はじめに:日本文学の最先端
阿部和重という男がいます。奥さんは芥川賞作家の川上未映子、自身も芥川賞を受賞している芥川賞作家カップルです。川上未映子かわいいです。阿部和重も雰囲気あってかっこいいです。
文学賞かなり取ってます。群像新人文学賞(1994年)、野間文芸新人賞(1999年)、伊藤整文学賞(2004年)、毎日出版文化賞(2004年)、芥川龍之介賞(2005年)、谷崎潤一郎賞(2010年)、などなど。
簡単な略歴をwikiから↓↓
日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。演出助手などを経て、1994年に「アメリカの夜」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1997年の『インディヴィジュアル・プロジェクション』で注目をあつめる。テロリズム、インターネット、ロリコンといった現代的なトピックを散りばめつつ、物語の形式性をつよく意識した作品を多数発表している。2004年に『シンセミア』で伊藤整文学賞および毎日出版文化賞を、2005年に「グランド・フィナーレ」で芥川龍之介賞(芥川賞)をそれぞれ受賞。『シンセミア』をはじめ、いくつかの作品には「神町」を中心とする設定上の繫がりがあり、インタビューなどでは《神町サーガ》の構想を語っている。
〈メンズノンノ〉2007年3月号の中で、阿部は「わたしのおすすめ本」と題してプルースト『抄訳版 失われた時を求めて』と大西巨人『神聖喜劇』を挙げているが、いずれもデビュー作で取り上げられた小説であった。
好きな女優はキャメロン・ディアス。
一時「好きなアイドルは後藤真希」と公言していた。芥川賞授賞式では道重さゆみ(モーニング娘。)が得意とする“うさちゃんピース”のポーズを決め、「モーヲタ」たちの話題となった。最近は後藤真希の件はあまり触れなくなった。
テレビアニメ版「カードキャプターさくら」のファンを公言し、『ニッポニアニッポン』では同作品の主人公の名前をもじった「本木桜」を、またテレビアニメ「おジャ魔女どれみ」のヒロインの一人・瀬川おんぷをもじった「瀬川文緒」を登場させている。
漫画家榎本俊二は映画学校時代の後輩。この縁で榎本の『GOLDEN LUCKY』第2巻にミサイル役で実写出演している。
スペックだけみるといけすかないきざな野郎と思いきや、少女アニメが好きだったりモーニング娘オタクの気質もあったりして読めない人です。どんな作家だよって感じですが笑
実際には、むちゃくちゃ尖った作品を書く、狂っている登場人物を書く、とにかく形式にこだわって書く、それでいて緻密な構成で小説のバランスが無茶苦茶なはずなのに成り立っている作品を書く、ということができる、凄まじい作家なんです。
読んでみればわかると思うのですが、このすごさを伝えたい!ということで、おすすめ12作をランキングにしてみました。
目次
- はじめに:日本文学の最先端
- 目次
- 12位 ミステリアスセッティング
- 11位 キャプテンサンダーボルト
- 10位 プラスティック・ソウル
- 9位 □しかく
- 8位 アメリカの夜
- 7位 クエーサーと13番目の柱
- 6位 シンセミア
- 5位 グランド・フィナーレ
- 4位 ピストルズ
- 3位 ABC
- 2位 ニッポニアニッポン
- 1位 インディヴィデュアル・プロジェクション
- おわりに
- あわせて読みたい
12位 ミステリアスセッティング
歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。 唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。 小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深くにひとり潜ったシオリが起こした奇跡とは?
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阿部和重が初めて少女をメインキャラクターに据えた一作。SF的設定で、無垢な少女と思いテーマの対比は使い古されたテーマのように見えるんですが、阿部和重が描くとそれもパロディとして良質に味わえるんです。
彼特有の、奇妙なキャラクター設定はいちいち笑えるんですが、その少女個人の小さな世界観が、後半に連れて世界をめぐる大きな設定に広がっていくさまは、ゾクゾクします。
まぁ初めて読むには違うと思うので、この順位。
11位 キャプテンサンダーボルト
「俺とおまえで世界を救いに行こうじゃないか」 現代を代表する人気作家ふたりが合作、その化学反応が生み出した問答無用のノンストップ・サスペンス。 世界を揺るがす秘密は蔵王に隠されている! 大陰謀に巻き込まれた小学校以来の友人コンビ。 異常に強い謎の殺し屋と警察に追われるふたり(と犬一匹)は逃げ切れるか。 女友達を助けたばかりに多額の借金を背負う羽目になった相葉の手にひょんなことから転がり込んだ「五色沼水」。それを狙う不死身の(ように見える)冷酷非情な銀髪の白人が、死体の山を築きながら彼を追ってくる。 五色沼といえ通称「御釜」と呼ばれる蔵王の火口湖、そこは戦後にパンデミックを起こしかけた「村上病」のウィルスで汚染されていて、立ち入り禁止地域になっていた。この水はいったい何なのか。すべての背後にあるのは「村上病」をめぐる秘密らしかった。 ウィルスの発生源とされる「お釜」に何があるのか? そして主演男優のスキャンダルを理由に封印された戦隊ヒーロー映画に何が映っていたのか? 相葉は逃亡の途中で中学時代の野球部の悪友・井ノ原と再会。ふたりは、太平洋戦争末期に蔵王山中に墜落した米軍機の謎を追う女性・桃沢瞳の助けも借りて謎に挑む。 だが事態を解決するためには、あの銀髪の破壊者との直接対決は避けられない
―― 平凡な男ふたりが世界を救うために命をかける。その胸にあるのは少年時代の思い出。 ちりばめられた伏線が収束し、破滅へのカウントダウンが点滅する中で、白熱のクライマックスに突入する! 文庫用に本編の前日譚と後日譚となる書き下ろし掌編小説を、ボーナストラックとして収録! 解説・佐々木敦
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売れっ子作家同士の合作ということで話題になったキャプテンサンダーボルト!随所に阿部和重感があるものの、大枠としては伊坂臭がするんだよなぁ。。。いや、伊坂すごいと思うんですけどね、阿部和重の小説に対する射程の長さ、深さからすると全然短いんだよなぁ伊坂は。めちゃくちゃおもしろいんだけど、中身がないというかなんというか。
とは言え、阿部和重×〇〇(有名作家)で期待できる良好な組み合わせだと思います。
10位 プラスティック・ソウル
アシダイチロウ、イダフミコ、ウエダミツオ、エツダシン。彼らが出版社から受けた依頼は、共同創作によりひとつの作品を生み出してほしいというものだった。眩いばかりに鏤められたさまざまな記号、めまぐるしく転換する話者、妄想はやがて狂気へとむかう―。世紀末東京を舞台に描かれた阿部文学の真髄に迫る、幻の小説。
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構想が追い付いていなかったと後々阿部和重自身が語ることになる一作。それでも彼らしい過剰な自意識やら妄想、そして狂気の世界観はとてもおもしろいです。
そして、この作品がターニングポイントと語る批評家も多いんですよね。自意識と妄想だけの世界から、外へ向かっていくきっかけとなっている作品とも言われています。
村上春樹が大きな世界を目指してデタッチメントからコミットメントへ移っていったように、阿部和重もまた、より大きな世界を描こうとしたのでしょうか。
全く、(両極端と言っていいほど)持ち味、戦場の違う作家ですが、どこか天才的な魅力と言う点では似ていると思うんですよね。転換点となる作品なので、一冊目としてはおすすめできないかな。
9位 □しかく
「角貝ササミを蘇らせるには、まずは三六五日以内に、特定の四つのパーツをすべてそろえなければならない。」烏谷青磁(からすやせいじ)のこの言葉から水垣鉄四(みずがきてつし)のパーツ探しが始まった。
水垣は烏谷に従うしかなかった。なぜなら水垣には烏谷に逆らえぬ理由があったから。そんな二人の前に現れたのは全身真っ白の若い女、花貝(はながい)さえずり。水垣と烏谷は果たして全てのパーツを揃えることが出来るのか? 全く新しいホラーとサスペンスが四つの季節を駆け抜ける!
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四つの季節の連作で書かれたホラー小説。
ホラーはとことん突き詰めて真剣に向き合うと、滑稽になります。狂っているのがおもしろい。それが計算されていると思うと少し腹立たしいですが、阿部和重らしい、人をくっているのかくっていないのかわからない表現になっています。
これを何も考えずに書いた、というのだからこの人本当に狂ってます。笑
8位 アメリカの夜
「重要なのは、いつおこるともわからぬ闘争へむけて自身を鍛えぬくことだ」文学の最前線を疾走する芥川賞作家・阿部和重のデビュー作、ついに電子化!
映画学校出身の若者・中山唯生(ただお)は、フリーター生活を続けながらブルース・リーが生み出した武道・截拳道(ジークンドー)の修練に励んでいた。
あるとき彼は、映画学校時代のライバル・武藤が撮った自主制作映画に映っていた女優・ツユミの姿に心を奪われてしまう。武藤の新作映画でツユミと共演することが決まった彼は、役作りのためによりいっそう過酷な訓練で身体を鍛え、意識を高めていく
そしてついに訪れた撮影当日、驚愕の事件が撮影現場を襲う!いったい撮影現場に何が起こったのか??愛に燃える唯生は無事ツユミと共演することができたのか!?
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阿部和重と言えばコレ、と言う人も少なくないかと思いますが、8位で登場です。衝撃のデビュー作で、日本文学界に違った風を吹かせた作品です。
初期阿部和重作品の特徴でもある、自我(の分裂)、過度の妄想、そして肉体の鍛錬などの要素が詰まっています。芸術作品への言及もたくさんあり、フィリップ・K・ディック『ヴァリス』、ブルース・リー『魂の武器』、そして『ドン・キホーテ』、あたりなどなど、映画や小説が取り上げられています。
阿部和重を語る上では必読の一冊。
7位 クエーサーと13番目の柱
元写真週刊誌の記者・タカツキリクオは、雇い主のカキオカサトシの指示のもと、人気アイドルをターゲットとしたパパラッチ行為を生業とするモニタリングチームの一員。ターゲットの呼称は「Q」。ある日、カキオカは追跡のターゲットをそれまでのアイドル・ユイから新興のアイドルグループ・ED(エクストラ・ディメンションズ)のミカに突如変更する。それに伴いチームも再編されることになるが、ミカを追跡するにつれ、新たに加わったメンバー、謎の新人のニナイケントという男が不穏な動きを見せ始める……。雇い主の真意は? 「Q」の意味とは? そしてニナイの本当の目的とは? 『ピストルズ』から2年、手に汗握るノンストップエンタメ長篇
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後藤真希が好きなアイドルで、芥川賞授賞式には道重の『うさちゃんピース』を決めるなど、アイドル好きとしても知られる阿部和重。
文章は読んでてめちゃくちゃおもしろいのですが、メタ的展開があまり上手く表現できていないような気もします。阿部和重の狙いがいまいちつかみきれない作品です。まぁもう少し読みこまないとわからないだけでしょうけど。
6位 シンセミア
毎日出版文化賞、伊藤整文学賞受賞作。
神に見放された町・神町を舞台に、壮大な叙事詩が幕を開ける! 20世紀最後の夏、平凡な田舎町だったはずの神町に怪事件が続発する。高校教員の突然の自殺、走り屋の不可解な事故死、ヌード写真を集める老人の失踪。その背後には裏社会を支配するパン屋とヤクザの存在があった……。産廃処分場設置をめぐって二分される市議会、盗撮にふける自堕落な若者たち、制服を隠れ蓑に女子小学生を見守る警官――次々に登場する俗にまみれた人々の陰謀と欲望が暴走し、神町は混乱の渦に巻きこまれていく。二転三転する権力の行方は? 人間関係はどこに行き着くのか? そして訪れる審判の日、すべては破滅へと至る――。ドラッグ、セックス、オカルト、洪水、ロリコン、暴走ダンプカー、インターネット……。歪んだ人間たちの交錯の果てに顕現するカタストロフィーの姿とは? 圧倒的な性と暴力で描き出す神話的世界! 小説の新たな可能性を切り開く、神町トリロジー第一作。戦後史を綜合し21世紀を予言する記念碑的一大長編!
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映画監督を志していた阿部和重が、昔、自分の故郷を舞台に映画を撮りたいと考えていたのですが、それが小説となって表れてきた壮大な物語です。
基本的に映画のシナリオのように小説も書いているのか、カメラ割りというか、場面の移り変わりが異様に気持ちいいのが阿部和重作品の特徴です。
阿部和重代表作(の始まり)と言ってもよい作品です。かなりボリュームのある長編ですが、手にとって読んでみてください。
5位 グランド・フィナーレ
第132回芥川賞受賞。教育映画制作会社に勤務していた沢見は、現在は無職となり、家族とも別れて故郷で文具店の手伝いをしている。そんな沢見のもとに子供クラブの演劇の指導員の依頼が舞い込む。そこから沢見は「神町」の因縁が紡ぐ物語に関わることになる。表題の芥川賞受賞作のほか3編を収録。収録作品:「グランド・フィナーレ」「馬小屋の乙女」「新宿ヨドバシカメラ」
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『グランド・フィナーレ』でようやく芥川賞を受賞します。村上春樹の受賞逃し、そして阿部和重のキャリア中盤での再評価、受賞など、芥川賞何やってんだ、って感じですね。もうもはや権威はなく、市場活性化のための賞レースにすぎないのかもしれませんが。文芸界の芸術性のためになんとか頑張って欲しいですね。
とまぁ、書きましたが、阿部和重の描く主人公は本作でもまぁダメな男で、ロリコン趣味があって少女ポルノに関わって、妻と娘を失ってしまうというまぁとんでもない展開。このままじゃあそりゃ芥川賞も......(いやそれは関係ない)。
それにしてもロリコン趣味の主人公出てきすぎじゃありませんかね?
4位 ピストルズ
一子相伝の謎めいた秘術「アヤメメソッド」の正体とは?
魔術師一家だと噂される菖蒲(あやめ)家に興味をもった石川は、若木(おさなぎ)山の裏手の屋敷を訪れる。そこは植物の香りに満たされ、心地よい音楽が演奏されるヒーリングサロンだった。次女・あおばの口から語られる菖蒲家の歴史は、神町の真実を暴いてゆく。若木山を信仰した祖父、菖蒲家の屋敷にユートピアを築こうとした父、そこに集まった四人の女性たち……そして血の呪いに縛られた菖蒲家に、ついに家伝継承者となる運命の子が生まれる――
幻想的な世界を展開し、谷崎潤一郎賞を受賞した阿部和重の最高傑作。
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『シンセミア』の続編ということで、多大なる期待を持って迎えられた本作ですが、さすがは阿部和重、一筋縄ではいきません。文体も構成もがらりと変えて続編を送り出してきたのです。
難解というか冗長というか、とにかく読むのがしんどい文章が続きます。読書体験をネガティブにする狙い、といかいうわけのわからないことをしようとしているのです、狂っています。狙っています。
文学の最先端、最鋭のポイントを目指していて痺れる小説です。
3位 ABC
ヤクザ、幽霊、ストーカー…… 超絶技巧を駆使した文体が、小説の限界を軽々と《跳躍》する!
文学の可能性を追求し続ける芥川賞作家・阿部和重が、活動初期の1994年から98年に発表した6つの中短篇を収める初期作品集。#「ABC戦争」
N国・T地方・Y県の通学列車で起こった不良高校生の揉め事は、なぜヤクザを巻き込む全面抗争に発展したのか? そして事件の経緯を饒舌に語る「わたし」とは一体何者なのか? 複雑な語りのトリックが仕掛けられた、著者渾身の第二作。#「公爵夫人邸の午後のパーティー」
セーラームーンのコスプレに身を包んだ楠木夫人は、謎の黒ずくめの男に声をかけられる。一方、別荘に迎え入れられた女子高生ジュンコは押しかけてきた銀行強盗犯に監禁されてしまう…… 異質な二つの世界が融合する驚愕の結末を見逃すな!#「ヴェロニカ・ハートの幻影」
キズだらけの男が住むアパートの部屋には、自殺した前の住人が幽霊になって住みついているという。彼の右まぶたに傷をつくった幼少期の体験、女ともだちのルームメイトの愛犬の失踪、そして幽霊自身が語り始める…… 読者を翻弄する緻密な迷宮。#「トライアングルズ」
「私」のもとにやってきた家庭教師は、父の愛人を付け回すストーカーだった! 「あなた」へ向けてつづられた「私」の手紙が家庭教師の秘密を次々と暴いてゆく。父と愛人と家庭教師、父と母と愛人、「私」と「彼女」と「最悪の男」…… 複雑に重なり合う三角関係のゆくえは一体――?#「無情の世界」
現実と妄想の区別を失った男子高校生が、夜の公園で不気味な光景に遭遇した―― これは現実なのか? それとも悪夢なのか? 不穏な空気で満ちた、少年の手記。#「鏖」
アメリカナイズされた若者・オオタタツユキは、高価な時計を盗んだ罪でバイト先の店長に追われていた。時計を預けた人妻と落ち合うためにファミレスへ向かったオオタは、自分の家を監視する不審な男と出会う…… 時間切れが近づく緊張した時間の中で、金属バットが猛威を振るう!
https://www.amazon.co.jp/dp/B00OC3G8D4
これを3位に推すのは反則ではないかと思いましたが、入れちゃいます。初期の中編、短編が読めちゃいます。
表題にもなっている『ABC戦争』が素晴らしい出来で、これが二作目だと言うのだからすごい。本作で用いられているようなメタフィクションを駆使するには、これまでの文学の文脈や歴史を踏まえるバランス感覚が必要ですが、阿部和重にはそれがあります。設計図がすごい。なのにクレイジーでもう手がつけられないって感じですね。
今や技巧の高さは日本文学界でもトップレベルなのではないでしょうか。
そして個人的には『鏖』を偏愛しています。もうむちゃくちゃおもしろい。全て計算尽くされている、踊らされているとわかっていても、絶妙な展開と、それでも予想外なストーリー。謎のカタルシスが気持ち良いです。
2位 ニッポニアニッポン
21世紀の始まりを告げる、戦慄のテロ文学!
地元を追い出され東京でひとり暮らしする17歳の少年・鴇谷春生(とうやはるお)は、日夜インターネットを渉猟し、トキに関する情報を集めていた。種の保存のために管理されるトキを解放することが自分の使命だと信じるようになった彼は、スタンガンと催涙スプレーを購入し、佐渡島を訪れることを決意するのだった。
中学時代の同級生・本木桜への春生の思いと、地元を追い出される原因となった罪、明かされていく「ニッポニア・ニッポン問題の最終解決」の全貌……すべての妄執に囚われたまま、運命の時は近づいていく。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00FAI7D8O
今では少し古くさいかもしれないけれど、インターネットの情報を駆使することを小説に溶け込ましている先駆けとなった小説。
主人公は阿部和重作品にありがちな、妄想が激しく独りよがりで、超イケてない青年。徹底的に読者の共感を排除しています。ただ、この作品では自分の妄想内で全て完結するのではなく、物語が外へ外へと動き出していきます。そこが物語を深めて、表現の幅を広げているのです。
これは一冊目としてもオススメできます。もちろん一度挫折してしまった読者の再デビューとしても、おすすめ。
1位 インディヴィデュアル・プロジェクション
21世紀のテロルを予言する、世紀末のアクションノベル!
東北の田舎町のスパイ養成道場・高踏塾、その解散から半年が経ったころ、元塾生たちの命が次々に危機にさらされる。渋谷の映画館で映写技師をする元塾生の一人・オヌマはその報せを耳にし、高踏塾の塾長・マサキの謎を探り始める。次第に彼はヤクザの抗争に巻きこまれ、世紀末の渋谷は騒乱に覆い尽くされてゆく――
マサキの真の目的とは何だったのか? そして、フィルムの暗号に示されたプルトニウム爆弾の隠し場所とは一体どこなのか?
謎が謎を呼ぶ展開の果てに、衝撃の真実が明らかになる!
https://www.amazon.co.jp/dp/B00FAI7D84
1位は『インディヴィデュアル・プロジェクション』 。初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。東浩紀が解説を書いているっていうのも熱いです。
小説という表現でどこまでできるのかを追求しているのがビンビン伝わるハードな文体と、展開。ハードな描写はチャック・パラニュークの『ファイト・クラブ』 を読んだ時も同じような感覚になりました。
阿部和重の凄さを知るのはこれが一番。まずはこれを読んで衝撃を受けて欲しい、超おすすめ。
おわりに
阿部和重のおすすめ作品ランキングベスト12をお届けしました。
狂った小説を読みたい、それもただ頭がぶっ壊れた小説ではないものを読みたい人は是非手にとって読んでみてください。
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