶な幼少期のエピソードが強烈に胸に残る
  • 色気がむせかえるほどで苦手な人には辛いかも

 

それではランキングどうぞ!

7位 千年の愉楽

 

熊野の山々の迫る紀州南端の地を舞台に、高貴で不吉な血の宿命を分つ若者たち―色事師、荒くれ、夜盗、ヤクザら―の生と死を、神話的世界を通して過去・現在・未来に自在にうつし出し、新しい物語文学の誕生と謳われる名作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4309403506

オリュウノオバの目を通して描かれる現実の世界・死の世界ごちゃまぜになったような語り口が、神話的なイメージを想起します。
被部落差別の路地だけの物語なのに、これだけ深遠で広がりのある世界観を構築できる技量に感嘆の念を禁じえません。力のこもった作品です。

6位 水の女

 

無頼の男の荒ぶる性と、流浪の女の哀しき性―。獣のように性を貪りつくそうとする男たちに対し、ある女は、自らの過去を封印し、その性に溺れ、またある女は、儚い運命のなかにそれを溶かし込む。またある女は、男の性を弄ぶ。
紀伊を舞台に、土俗的世界に生きる男女の性愛を真正面から描いた傑作短篇五作。緊密な弾力のある文体で、性の陰翳と人間の内部の闇を描破した中上文学の極北。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062900939

中上健次が本気を出してポルノ作品を書いた力作官能小説(嘘)。
猿のように交わりまくっているのですが、男たちが本当に粗野で汚い。女性も淫乱で、性描写は読んでられないような痛々しいものもありますが、人間の本能がむき出しになる感覚がおもしろいです。
現代の都会の暮らしからは相当遠いところに位置する小説なので、そういうのが苦手な人にはおすすめしません。 

5位 十九歳の地図

 

予備校生のノートに記された地図と、そこに書き込まれていく×印。東京で生活する少年の拠り所なき鬱屈を瑞々しい筆致で捉えた青春小説の金字塔「十九歳の地図」、デビュー作「一番はじめの出来事」他「蝸牛」「補陀落」を収録。戦後日本文学を代表する作家の第一作品集。
https://www.amazon.co.jp/dp/4309413404

尾崎豊"十七歳の地図"は、これに影響を受けたと言われています。
十九という年齢は特別な響きを持ちます。高校を出、社会に出るのか大学に行くのか、まだまだ何者でもない年齢です。
しかし、この小説に描かれる頃の十九歳はもっと特別でした。もっとみんなが貧乏で、何かを変えようと必死で、諦めていないのです。だからこそ悔しさがあり、恥があり、虚無感があるのです。 

4位 化粧

 

若き中上健次が、根の国・熊野の、闇と光、夢と現、死と生、聖と賤のはざまで漂泊する、若き囚われの魂の行脚を、多層な鮮烈なイメージに捉えようとして懸命に疾走する。“物語”回復という大きなテーマに敢えて挑戦する力業。短篇連作『熊野集』、秀作『枯木灘』に繋ぐ、清新な15の力篇。
https://www.amazon.co.jp/dp/406196237X

"熊野サーガ"が生まれる瞬間を感じさせる作品たちが味わえます。
中上作品に繰り返し出てくる兄の自殺のエピソード、熊野の地の神話的な世界観を何度も重ねることで、頭がぼうっとしてくるはず。ことごとく潰される身体の痛みのイメージも生生しく訴えてきます。 

3位 枯木灘

 

自然に生きる人間の原型と向き合い、現実と物語のダイナミズムを現代に甦えらせた著者初の長篇小説。毎日出版文化賞と芸術選奨文部大臣新人賞に輝いた新文学世代の記念碑的な大作!
https://www.amazon.co.jp/dp/4309400027

日本文学界に輝く名作と称されることもある本作。
三島由紀夫のロマンをとことん土臭くして、谷崎の異常性欲をドロドロに生々しくしていくとこんな風な小説が出来上がるんでしょうか。極道のような実の父親、腹違いの兄弟たちや妾、娼婦のようなものたち......etc、中上作品で繰り返される同じエピソード・モチーフが使われていますが、他の作品と比べると、構成的にも完成された作品になっているので、まずはこれを読むのが良いかもしれません。 

2位 紀伊物語

 

道子の母は尾鷲の方から大島に女郎として売られて来た。父と知りあい、道子を産んで間もなく男と出奔した。十九歳の道子は、母が女郎でも、淫売でもかまわなかった。自分の乳房、腹、脚のどこに母の血が流れているのか、腕を思い切り噛んで、すすり泣いた。…大島、古座、新宮を舞台に道子が辿る愛欲の軌跡。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087498913

性欲のおもむくままに交わるヒロイン道子が、すごい筆力で描かれています。どうやったらこんな風に描けるんだろう。現代の草食っぽい文学からすると、中上健次の描く性は、相当異質です。ソフトな文学ばかり読んでいる読書家はかなりショッキングなはず。
熊野サーガ全部読まないと全ての魅力はわからないかもしれませんが、単体でも相当読み応えがあります。

1位 岬

 

この作家の郷里紀州を舞台にのがれがたい血の宿命の中に閉じこめめれた一青年の渇望と愛憎を、鮮烈な文体で描き出し、広く感動を呼ぶ芥川賞受賞作。他四篇
https://www.amazon.co.jp/dp/416720701X

他の3つの収録作はただの良作短編、もしくは駄作レベルですが、表題作『岬』が異様に輝いています。
いや、『黄金比の朝』のモラトリアム感、『火宅』のどうしようもない暴力性の発露なんかは確かに唸らされました。けれど『岬』のインパクトが半端ない。完成されています。題材は中上健次お得意の危険な海の父親、自殺した兄弟、そして複雑な家族、というものです。ですが、物語としての完成度がピカ一。
熊野のフォークナーとして、日本文学界に燦然と輝く作品を残してくれました。ぜひ読んでみてください。 

おわりに

中上健次のおすすめ小説7作品をランキング形式で紹介しました!
極道の生みむせ返るようなの父親が及ぼしている陰がそこかしこに現れて、むせ返すような嫌らしさを醸し出しているので、読む人によっては受け付けないかもしれません。
しかし、それを補ってあり余るほどの色気と土臭く幻想的な作品群は、いつ読んでも感動すら覚えます。労働が鍛えたソリッドな魂をぜひ感じてみてください。

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