はじめに:エンタメ小説界の重鎮
宮部みゆきの小説と言えばどんな作品をイメージするでしょうか。
ミステリー?もちろん書いてます。
ファンタジー?書いてます。
時代もの?書いてます
サイコホラー?書いてます。
サスペンス?書いてます。
ドキュメンタリー?っぽいの書いてます。
多才ですね。およそ大衆小説ならばなんだって扱えるんじゃないかっていうくらいなんでも書きます。たくさん書きます。そしてどれも読ませるテクニックがすごい。
逆に読ませるテクニックがすごすぎて、大風呂敷を掲げすぎて失敗しているかのように言われる作品もあるけれど、読者をこれだけ引き続けるというのは並大抵のものではないでしょう。
受賞歴も凄まじいです。
オール讀物推理小説新人賞(1987年)
日本推理サスペンス大賞(1989年)
日本推理作家協会賞(1992年)
吉川英治文学新人賞(1992年)
山本周五郎賞(1993年)
日本SF大賞(1997年)
直木三十五賞(1999年)
日本冒険小説協会大賞国内部門大賞(1998年)
毎日出版文化賞特別賞(2001年)
司馬遼太郎賞(2002年)
芸術選奨(2002年)
吉川英治文学賞(2007年)
宮部みゆき - Wikipedia
独断と偏見でおすすめランキング作りましたので、よろしければ御覧ください。早速どうぞ。
目次
- はじめに:エンタメ小説界の重鎮
- 目次
- 13位 R.P.G
- 12位 ぼんくら
- 11位 理由
- 10位 今夜は眠れない
- 9位 過ぎ去りし王国の城
- 8位 龍は眠る
- 7位 ICO
- 6位 レベル7
- 5位 クロスファイア
- 4位 ソロモンの偽証
- 3位 模倣犯
- 2位 火車
- 1位 ブレイブ・ストーリー
- おわりに
- あわせて読みたい
13位 R.P.G
住宅地で起きた殺人事件。殺された男性はインターネットの掲示板上で「疑似家族」を作っていた。殺人に関わりが? 虚実が交錯し、見えてきたものは…文庫書下ろしミステリー!
宮部みゆきのテクニックがぎゅっと詰まった秀作ミステリー。長編ではなく、300ページほどなのでさくっと読めます。うねりを伴うカタルシスのようなものはありませんが、時間を忘れて楽しめます。時間つぶしに最適です。
『小説でやってはいけないこと』をやっていると自ら語っていて、それ目当てに読むのもありかも。
12位 ぼんくら
「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」――江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062747510
時代ミステリーという謎ジャンルの小説です。
一話ごとに大きな話が積み上がっていき、どんどん世界観が浮かび上がってきます。シリーズになっていて、『日暮し』、『おまえさん』と、巻数を増すたびにおもしろさが塗り重なっていくかのようです。
ホント、色んなお話書けるな、と。
11位 理由
事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか――。東京荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった……。ドキュメンタリー的手法で現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにする、直木賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4022642955
6度目のノミネートで直木賞を受賞しました。が、小説としての切れ味はイマイチというのが正直なところ。もちろん宮部みゆきはそれをわかってドキュメンタリー的手法を使っているのですが、刺激的なモノを読みたければこれはナシかと思います。もっとエンタメ特化した小説もたくさん書いてますし。
綿密かつ濃厚なドキュメント映画を楽しむ感じで。
10位 今夜は眠れない
母さんと父さんは今年で結婚十五年目、僕は中学一年生でサッカー部員。そんなごく普通の平和な我が家に、ある日突然、暗雲がたちこめた。“放浪の相場師”とよばれた人物が母さんに五億円もの財産を遺贈したのだ。お隣さんや同級生は態度がかわり、見ず知らずのおかしな人たちからは脅迫電話があり、おまけに母さんの過去を疑う父さんは家出をし…。相場師はなぜ母さんに大金を遺したのか?こわれかけた家族の絆を取り戻すため、僕は親友で将棋部のエースの島崎と真相究明の調査にのりだした。
https://www.amazon.co.jp/dp/4043611013
殺人や裏切りなど、ミステリーには重い展開がつきものですが、この小説はとても軽くて、とても温かい。そして一瞬で読みきれます。箸休め的に読むと良いかもしれません。
これが好きな人は、『夢にも思わない』も合わせてどうぞ。
9位 過ぎ去りし王国の城
居場所なんか、どこにもなかった――
気まぐれな悪意と暴力、蔑みと無関心が、いたいけな魂を凍りつかせる。 ネグレクト、スクールカースト、孤独や失意・・・・・・ふるえる心が共振するとき、かつて誰も見たことのない世界が立ち現れる――。
早々に進学先も決まった中学三年の二月、ひょんなことから中世ヨーロッパの古城のデッサンを拾った尾垣真。やがて絵の中にアバター(分身)を描きこむことで、自分もその世界に入りこめることを突き止める。友だちの少ない真は、 同じくハブられ女子で美術部員の珠美にアバターを依頼、ともに冒険するうち、探索仲間のパクさんと出会い、塔の中にひとりの少女が閉じ込められていることを発見する。それが十年前のとある失踪事件に関連していることを知った三人は……。
https://www.amazon.co.jp/dp/4041028361
2015年発売の宮部みゆきが好きそうな設定をふんだんに盛り込んだファンタジー小説。装丁デザインがとても良いです。こんな黒板アート見てみたい。。。
昔ながらだけれど最新の宮部みゆき作品を読みたい方へ。
8位 龍は眠る
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ……宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101369143
宮部みゆきが一躍脚光を浴びたのは本作『龍は眠る』のヒットではないでしょうか。日本のスティーブン・キングと言われるようにまでなりましたが、今作でもその片鱗は見られます。サイキッカーの悲劇と愛の物語。
極上のエンターテイメント体験をお望みの方へ。
7位 ICO
「ぼくが君を守る。だから手を離さないで」
頭に角の生えた生贄の少年。鋼鉄の檻で眠る囚われの少女。2人が運命を変えることを、「霧の城」は許さない。
構想3年。同名コンピュータゲームに触発されて、宮部みゆきがすべての情熱を注ぎ込んだ、渾身のエンタテインメント!
霧の城が呼んでいる。時は満ちた、生贄を捧げよと。
何十年かに1人生まれる、小さな角の生えた子。頭の角は、生贄であることの、まがうことなき「しるし」。13歳のある日、角は一夜にして伸び、水牛のように姿を現す。それこそが「生贄(ニエ)の刻(とき)」。なぜ霧の城は、角の生えた子を求めるのか。
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プレイステーション2ソフトとして発売され、カルト的な人気を博したゲームのノベライズ化。ゲームソフトのプロデューサーは鬼才上田 文人です。
小説自体は宮部みゆきの愛が感じられる良作。原作を知らなくても楽しめます。
ただし、ゲームの方が100倍おもしろいので、未プレイの方は絶対やるべき。マップの構造とか、手をつなぐ、ヨルダの意味など、深読みし出すと止まりません。
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同じく上田文人プロデュースの『ワンダと巨像』も、超絶オススメ。
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そして今年『人喰いの大鷲トリコ』も発売、大注目です。
6位 レベル7
レベル7まで行ったら戻れない――謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。ミステリー・サスペンスの最高峰、著者初期の傑作。
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つかみがものすごく上手いミステリー。読者を引っ張っていくのが本当にうまい。没頭して読んでしまいます。
後半は少し尻すぼみかな、という点は拭えませんが。。。謎を解きたいという欲望を上手く読者に与えて、ぐいぐい読ませます。宮部みゆきの手のひらの上で踊らされてください。
5位 クロスファイア
青木淳子は常人にはない力を持って生まれた。念じるだけですべてを燃やす念力放火能力―。ある夜、瀕死の男性を“始末”しようとしている若者四人を目撃した淳子は、瞬時に三人を焼殺する。しかし一人は逃走。淳子は息絶えた男性に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね」正義とは何か!?裁きとは何か!?哀しき「スーパーヒロイン」の死闘を圧倒的筆致で描く。
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これはもう、モロ、スティーブン・キング『ファイアスターター』の影響受けてます。宮部みゆきはキングに憧れすぎ。
物語はサスペンス調で進み、味方にも敵(?)にも魅力的なキャラクターたちがいるので飽きさせません。テーマ自体はもはや陳腐化してしまっているけれど、エンタメ要素抜群で没頭できます。キング『ファイアスターター』もぜひ。
4位 ソロモンの偽証
ソロモンの偽証 全6巻 新潮文庫セット [文庫] [Jan 01, 2014] 宮部 みゆき [文庫] [Jan 01, 2014] 宮部 みゆき [文庫...
- 作者: 宮部みゆき
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クリスマスの朝、雪の校庭に急降下した十四歳。その死は校舎に眠っていた悪意を揺り醒ました。目撃者を名乗る匿名の告発状が、やがて主役に躍り出る。新たな殺人計画、マスコミの過剰報道、そして犠牲者が一人、また一人。気づけば中学校は死を賭けたゲームの盤上にあった。死体は何を仕掛けたのか。真意を知っているのは誰!?
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宮部みゆきの超大作!映画化もされ話題になりましたね。
プロットだけ追っていくと大したことは起こっていないし、結末もなんてことはないはずなんですが、やけにじんわり来るんですよね。それは登場人物が中学生だから。未熟な生徒たちが(未熟そうには感じない部分も多々あるが)、熱い、一方醜く汚い大人たちも出てくる。色んな人間が出てきます。実はそこが最大の見どころなのかもしれません。
軽い気持ちで読んでください。4000ページ超えの超大作ですが、どんどんページが進んでいくでしょう。
3位 模倣犯
墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!
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こちらも長大作が出てきました。映画化もされており、SMAP中居くんが出演しましたね。当時恋人との初デートで観に行ったなぁ、かなり衝撃的な映画でした。中居くん自爆シーン、もう笑っちゃいましたね。ネタにはなりましたがアレはない。宮部みゆきも怒ってたらしいし。
話は逸れましたが、本作も物語の引きがものすごい。出だしから興味をそそる展開が待ってます。畳み掛けるように前半を読んでしまえば終わるのがもったいなくなってきます。終わりは尻すぼみっちゃあ尻すぼみですが、この手の小説はそんなもんですよね。
2位 火車
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
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稀代のストーリーテラーとしての才能が申し分なく発揮された小説。宮部みゆきの代表作と言えば、多くのファンがこれを挙げるのではないでしょうか?タイトルは火の車から来てますね。まんまですね。
古い意味でいうところの、純文学的な、テーマの深淵さとか詩的な美しさは切り捨てられています。代わりに、純粋な読書の楽しみとしての性能に特化された物語です。プロットの組み立て、構成でどう読ますか、というテクニックが研かれきっていて、唸らせられます。
1位 ブレイブ・ストーリー
おだやかな生活を送っていた男の子に、突然、両親の離婚話がふりかかる。家を出た父を連れ戻し、再び平和な家族に戻りたいと強く願う少年が向かった先は、運命を変えることのできる女神の住む世界「幻界(ヴィジョン)」だった。5つの「宝玉」を手に入れ、女神のいる「運命の塔」を目指す彼を待ち受けるものとは!? トカゲ男にネコ娘、火を噴くドラゴン。コミカルなキャラクター勢とともに、次々と沸き起こるトラブルを乗り越え、少年は強くたくましくなってゆく。
現代社会の歪みを浮き彫りにしたクライム・ノベルから、下町情緒あふれる時代小説まで、さまざまなジャンルにおいて高水準の物語を生み出してきた著者が新たに挑んだ作品。それは、上下巻あわせて2300枚にも及ぶ壮大なスケールで描かれた冒険ファンタジーである。
名実共に日本を代表する著者は、子ども時代のように空想の世界を素直に受け入れられない大人の読者のために、周到なお膳立てを忘れない。まずは、上巻の半分を占める現実世界の描写。幽霊を信じないほど「マジメでカチカチ」で、両親のいいつけに反抗できない「いくじなし」である小学5年生のワタルが、「運命を変えたい」と切実に願うまでに至る日常を丹念に描くことで、読者を主人公の気持ちに感情移入させるのだ。さらに、「幻界」の設定が効いている。「『幻界』とは現世に住む人間の想像のエネルギーが創り出すもの」であるため、ワタルが大好きなロール・プレイング・ゲームのシリーズに登場する舞台やキャラクターに似ていて当たり前。ファンタジーが苦手でもこれなら頷ける。子どもがゲームに影響された夢を見ているのだと。しかし、一旦「幻界」に入り込むと、これら現実的感覚が揺らぎ始める。
次から次へと現れる愉快な登場人物とドキドキハラハラのハプニング、そして感動の出会いと別れ。流れるようなストーリー展開に、カチカチの大人もいつしか幻の世界を行く「旅人」となる。
宮部みゆきの真骨頂!個人的にはこういう宮部みゆきが一番好きです。本作は一応大人向けになっているのですが、より子ども向けにたくさん書けばいいのにと思います。もちろん大人も楽しめるようなものを。
本作は勇気と友情とがひたすらに熱い。下手な人間ドラマを描くんじゃなくてこういう成長モノ、直球テーマのを待っている人もたくさんいるはず。子どもが読んでもすぐ読めちゃうし、読書体験がつめます。読書好きな子どもに育ってくれることでしょう。おすすめ。
おわりに
いかがでしたでしょうか。エンタメ小説なら何でも書けるんじゃないかっていうくらいのストーリーテラー 宮部みゆきのおすすめ小説でした。