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ノーベル文学賞作家大江健三郎の今読んでも楽しいおすすめ12冊

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はじめに:日本にたった2人しかいないノーベル文学賞受賞者

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ノーベル文学賞。

村上春樹が取る、取るといわれ、オッズでも1位に予想されるなどしながら長年取れないでいますが、過去に受賞した人をご存知でしょうか。

一人は川端康成、そしてもう一人が、この記事で紹介する大江健三郎です。
戦後日本文学界は世界的に見ても才能に満ち溢れた作家が多く存在していました。ノーベル賞の候補となっただけでも、川端康成(受賞)、谷崎潤一郎、三島由紀夫、安部公房、そして大江健三郎(受賞)と、そうそうたる顔ぶれです。
少しずつ世代は違ったりもしますが、しのぎを削っていたんですかね。日本文学の現状はそう考えると少し勢いを無くしているように思います。賞が全てではありませんが、まずは村上春樹、ノーベル文学賞とって欲しいものです。
さて、この記事ではそんな日本文学黄金期の中でも若くから天才的な煌めきを残し、今なお執筆を続ける大江健三郎のおすすめ作品を紹介していきたいと思います。

 

目次

 

略歴&受賞歴

大江健三郎って誰?って人のために略歴をwikiから↓↓

東京大学文学部フランス文学科卒。大学在学中の1958年、「飼育」により当時最年少の23歳で芥川賞を受賞。サルトルの実存主義の影響を受けた作家として登場し、戦後日本の閉塞感と恐怖をグロテスクな性のイメージを用いて描き、石原慎太郎、開高健とともに第三の新人の後を受ける新世代の作家と目される。

その後、豊富な外国文学の読書経験などにより独特の文体を練り上げていき、核や国家主義などの人類的な問題と、故郷である四国の森や、知的障害者である長男(作曲家の大江光)との交流といった自身の「個人的な体験」、更に豊富な読書から得たさまざまな経験や思想を換骨奪胎して織り込み、それらを多重的に輻輳させた世界観を作り上げた。作品の根幹にまで関わる先人たちのテクストの援用、限定的な舞台において広く人類的な問題群を思考するなどの手法も大きな特徴として挙げられる。1994年、日本文学史上において2人目のノーベル文学賞受賞者となった。

主な長編作品に『芽むしり仔撃ち』『個人的な体験』『万延元年のフットボール』『洪水はわが魂に及び』『同時代ゲーム』『新しい人よ眼ざめよ』『懐かしい年への手紙』など。1995年に『燃えあがる緑の木』三部作完結、これをもって最後の小説執筆としていたが、武満徹への弔辞で発言を撤回し執筆を再開。以降の『宙返り』から、『取り替え子(チェンジリング)』に始まる『おかしな二人組(スウード・カップル)』三部作などの作品は自ら「後期の仕事(レイト・ワーク)」と位置づけている。また戦後民主主義の支持者として社会参加の意識が強く、国内外における問題や事件への発言を積極的に行っているが、その独特の視座における発言が議論を呼ぶこともある。

 

主な受賞歴

  • 芥川龍之介賞(1958年)
  • 新潮社文学賞(1964年)
  • 谷崎潤一郎賞(1967年)
  • 野間文芸賞(1973年)
  • 読売文学賞(1983年)
  • 大佛次郎賞(1983年)
  • 川端康成文学賞(1984年)
  • 伊藤整文学賞(1990年)
  • ノーベル文学賞(1994年)
  • 朝日賞(1995年)
  • レジオンドヌール勲章(コマンドゥール)(2002年)


配偶者 大江ゆかり
子供 大江光(長男)
親族 伊丹万作(岳父)
伊丹十三(義兄)

 

長くなってしまいましたが、 ここからおすすめ作品どうぞ!!

1. 見るまえに跳べ 

処女作『奇妙な仕事』から3年後の『下降生活者』まで、時代の旗手としての名声と悪評の洪水の中、充実した歩みを始めた時期の秀作10編。“政治と性”の主題を初めて取り上げ、屈伏感と自己欺瞞の意識に苦悩する同時代の青年の内面を文学に定着させた表題作、政治における挫折の問題に挑んだ『後退青年研究所』ほか、『鳩』『ここより他の場所』『上機嫌』戯曲『動物倉庫』など。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BYR6

初期の名作短編を多数収めた良質な短編集です。文学に政治を持ち込んでおり、テーマ的に難しい作品もありますが、物語としては短編なのでさくっと読めるはず。大江健三郎が晩年まで取り扱うことになるテーマをのぞき見できるでしょう。

 『動物倉庫』、『見るまえに翔べ』など、初期の名作は味わい深くてきっと印象に残るでしょう。また、『奇妙な仕事』は大江の長い小説家としての歴史の一歩を刻む記念碑的作品。必読です。

 

2. 死者の奢り・飼育

死体処理室の水槽に浮沈する死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、傍観者への嫌悪と侮蔑をこめた「人間の羊」など6編を収める。“閉ざされた壁のなかに生きている状態”を論理的な骨格と動的なうねりをもつ文体で描いた、芥川賞受賞当時の輝ける作品集。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BY6W

『死者の奢り』は、大江健三郎の入門書として最適です。
死の臭いが文字から湧き出てくるような圧倒的体験が味わえます。暗い青春時代を送った人、悩みを抱えて生きていた人に語りかける名作短編です。
『飼育』は芥川賞受賞の名作。子どもが物語を終える頃には大人になっている、という基本的な構成の物語です。子どもの純粋な心と、大人の汚さ、いや、知恵とでも言いましょうか。そのギャップがじわじわと、心に沁みます。

 

3. 芽むしり仔撃ち

絶望的な"閉ざされた"状況にあって、疎外された少年たちが築き上げる奇妙な連帯感。知的な抒情と劇的な展開に、監禁された状況下の人間存在という戦後的主題を鮮やかに定着させた長編。ノーベル賞を受賞した大江健三郎の処女長編。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BYA8

小難しいことを語るイメージの大きい大江健三郎ですが、本作は単純に物語としておもしろいです。子供だけの『帝国』って、いつの時代も、どんな国の小説でもわくわくしますよね。

世界中に似たような設定の物語はありますが、本作はその劇的な展開からウィリアム・ゴールディング『蝿の王』との類似性が語られます。蠅の王が好きな人は必読!

 

こんな小説を23,4歳そこそこの青年が書いたなんて、にわかには信じがたいです。レベルが違う。 

4. 万延元年のフットボール

友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満ちた登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長篇。谷崎賞受賞。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00GY19N66

ノーベル賞を受賞する要因ともなったと言われる作品で、日本文学の最高峰と称される傑作小説。これを32歳で書いたんだから凄まじい才能ですね。もう想像ができません。
この作品での独特すぎる文体は悪文とも言われるほどで、大いに議論を呼び、評価がわかれることになってしまいました。
人びとの心に爪痕を遺したことこそが、日本文学の最高峰と称されるまでの評価も得た所以なのかもしれません。
なんだかんだ言いましたが、日本文学史上に残る名作なので超おすすめ!

5. 燃えあがる緑の木

 

 

百年近く生きたお祖母ちゃん(オーバー)の死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BZ98

この作品が最後の小説となる可能性もありましたが、後に撤回されました。よかった。大江史上最長の長編小説です。最後の小説のつもりだった、本作の第二部が出た後に、ノーベル賞受賞が決まったという劇的な展開。
また、優れた小説は現実の一歩先を歩む、未来を映し出すと言いますが、この小説が出た後にオウム真理教のサリン事件などが起きてしまいました。文学的天才(かつ変態)が魂について死力を尽くして書いた傑作です。

 

6. 洪水はわが魂に及び 

 

50種の野鳥の声を識別する知恵遅れの幼児ジンと共に、武蔵野台地の核避難所跡に立て籠り、「樹木の魂」「鯨の魂」と交感する大木勇魚(いさな)。世界の終末に臨んでなお救済を求めず、自らの破滅に向って突き進む「自由航海団」の若者たち……。世代を異にする両者の対立・協同のうちに、明日なき人類の嘆きと怒り、畏れと祈りをパセティックに描いて、野間文芸賞を得た渾身の純文学巨編。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BYZS

無性に大江健三郎が読みたくなる時ってあるんですよね。例えばそれはとてつもなく幸福だった日々の中のふとした瞬間だったり、暇で仕方ない布団の上だったり。
つまり絶望を求める時に読みたくなるのです。そんなことあるわけないと思う方、大江作品を何度か読んでみてください。 その気持ちがわかるかも。

7. 新しい人よ眼ざめよ 

障害を持つ長男イーヨーとの「共生」を、イギリスの神秘主義詩人ブレイクの詩を媒介にして描いた連作短編集。作品の背後に死の定義を沈め、家族とのなにげない日常を瑞々しい筆致で表出しながら、過去と未来を展望して危機の時代の人間の<再生>を希求する、誠実で柔らかな魂の小説。大佛次郎賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4061837540

連作短編なので一作ずつに区切りがまぁあるので、読みやすいです。ただし、連作になっていて、重厚感もあるので、こういうのから読み始めるのも悪くないかもしれませんね。とっつきやすいかも。
脂の乗った時期の作品ではあるし、オススメですよ。 

8. 同時代ゲーム 

海に向って追放された武士の集団が、川を遡って、四国の山奥に《村=国=家=小宇宙》を創建し、長い〈自由時代〉のあと、大日本帝国と全面戦争に突入した!? 壊す人、アポ爺、ペリ爺、オシコメ、シリメ、「木から降りん人」等々、奇体な人物を操り出しながら、父=神主の息子〈僕〉が双生児の妹に向けて語る、一族の神話と歴史。得意な作家的想像力が構築した、現代文学の収穫1000枚。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BZ2A

有名作かつ代表作のひとつと言ってもいい『同時代ゲーム』。しかし、正直この記事に入れようかどうか迷いました。

とにかく読みにくいです。笑 スイッチが入るまで、おもしろさを掴むまでが、長い。正直に言って、苦痛ですらあります。

しかし、大江の思想や信念が浮かび上がってきていて、読み終えると感動すら覚えるでしょう。(或いは安心感?)乗り越えられる自信が出来てから挑んでください。

 

9. 懐かしい年への手紙

郷里の村の森を出、都会で作家になった語り手の「僕」。その森に魂のコミューンを築こうとする「ギー兄さん」。2人の“分身”の交流の裡に、「いままで生きてきたこと、書いてきたこと、考えたこと」のおよそ総てを注ぎ込んで“わが人生”の自己検証を試みた壮大なる“自伝”小説。『万延元年のフットボール』『同時代ゲーム』に続きその“祈りと再生”の主題を深め極めた画期的長篇。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00GY19MJY

大江健三郎の過去作が次々と(直接間接問わず)言及されているので、いきなり読むことはオススメしません。いわゆるメタ小説です。

 

私の知る限りでも、この作品をベストと言う人も数多くいるほど、大江ファンからは人気の作品なので、『芽むしり仔撃ち』、『万延元年のフットボール』、『同時代ゲーム』などが気に入ったら絶対読むべし!

 

10. 個人的な体験

わが子が頭部に異常をそなえて生れてきたと知らされて、アフリカへの冒険旅行を夢みていた鳥(バード)は、深甚な恐怖感に囚われた。嬰児の死を願って火見子と性の逸楽に耽ける背徳と絶望の日々……。狂気の淵に瀕した現代人に、再生の希望はあるのか? 暗澹たる地獄廻りの果てに自らの運命を引き受けるに至った青年の魂の遍歴を描破して、大江文学の新展開を告知した記念碑的な書下ろし長編。 
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IP4BYW6

自身も障害を持つ 子どもを持つ父親として、私小説からは遠いものの、自らの人生への覚悟を持って書かれた意欲作です。この当たりから、作品内でも苦境を逃げるのではなく、立ち向かって受け入れていくようになっていきます。

村上春樹もデタッチメントからコミットメントへと変革を遂げていきましたが、大江もまた自らの運命を受け入れたのでしょうか。


作品自体はなかなかクレイジーな主人公や、周囲の人物がパンチを効かせています。ヒリヒリとする痛みを感じながらラストまで読んでください。

 

11. 取り替え子

国際的な作家古義人(こぎと)の義兄で映画監督の吾良(ごろう)が自殺した。動機に不審を抱き鬱々と暮らす古義人は悲哀から逃れるようにドイツへ発つが、そこで偶然吾良の死の手掛かりを得、徐々に真実が立ち現れる。ヤクザの襲撃、性的遍歴、半世紀前の四国での衝撃的な事件…大きな喪失を新生の希望へと繋ぐ、感動の長篇!
https://www.amazon.co.jp/dp/B00PS2FM9E

後期の大江作品は、色んな意味でメタ的な要素を多数孕んでいます。自らをモチーフにした主人公や、実在する人物を堂々と作品に登場させ、自身の作品について語り、再構築する、まさに書くことで思考し、思考を更に芸術にするという作業を行っているのです。


くどくどした文体も年を経てすっきりしてとても読みやすいです。おすすめ。

 

12. 水死 

母の死後10年を経て、父の資料が詰め込まれている「赤革のトランク」が遺言によって引き渡されるのを機に、生涯の主題だった「水死小説」に取り組む作家・長江古義人(ちょうこうこぎと)。そこに彼の作品を演劇化してきた劇団「穴居人(ザ・ケイヴ・マン)」の女優ウナイコが現れて協同作業を申し入れる。「森」の神話と現代史を結ぶ長編小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00B1N5DQ6

大江が70代半ばの頃に発表された作品。

相変わらず自身の化身であるコギトを出演させていますが、少し彼に厳しく当たり過ぎではないですか?というくらいにお寒い感じで描かれています。過去の作品や過去を自罰的、自己批判的に捉えて思考をしているのはわかるのですが、やりすぎでは。。。笑

 父と子、という大江健三郎を語る時でとても大切な関係性について描かれています。

 

おわりに

初期の作品は読みづらく、後期の作品は読みやすいが、初期作品含む過去作がたくさん出てくる(過去作を知っておくと楽しい) 、という大変な小説家ですが、もう次は村上春樹以外ではいつ出るのかというくらいのノーベル文学賞受賞作家ですから(大江はもう80を過ぎ90へ、と、もうご高齢なんですが、村上春樹も70越えてきてるんですよね。獲れるのかしら)、かなり唸らされる作品ばかりです。

読みやすいものからチャレンジしてみてください!

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