はじめに:誰も教えてくれなかった『グローバル・スタンダードのライティング技術』
論理的思考に基づいた文章の書き方をあなたは教わったことがありますか?
- 起承転結がしっかりした文を書きなさい
- 書きたいことをしっかり意識して書きなさい
学校でこんなことを習いましたか?これらは、グローバル・スタンダードのライティング技術から見ると、完全に間違いです。
日々のメールや、企画書、報告書、レポートや、プレゼン資料。我々は常に何かの目的を持って書いています。その目的をより簡潔に、わかりやすく伝えるための5つのポイントを書いていきます。
目次
ロジカルシンキングを使いこなすための5つのポイント
マッキンゼーのヨーロッパスタッフのレポート作成指導責任者、バーバラ・ミント女史の理論を体系づけたのが『新訳 考える技術・書く技術』です。
- 作者: バーバラミント,グロービスマネジメントインスティテュート,Barbara Minto,山崎康司
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1999/03
- メディア: 単行本
- 購入: 76人 クリック: 775回
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本書は、あまりにも網羅的な彼女の大作の入門編として書かれているため、まさに初心者向けです。5つのポイントを押さえましょう。
1.OPQ分析で読み手の疑問を明らかにする
文書作成において一番大切なものはなんでしょうか?
それは、読み手の関心。疑問に向かって書くことです。自分のために書く文章、それは日記であり、ポエムです。ビジネス文書とはアイデアを相手に伝えるためのものです。目的を忘れないようにしましょう。
まず、OPQ分析で読み手の疑問を明らかにします。OPQ分析とは何か説明します。
O:Objective(望ましい状況)
P:Problem(問題。現状とobjectiveとのギャップ)
Q:Question(読み手の疑問)
読み手になりきって、上記のOPQを考え抜きます。『O』は読み手の達成すべき目標や、改善後の姿です。『P』は困った状況はもちろんのこと、良い状態から完璧な状態へ昇るための課題など、全てのギャップを表します。読み手にとってのギャップなので、注意しましょう。最後に『Q』は、『P』の解決に向けて、自然に抱くだろう疑問のことです。
そして、Qがあるということは、必ずAがあるはずです。読み手のQに対応するAこそが、文書の主メッセージになるということです。これで読み手が読む価値のある主メッセージ得ることができたのがわかるかと思います。
2.グループ化と要約メッセージで思考をそのままメッセージに
グループ化と要約メッセージは、表と裏の関係です。相互チェックをかけながら、メッセージの強さを確認しましょう。
グループ化
有名な論文『マジックナンバー7プラスマイナス2/ジョージ・ミラー』で、人間が一度に短期記憶できる考えの数は7±2と言われています。文書作成時には、安全のためにその下限を取って、5つまでの考えを含めるのが定石です。
また、似た考えをグループ化させれば、より多くの考えをまとめて読み手の記憶に残すことができます。
要約メッセージ
似た考えをグループ化するために必要なのが、要約です。
- 坊っちゃん
- 吾輩は猫である
- 三四郎
- それから
これらをグループ化すると名付けるグループ名はどうなるでしょう。そう、もちろん『夏目漱石の書いた小説』ですね。『小説』では不十分です。このグループの名付け=グループ化の根拠となります。この根拠が要約の鍵です。抽象的でなく、一般化せず、できるだけ詳細に、要約することが大切です。
メッセージでも話は同じです。当たり前の一般的なメッセージには価値がありません。強いメッセージには具体性とターゲット性があるのです。
このように、グループ化と要約を重ねて、より強いメッセージを作り出します。
3.『So What?』を繰り返し、MECE(ミーシー)に具体的なメッセージを出す
要約メッセージが、本当に主メッセージになるのか、より強いメッセージを見つけ出す魔法の呪文が『So What?』です。
ある要約メッセージに対して『So What?』を繰り返します。自問自答を繰り返して、MECE(ミーシー)に本当に言いたいメッセージを出していくのです。『MECE(ミーシー)』とは、モレなく、網羅的に、という意味で、自問自答を繰り返しながら物事を分解していく時に使われます。
『So What?』の自問自答は、経営コンサルタントが、レポート作りのなかで繰り返し行っていることです。
4.バーバラ・ミント直伝、ハーバード式論理ピラミッドを作る
ロジックな文書を書くためには、論理ピラミッドを作る必要があります。『So What?』で自問自答して、MECEに分解された素材を、構成します。
主メッセージに対して、下部メッセージを配置します。それらが『つなぎ言葉』で繋げられるかどうかきちんと確認します。『つなぎ言葉』は下記です。
- なぜそう判断するかと言えば
- なぜならば
- たとえば
- 具体的には
これらできちんとつながるかどうかを見極め、上下の関係が論理構造を持っているかを調べます。もちろん、同じ『つなぎ言葉』を使える下部メッセージの集まりは『グループ化』できます。
ここまでの1~4を一度まとめてみましょう。
- 読み手の疑問をOPQ分析で明らかにする
- グループ化と要約メッセージで主メッセージを見出す
- 自問自答を重ねて主メッセージの考えを深める
- 自問自答の過程でMECEに出たアイデアを使って論理ピラミッドを作る
これで論理ピラミッドの完成する、ということです。ピラミッドの上から順に説明していけば、文書の作成ができるようになっているはずです。
まとめると、論理的思考の形をそのまま文書にする=伝わりやすい文書の完成ということです。
5.感謝の言葉にPDF
最後は、日頃私達が最もよくつかうビジネス文書『メール』で使える概念の合言葉が紹介されています。
- 感謝の言葉:冒頭に感謝の言葉を書きます。率直な意見を述べる前に、読み手のことを思いやることで、自分へのブレーキも書けることができます。
- P:Purpose Statement、主メッセージのことです。
- D:Detail、ピラミッド構造の下部メッセージの部分です
- F:Follow-Through、今後、読み手に求めるアクションを書きます
相手に好感を持たれ、よく伝わり、得るべきフィードバックも得られるメールフォーマットです。フォーマット化して今日から使い始めましょう!
おわりに
いかがだったでしょうか。
論理的思考は特別な技術がいるわけではありません。『癖』をつけてしまえば身につくものです。伝える力と考える力を鍛えましょう。
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