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「持ってない」全ての人が読むべき西村賢太の底辺小説5つ

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壮絶な貧困生活と自らの卑俗さの暴露に圧倒

2003年夏、同人雑誌『煉瓦』に参加して小説を書き始める。
2004年、『煉瓦』第30号(同年7月)に発表した「けがれなき酒のへど」が『文學界』12月号に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出される。同年に『煉瓦』を退会。
2006年、「どうで死ぬ身の一踊り」で第134回芥川賞候補、「一夜」で第32回川端康成文学賞候補、『どうで死ぬ身の一踊り』で第19回三島由紀夫賞候補となる。2007年、『暗渠の宿』で第29回野間文芸新人賞受賞。
2008年、「小銭をかぞえる」で第138回芥川賞候補。
2009年、「廃疾かかえて」で第35回川端康成文学賞候補。
2011年、「苦役列車」で第144回芥川賞受賞。芥川賞受賞後の2011年7月には、「この受賞の流れを逃したら次はない」という自身の提案で新潮社から清造の代表作『根津権現裏』を新潮文庫より復刊させた。
2012年には同文庫より、自ら編集した「藤澤清造短篇集」を刊行。芥川賞受賞会見における「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」との発言が話題を呼び、同賞受賞以後はワタナベエンターテインメントに所属している。
西村の作風は強烈な私小説である。また「瘡瘢旅行」で、敬愛する藤澤清造は「小説家」ではなく「私小説家」だと呼んでいる。
西村賢太 - Wikipedia

西村賢太はテレビで見たことがある、とても変わった人だよな......未読の方はそういうイメージがあるのではないでしょうか。テレビでもあけっぴろげに風俗の話や、お金の話、自らの下衆さをわざと誇示するような姿勢がおもしろい作家ですよね。
私小説と呼ばれる、自らの実体験にかなり接近して書くスタイルの小説家なんですが、この人の人生がまたものすごいので小説もものすごいことになっています。読書家にとっては、初めて読んだときには現代の小説化でこのような人がいたのだ、と奇跡的な感激を覚えたはず。
"社会のド底辺"を這いつくばってきたという壮絶な生活と、徹底的に卑俗な自分をさらけ出す姿勢には圧倒されるはず!
この記事では西村賢太のおすすめ小説5作品をランキング形式で紹介します!

 

目次

ランキング

選定にあたってのランキングポリシーと雑感を下記↓

  • 独自ランキング
  • 底辺を這いつくばっている”持たざるもの”の描写は衝撃的
  • 今は金持ってんじゃねえかと思って読むとおもしろさは激減

 

それではランキングどうぞ!

5位 どうで死ぬ身の一踊り

 

非運の長期に散った、大正期の私小説家・藤澤清造。その作品と人物像に魅かれ、すがりつく男の現世における魂の彷徨は、惨めながらも強靱な捨て身の意志を伴うものであった。―
同人誌時代の処女作「墓前生活」、商業誌初登場作の「一夜」を併録した、問題の第一創作集。賛否と好悪が明確に分かれる本書には、現代私小説の旗手・西村賢太の文学的原点があまねく指し示されている。
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圧倒。ただその一言です。
西村賢太は、私小説、それもかなり濃い私小説作家ですが、本作ではどう考えても西村賢太自身の卑しい面が最大限押し出されています。ここまで自分のことを卑下するなんて、相当なマゾヒストなんですよね笑
ただ、そんなことをできる作家は今の日本では相当稀有な存在で、無頼さが凄まじく感じられます。それでいて文体も読ませるんですよね。当たり前ですけど、相当本読んでますこの人。

4位 瘡瘢旅行

 

現代人の臓腑を震撼させる、渾身の私小説
ようやく巡り会った女との同棲。手放したくない女に邪推と怒りをぶつける男。もはやこれは宿痾というべきものなのか。野間文芸新人賞受賞作家の最新作品集。

https://www.amazon.co.jp/dp/4062156768

多くの作品でも同じことが言えますが、誰しもが最低な主人公に振り回される秋恵に感情移入し、助けたくなってしまうはず。
ただし、ここまで自覚的に自らの悪行を吐露するということは、西村賢太なりに、贖罪の意味を込めているんでしょうね。
また、読んでて苦しくなるのは読者の我々が、西村賢太よりも圧倒的に恵まれた環境でぬくぬくと育ってきたからに他ならないんだろうなとふと考えさせられます。この圧倒的な不幸が芸術を生んだのだと思うとすごく複雑な気持ちになります。

3位 小銭をかぞえる

 

女にもてない「私」がようやくめぐりあい、相思相愛になった女。しかし、「私」の生来の暴言、暴力によって、女との同棲生活は緊張をはらんだものになっていく。金をめぐる女との掛け合いが絶妙な表題作に、女が溺愛するぬいぐるみが悲惨な結末をむかえる「焼却炉行き赤ん坊」を併録。新しい私小説の誕生。
https://www.amazon.co.jp/dp/416781501X

かなりポップに練られた作品。芥川賞を受賞後の作品なので、少しプロ意識が芽生えたのでしょうか。読者に少し寄り添っている気がします。親切な小説です。まぁいつも通りイライラしちゃうのは間違いないですけどね笑
貧乏の底にいる最低な男の悲惨さがなぜか笑えるしかけがgood!

2位 疒(やまいだれ)の歌

 

中卒で家出しその日暮らしをしていた北町貫多は、十九歳にして心機一転を図ろうとした。横浜で新しい仕事を得、片恋する相手も見つけ、人生の軌道修正も図れるかと思いきや、ほどなく激しい失意が訪れる。そのとき彼の心の援軍となったのは、或る私小説家の本だった―。
暗い青春の軌道を描く長篇私小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/4103032367

待望の長編!本格派の小説です。
短編の、駄目すぎて笑えるエピソード集も良いのですが、長編はもっと物語が深く掘り下げられて良いです。本作では、何と言ってもいつもより(いつもと違って?)文学に目覚める、というか文学しかない!文学だけが支えだ、と決意し、文学とともに生きることになるのであろうその一瞬が描かれていて素敵なんですよね。おすすめです。

1位 苦役列車

 

劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。
後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101312842

芥川賞受賞作の表題作が良い。
ここから読み始める読者もたくさんいると思います。
圧倒的に底辺に生きる10代最後の主人公は、自意識だけが肥大している厄介な若者です。労働・酒びたりのの部分だけを見ると、ブコウスキーを思い出さないこともないのですが、ブコウスキの主人公と比較しても、圧倒的に女成分が足りない。笑
読んでて辛くなるところもあるんですが、なぜか応援してしまうのは、主人公がどうしようもないなりに、自らの信念を貫いている、もしくは貫こうとしているのを感じるから。
この姿勢が芥川賞を取るまでになるには相当の時間がかかるのですが、わずかに差し込む光が、可能性が見られて良いんです。おすすめです。

おわりに

自らの壮絶な半生に再接近して書くスタイルの私小説は、誇張がされているとはいえ、全うに生きている人間からすれば驚くべき事件が普通に起こります。
その中に漂う孤独感と喪失感、そしてほんの僅かにのぞく文学への希望が胸をうつんですよね。とにかく読む前と読む後で大きく西村賢太への評価が変わるはず。ぜひお試しください。

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