小説は誰にでも書ける
小説を書くって、読書家の憧れですよね?
自由に、あなただけの世界をあなたが表現することができるんです。
私は1年ほど書けて原稿用紙250枚の物語を書き上げたことがありますが、その時の達成感は格別でした。決して上手くはありませんが、いつも考えていなかったようなことが小説の中に表れてきたりして、新しい自分に会えたような気分になれます。何より、ずぶの素人にも、書き方さえわかれば書けるんだ、ということは大きな発見でした。
でもやはりいざ書き出そうとすると尻込みしてしまうもの。
- 物語なんて作れない
- 文章量が多すぎてとても書ききれない
- そもそもどうやって書けばよいのかわからない
このように思って諦めてしまうことも多いですよね。
けれど、小説って、分解していけば、小さな文章の集まりなんですよね。パズルみたいなものなんです。
文章→段落→場面/シーン(節)→章→小説
という感じ。
マンガで例えると、一コマの絵を書くのって、上手い下手は別にして、誰でも書けるじゃないですか。それをたくさん積み重ねていけば、おのずとマンガでになりますよね。
小説でも同じです。あなたも一文であれば、文章はかけるはず。つまり、分解して考えれば、一枚ずつの絵はもうあなたにだって書けるんです。小説だって同じです。あとはその組み立てをどうするか、どのように組み立てていけば小説らしく、おもしろさが生まれるのか、を考えればOK!
この記事では、私が映画やマンガの創り方から学んだ小説の組み立て方のポイントを5つ紹介します。
参考文献
目次
- 小説は誰にでも書ける
- 小説を書き上げるまでの流れについて
- 1. 小説を書きたいという動機をアイデアで形にする
- 2.プロットを作る
- 3. 場面作成をしていく
- 4. 書いて書いて書きまくる
- おわりに
- あわせて読みたい
小説を書き上げるまでの流れについて
小説を書くためのオーソドックスな大まかな流れをまずは見ていきます。
人によって様々だとは思いますが、下記のようなオーソドックス、かつ王道なやり方をまずは試してみるのが絶対良いです。慣れたら自分流の創作をしてみれば良いので。
- 小説を書きたいと思う
(例:ミステリー小説が書きたい) - 形にするためのアイデアを出す
(例:学校の勉強はダメだが、IQ200の天才高校生を主人公にする) - プロット(=おおまかな話の道筋)を立てる
(例:湖の畔のホテルで殺人事件が起きて、学校の仲間が巻き込まれる、犯人は仲間の中にいるかもしれない......etc) - プロットを具体的な場面に分割し、全体を見渡せるようにする
(例:主人公/登場人物を描く冒頭場面、ホテルの気味悪いエピソード......etc) - 個々の場面を書いていき、完成させ
これだけです。
書けそうでしょう?あとはあなたのオリジナルアイデアを詰め込めば書けます。
それでは詳細に移ります。上記を達成するためにチェックすべきポイント5つに入っていきましょう。
1. 小説を書きたいという動機をアイデアで形にする
まずは動機です。モチーフとも言います。創作全体に言えることですが、大切なのはベタにならないこと。
ベタと言うのは、『これどこかで見たことある』というような展開のこと。オリジナルがあるものをコピーしても、何の新しさもありません。自分だけのアイデアを加える必要があるのです。
例えば、小説でよくありがちなのが、主人公の男性が好きだった女性にフラレてベッドで寝転んで、『もう生きる希望もない......』みたいなところから始まって、何故かいきなり旅立つ決意をする、というような展開のもの。
旅をする冒険小説が書きたいのでしょうが、これではひねりがなさすぎます。
必ず動機を形にするためにアイデアを出しましょう。
見渡してみると、マンガにはモチーフを上手くアイデアを使って形にしたものが多くあります。『イニシャルD』では、豆腐の水を一滴もこぼさずに峠を走り抜ける男を主人公にして、走り屋たちの物語を、『ワンピース』では様々な能力を使えるキャラクターを魅力に海賊王を目指すドラマを描いています。
このように、描きたい物語をおもしろくするためのアイデア、工夫を初めは凝らさなければなりません。
発想をするために覚えておきたいのが次の項目です
ⅰ. 制限を設ける
これは人生にも言えることですが、『制限のないところに自由はない』ということです。
永遠に人生が続くとしたら、何だってできる状態にあったとしたら、人は努力なんて確実にしません。限りがあるからこそ美しい、限りがあるからこそ抗う、これはある種人生の真理ではないでしょうか。
時間の制限、空間の制限をして考えましょう。
例えば宇宙船内でコールドスリープをされていたはずが、一人が殺されているのを見つかる。犯人は宇宙船の中にいるとしか考えられない、、、など空間の制限をかける。
もしくは、旅行で訪れたバリのビーチで出会った、世界中から来ている素敵な仲間たちとの1週間だけの様々な事件や恋愛を描く。
このように時間や空間を制限することで、ドラマは生まれるのです。
ⅱ. 組み合わせる(トッピングする、掛け算する)
『違和感』が発想には大切です。真新しいもの、不思議なものというのは、必ず違和感があるはずです。なぜならこれまでにないものだからです。
村上春樹の小説には、カエルくん、など時々突拍子のない生き物が出てきます。
筒井康隆は、自分の過去の小説を読んでいることを前提としないとわからないようなことを書いたりします。
阿部和重は一人称を変化させて、読者の感覚を狂わせます。
このように、普通の話の中におかしな要素をトッピングすることで、本来伝えたいはずのモチーフの印象が劇的に変わっていくのです。
また、アイデアは掛け算とも言われています。よくあるアイデア、ベタなものでも、組み合わせればすばらしいものになることもあるのです。
例えば、
女子高生×ドラッガーで大ヒットした『もしドラ』
勧善懲悪×銀行マン=『半沢直樹』
など、組み合わせで大ヒットは生まれてきているのです。
このアイデア出しの部分はかなり時間をかけた方が良いです。アイデア出しに関しては過去記事に詳細があります↓
2.プロットを作る
アイデアが固まったら次はプロットづくりです。プロットとは大まかなあらすじのこと。下記4つの要素が必要です。
- 状況(例:湖の畔のホテルで殺人事件が起きる)
- 登場人物 (例:IQ200だけどダメ高校生、幼馴染のヒロイン、不気味な支配人...etc)
- 事件(例:殺人が起きる。ヒロインがピンチに)
- 結末(例:犯人の判明。もしくはまだ決めて無くてもOK)
では、どのようにプロットを作っていくかですが、まずは発想段階のアイデアに注目しましょう。必ずその動機やモチーフの中に、プロットの種があるのです。
例えば、特殊な能力を持った少年が海賊王になるための物語が書きたいのであれば、自ずと仲間を集める、行く先々で様々な強敵や困難が出て来る、などという方向性は決まってくるはずです。なので、まずは1で考えたことをよく観察しましょう。
これはドラマツルギー(作劇法)の基本でもあります。ピストルが出てきたら、弾は必ず発射されるのです。それがドラマツルギーです。
次に、実際にプロットを作るときには、登場人物を転がす、すなちシミュレーションをしていく必要があります。
例えば、海賊王を目指す少年と、孤高の剣士を出会わて仲間にするにはどうすればよいか、を考えてみましょう。
ルフィをゾロのいるところまで連れて行かなければいけない。どうやっていくか、どのようにしてゾロを知るか......etcなど、『外的に動かす』ことがまず必要です。
そして、ゾロがどのような気持ちで何と戦っているのか、ルフィはゾロのどこに惚れ込んで行くのか、心の動きも考えなくてはなりません。『内的な動き』これも必要です。
外的、内的に登場人物を様々に転がしていいくことでプロット・物語の流れが生まれるのです。
転がす上で大切なのは、下記です。
- 対立をつくる
- 主人公(たち)を危機・困難に追い込む
- いくつか案を作って自分の中で競わせる
対立は物語の基本です。注意すべきなのは、戦いだけが対立ではないということ。良心と邪心の葛藤、友情と愛情の選択の葛藤なども立派な対立です。
対立を生むためには危機・困難が必要です。苦しみながら選び取ること、逃げるのか立ち向かうのか、騙すのか騙されるのか、その選択が生き様となり、キャラクターとなって引き立つのです。
そして最後のポイント、盲目的にならないためにいくつか案を作りましょう。重要なポイントについては最低一晩は寝かしてから改めて判断を下すことで、客観的におもしろい作品が作れます。
3. 場面作成をしていく
プロットができたらそれを場面毎に置き換え、さらに余分なところを削り、 必要に応じて詳細を付け加えていきます。また、プロットを考えていた時よりもよいプロットが思い浮かぶことは、多々あります。
この時点ではまだまだプロットの奴隷になる必要はないので、どんどん加筆修正していきましょう。
また、場面作成の段階は、箱作りとも呼ばれます。全て描ききるのではなく、ポイントを箇条書きにする程度でOKです。
場面①
- 主人公、鈴木武が登場
- ヒロインエミちゃんにこっぴどくフラれて落ち込む
- その場を立ち去ろうとするも、バイクは盗まれる、不良に絡まれるなど散々な目に
場面②
- 土砂降りの雨の中、歩いて2時間かけて家まで帰る
- ......etc
とこの程度で良いです。
起承転結の『起』
まずは物語の始まり、起承転結の起です。ここが一番大切!読者を物語の世界に一気に引き込まなくてはなりません!
序盤でやらなければならないことは下記です。
- 主要な登場人物を出す
- それらの人物の説明
- 舞台設定の説明
- どんな事件が起きるのか
ただだらだらと主人公の一人語りで説明するだけなら簡単なのですが、それでは全くおもしろくありません。
僕は鈴木武20歳。東京の大学に通っている。最近好きな女の子エミちゃんに振られてしまってもう何のやる気も起きない。部屋には僕一人きりで、ベッドの上に横たわってもう10時間。どうすれば良いのか検討もつかない。
(中略)
そもそも大学のゼミの友達の田中くんが行けないのだ。田中くんと言うのはスポーツ万能、その上陸上でインターハイに出たことがあるらしいし、イケメンだ。はぁ、どうして彼のアドバイスなんか聞いてしまったんだろう。もうお先まっくらさ。もうどこかへ行ってしまいたいよ。そういえば駅前の旅行代理店でインド特集がしていたな。インドへでも行くか。
確かに登場人物の説明、舞台設定、どんな事件が起きるのか、について書かれてはいますが、こんな文章で始まる小説が読みたい人はまずいないと思います。
なぜなら、驚きが一つもないからです。読者に、えっ?、おや?、なぜ?という感情の揺さぶりをかけないと、読者は読んでくれません。疑問を提示し、答えを出す。その繰り返しで物語を引っ張りましょう。
そういうのは世の中にはよくある例なのかもしれないけれど、僕は妹の婚約者がそもそもの最初からあまり好きになれなかった。そして日がたつにつれ、そんな男と結婚する決心をするに至った妹そのものに対しても少なからず疑問をいだくようにさえなっていた。正直なところ、僕はがっかりしていたのだと思う
ファミリー・アフェア/村上春樹
私の大好きな短編の出だしです。
- 主要な登場人物を出す=僕、妹、妹の婚約者
- それらの人物の説明=僕と妹、婚約者おそらくは20代か30代前後
- 舞台設定の説明=最近妹が婚約し、うまく行っていない状況
- どんな事件が起きるのか=僕と娘が対立する、婚約者を巻き込んでいく予感がある
たった数行でこれだけのことを描き切り、かつ先が読みたくなるような文章になっています。
対立の予感もありますし、結婚というテーマは誰もが興味があって、誰にも何か刺さるものがあるのです。こんな風な出だしがかければ良いです。
起承転結の『承』
次に承の部分。ハリウッド式脚本術では第二幕とも呼ばれます。ここでは、起の部分で起こした物語を展開していく部分です。
達成すべきゴールに障害を設定し、戦わせることが基本です。
主人公とライバルの対立を軸に話を展開していく、事件を積み重ねてクライマックスにつなげる、などの準備が本流となり、主人公以外のキャラクターが起こす支流となる事件が絡み合って物語を生んでいきます。
例えば、『ONE PIECE』であれば、ルフィが海賊王になるためにどんどんゴールへ向かって敵を蹴散らして行く流れが本流、ウソップ、サンジ、ナミと仲間を集めていくのも本流です。その途中、訪れる島々で特権を持つ人、差別に苦しむ人を登場させて世界観を大きく深く補強したりしながら物語を大きくしていきます。そのための部分が承です。
ここで重要なのは『スロースロークイック』、です。あまり大きな事件がおこらない『静』のパートとド派手な演出『動』の場面を使い分けることが大切。
ずっと静だとつまらなさすぎですが、動ばかりでも、読者は飽きてしまうもの。毎食ステーキよりも、1日断食させられた後のステーキが美味しいに決まってますものね。
『起』、と『承』が物語を作る上での7,8割の部分を占めています。しっかり作りましょう。
起承転結の『転』『結』
ストーリーに決着をつける部分が『転』と『結』です。クライマックスとなる事件を起こし、解決し、決着をつけましょう。
ここまで来て、初めてテーマのようなものが浮かび上がってきているはずです。
起・承で選択してきたこと、それが何を意味するのかについてしっかりと考えてみましょう。心の底から伝えたいことはなんなのか。それを考える必要があるのです。
実はあなたが生み出したキャラクターが一番雄弁に語っているものです。キャラクターを内的に動かしてください。必ず作品に声を傾けて、決して作者自身の考えをそのまま作品に押し付けないようにしましょう。
大切なのが、起・承で起こした事件全てにケリをつける、伏線を全て回収することです。(あえて回収しない、というなら、その理由もきちんとつけること)箱書きにして整理しましょう。
4. 書いて書いて書きまくる
3.の箱書きがあれば、完璧な設計図を手にいれたのと同じです。
あとは書いて書いて書きまくりましょう。ここからは経験でセンスをどんどん磨いて行く必要があります。小説にはたくさんのテクニックがあるので、自分がおもしろい!と信じれるテクニックを埋め込んでいきましょう。
過去記事でまとめていますので、参考になれば嬉しいです。
設計図までは方法論がありますが、実際に上手く書き上げるには、もはや経験しかありません。情熱を持って挑みましょう!
おわりに
小説を書き上げた時の喜び、そして内容を見返した時のあらたな自分の発見、めちゃくちゃすごい体験ができるはずです。
この記事がお役に立てましたら大変うれしいです。