イスラム批判がきっかけで暗殺対象として狙われ警察の保護下へ
世界的人気を誇り、日本でも既に7冊が翻訳されている、フランス人ベストセラー作家ミシェル・ウェルベック。
過激な言動が行き過ぎて、”イスラム過激派に暗殺される恐れがある”、として警察の保護下に置かれたりもしました。事の顛末は下記wikiの引用より。
2015年1月7日、「2022年にムスリムがマリーヌ・ル・ペンを破ってフランス大統領となる」という近未来小説『服従』を発表したが、奇しくもその日にシャルリー・エブド襲撃事件が起きた。同日発売されていたシャルリー・エブドの一面には『2015年に私は歯を失い、2022年に私は断食をする』と言うウエルベックの戯画が掲載されていた。その上、ウエルベック自身がたびたびイスラム教を批判していたこともあって国内外で大きな反響を呼びフランス国内で60万部を超えるベストセラーになったが、彼の友人のエコノミスト、ベルナール・マリス(フランス語版)が事件で殺害されたことを受け、ウエルベックは『服従』の広報活動を中止した。同年1月27日、ウエルベックは警察の保護下に入ったと伝えられている。その後、1月末にウエルベックは姿を現し、「我々には火に油を注ぐ権利がある」と発言した。
そして『服従』は、同年11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件の背景を理解する上で貴重な視点を提供する作品と称されることとなった。
これだけ人を苛立たせたり、話題になったりするということは、小説にとてつもないパワーがあるはず。実際、読んでみるとものすごいパワー!あと変態性が極まってる。笑
この記事ではミシェル・ウエルベックの過激な7作品のおもしろさを、過激ポイントとともに紹介します!
目次
- イスラム批判がきっかけで暗殺対象として狙われ警察の保護下へ
- 変態性がカルト的人気『闘争領域の拡大』
- フランス文壇を変えた傑作『素粒子』
- 次作への助走の中に見える変態性『ランサローテ島』
- セックスツーリズムで世界に痛烈な一撃『プラットフォーム』
- ひきこもりこじらせ男がキモイ『ある島の可能性』
- 自分を殺した『地図と領土』
- 暗殺ターゲットへの引き金を引いた『服従』
- おわりに
変態性がカルト的人気『闘争領域の拡大』
闘争領域。それはこの世界、自由という名のもとに繰り広げられる資本主義世界。勝者にとっては快楽と喜びが生まれる天国、敗者にとってはすべて苦しみ、容赦ない攻撃が続くシビアな世界。日々、勝者か敗者かの人生が揺れている微妙な三十男の「僕」と、生まれついての容姿のせいで女に見放されている、完全な敗者のティスラン。彼らにとって人生は苦々しく、欲望はときに拷問となる。そんなふたりが出会ったとき、奇妙で哀しい、愛と人生の物語が生まれる―。現代フランス文壇で類を見ない才能を放つウエルベックの、若き哲学が爆発した初期の傑作小説。
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ウェルベックのデビュー作。次作『素粒子』で一気に名声を得るのですが、このデビュー作も、クセがすごいんです。笑
性へのものすごい執着を冒頭からトップギア開帳しちゃいます。ちなみに、デビュー作だけれども、必ずしもこれから読む必要はないと思います。
フランス文壇を変えた傑作『素粒子』
文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル・ジェルジンスキ。捨てられた二人の異父兄弟の人生をたどり、希薄で怠惰な現代世界の一面を描き上げた長編小説。新星ウエルベック衝撃の話題作。
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フランスの文壇を変えた、と書きましたが間違いです。”世界の文学界を変えた”が正しい。こんなにも時代を正確に捉える作家がいるのだろうか、っていうぐらいに、”21世紀の空気”を感じさせてくれます。
その感覚は、普段我々が感じていることだけれども、常人では言葉にできない感覚です。性は自由を勝ち取って、そして競争になり、競争が歪みを生む。このあたりは『闘争領域の拡大』とも通じるテーマですが、その描かれ方が超人的。SFと科学知識のスパイスをふんだんに読者に提供しながら、哲学をメインにどっしり据えて語られつくす文庫400ページは、味わったことのない衝撃!
次作への助走の中に見える変態性『ランサローテ島』
カナリア諸島のランサローテ島。地震と火山の噴火によって破壊された荒涼たる大地。赤、黒、薄紫の岩場に生える奇妙な形状のサボテン群。20世紀最後の年の1月、4人の男女がそこで出会う。自由とカルトをめぐる物語。著者撮影の写真83点収録。
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半分がランサローテ島でウェルベックが撮った写真、残りが小説という構成の一冊。ランサローテ島の写真が注目で、どうしてこんな荒れた写真というか、孤独な写真というのか、まぁウェルベックの人間性を表した写真なんですよ。
小説はまぁ他の小説の下敷きになる要素はあるけど、取り立ててこれだけ読む必要はないかなと。どちらにせよ、1冊目で読んではいけません、むしろウェルベック好き以外は読む必要なし!
セックスツーリズムで世界に痛烈な一撃『プラットフォーム』
「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」―圧倒的な虚無を抱えた「僕」は、父の死をきっかけに参加したタイへのツアーで出会った女性と恋におちる。パリへ帰国し、ふたりは売春ツアーを企画するが…。高度資本主義下の愛と性、そして絶望を描き、イスラームの脅威を見事に予言した、最もスキャンダラスな長編作。
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先進国ではお金はありあまる一方、性が満たされない人がいる。途上国ではお金はないが、性を提供できる人がいる。ここでトレードが成立する。。。これがウェルベックが表現する思想で、見所です。描きたい放題、描写し放題で辟易するかもしれません。笑
ポルノの影に隠れがちですが、イスラム過激派によるテロの脅威を予言的に描写したウェルベックの、『時代を映す力』を感じ取りましょう!
ひきこもりこじらせ男がキモイ『ある島の可能性』
世界の終わりのあと、僕は電話ボックスにいる―快楽の果ての絶望に陥った過激なコメディアン兼映画監督のダニエルは、“永遠の生”を謳うカルト教団に接近する。二千年後、旧人類がほぼ絶滅し、ユーモアと性愛の失われた孤独な世界で、彼のクローンは平穏な毎日を生き続ける。
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あなたが”世界の終わり”というワードで思い浮かぶのは何ですか?
バンドの”Sekai no Owari”
村上春樹”世界の終わりとハードボイルドワンダーランド”?
ミッシェルガンエレファントの名曲”世界の終わり”
ウェルベックが描くのは、大切なものが失われてしまった世界です。古典的なSFが描く、壮大なスケールの絶望ではなく、人間の本質的欠陥に迫るような小説です。
自分を殺した『地図と領土』
孤独な天才芸術家ジェドは、個展のカタログに原稿を頼もうと、有名作家ミシェル・ウエルベックに連絡を取る。世評に違わぬ世捨て人ぶりを示す作家にジェドは仄かな友情を覚え、肖像画を進呈するが、その数カ月後、作家は惨殺死体で見つかった―。作品を発表するたび世界中で物議を醸し、数々のスキャンダルを巻きおこしてきた鬼才ウエルベック。その最高傑作と名高いゴンクール賞受賞作。
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フランスで最も名誉のある文学賞と言われるゴングール賞受賞の傑作小説!ゴングール賞は古くはプルーストも受賞しています。
アートとマネーあるいは芸術性と市場性は両立できるのか、芸術の追求とはどういうことなのか、などが語られており、いつもよりも深遠な文学らしさがある作品です。純文学が好きな方はこちらが良いかも。もちろん殺人はあるしウェルベックらしさは失われてはいませんのでご安心を。
ちなみに、小説内でウェルベック自身が出てきます。お楽しみに
暗殺ターゲットへの引き金を引いた『服従』
二〇二二年仏大統領選。極右・国民戦線マリーヌ・ル・ペンと、穏健イスラーム政党党首が決選に挑む。しかし各地の投票所でテロが発生。国全体に報道管制が敷かれ、パリ第三大学教員のぼくは、若く美しい恋人と別れてパリを後にする。テロと移民にあえぐ国家を舞台に個人と自由の果てを描き、世界の激動を予言する傑作長篇。
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イスラム教への過激発言で過激派から敵視されていたウェルベックですが、この小説もものすごい。極右かイスラムか、という究極の選択を迫られた時、あなたならどちらを選びますか?
この小説ではイスラム政権が誕生する近未来が描かれています。
この本の恐ろしさは、 荒唐無稽なように見えて、本質を徹底的に捉えているところ。要するに、ハチャメチャな設定なんだけど、むちゃくちゃリアルなんです。小説の中の方が現実だって感じられる末恐ろしい作品!
おわりに
ミシェル・ウェルベックの変態性について語りましたが、感じていただけたでしょうか?笑 ウェルベックの視点で語られる世界を読むと、この世のすべてを見切っているかのような感覚になれるはず。読んでみないとわからないと思うので、ぜひ読んでみてください!
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