妖しくて美しい、アダルトなロック
秋になると必ず聞きたくなる音楽ってありませんか?
私の場合、TravisにLotus、Arcade Fireなんかもそうだし、邦楽だとスピッツ、Grapevine、ねごとなんかもだなぁ。 あ、あとはEarth, Wind & Fire?ベタすぎですか。笑
それにしても音楽の秋、とかも言いますが、何で秋って音楽がよく響くんでしょうか。個人的な解釈では、秋が深まっていくにつれて、人は切ない気持ちになっちゃう。なぜなら冬に向かって、言わば死に向かっていく時期だから。でも冬みたいに、死の覚悟はまだ生まれない季節。そんな鬱々とした気分にそっと音楽が忍び寄って来ちゃうから、音楽がよく響くんですよきっと。ということで、どこか死の香りのする美しい音楽を聞くべき。
AJICOは死の妖しさと美しさを表現しているバンドです。美しいものにはすべからく毒があるといますが、AJICOもまたそんなバンド。美しさにつられてついていくと、あっちの世界から帰ってこれなくなっちゃいます。
この記事ではAJICOの魅力について、おすすめ5曲を紹介しつつ語ります。
目次
ずっと手放したくない:深緑
ウッドベースの響きが雰囲気をめちゃくちゃ高めてくれます。ベンジーがバンド結成の際”アップライト引ける女性ベーシスト”条件として探したっていう逸話もあり、バンド編成はこだわりの構成になっています。
UAは個で世界観を構築できますが、ウッドベースにもすんなり自分のモノにしててすげえっす。
と、こんな風に分析風に聞いていては入り込めないので、何も考えず、ただ歌詞を追って、リズムを感じて。波に揺られるように聞いてみてください。恍惚が訪れます。
物語の中に吸い込まれる:青い鳥はいつも不満気
”AJICO SHOW”では、冒頭ソロをとるUAの声によって、あっという間に場の空気が変わります。(はじめは指笛を吹いちゃうような空気の読めないファンもいるのだけれど)、目を瞑って聞いてみると、それが明らかに物語りへの導入の役割をしているのが感じられるはず。
ちなみに、AJICOはそういう演出がいくつもあって、曲中でも、ベンジー(浅井健一)がグッドサウンドでギターを鳴らして第2章へと誘います。
(それがONなのかOFFなのかはわからないけれど)明らかに自分の心の中のスイッチが切り替わる音を聞いて欲しいですね。
美しいこと
ベンジーがメインでヴォーカルをとって、UAが絡みつくようなコーラスでハモってくるファンにはたまらない曲。
ベンジーの美徳がそのまま歌われていると言っていいです。Blankey Jet Cityからのファンは当然のごとくわかりきった世界観ですね。笑
イメージの想起が現実を襲う:金の泥
ベンジー作曲です。ベンジーの書く歌詞はベンジーの純粋さゆえに、いわゆる、”まっとうに生きる”みたいなことからは相当離れています。
もちろん直接的な言葉ではなく、イメージでそれを伝えてくるのですが、明らかに反社会・反体制・ロックなんですよね。
”おもちゃ箱 蹴とばした部屋に
浮かんでるメロディー 赤いオルゴール
銀色で金色手にいれて”
”遠ざかる空に目隠しをして
缶ジュースを買って 隙間を埋めてく”
この歌詞でタイトルが”金の泥”ってのが良いんですよまた。
ちなみに曲の終わりはこんな感じ。最後に核心をつくメッセージを忍ばせてる。
”若者は行く道が暗すぎて 心も盗まれて 枝を探してる
自分の命をぶらさげる枝を 枝を探してる”
辿りついてしまった:波動
意味がわからないぐらい美しい曲。
特にライブ版は、ちょっと弱ってるときとかに聞くと、簡単に涙が出ちゃうレベルにすごいです。椎野恭一、TOKIE、ベンジー、そしてUAいずれも素晴らしいパフォーマンスで、個人的には全ライブ音源の中でも相当上位に入る名演だと思います。
とにかく聞いて欲しい。
おわりに
バンドの解散というのは悲しいものですが、活動中の作品が消えてなくなってしまうことはありません。妖しくて美しい4人のアンサンブルが、全ての音楽好きにいつまでも届きますように。
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