はじめに:その文章の目的は?
LINEのやり取り、会社での業務依頼メール、お祝いの手紙、議事録、転職志望理由、私たちは文章を毎日書いています。
はたして普段私たちは文章を目的意識を持って作成しているでしょうか?
本書で目指す文章力のゴールはこう設定されています。
あなたの書いたもので、読み手の心を動かし、状況を切り開き、望む結果を出すこと、それがゴールだ
日々の一つ一つの文章が輝きを持って、読み手の心を動かす。誤解を生まずに仕事を進める。そんな機能を持った文章を目指して、磨いてみませんか?
目次
機能する文章を書くための7つの要件
あなたの文章によって読み手を共鳴させ、読み手を揺さぶって、それが書き手であるあなた自身に結果として(依頼の承諾、内定通知などなど)還ってくる。そんな文章を書くために必要な7つの要件が、本書では書かれています。
本書の素晴らしいところは、単なる技術的な表現を磨くということだけではなく、文章力を高めるための考え方を深める方法を提示してくれていることです。
ひとつずつ見ていきましょう。
1.意見
意見=あなたが一番言いたいこと。
これがなければ文章は成立しません。逆に良い意見があれば、文章のレベルは上がります。
意見とは、ある問いに対する答えのことです。
大切なことなので二度言いますが、問いのあるところに意見はあります。
では、意見を出すには??
そう、問いを出せば良いのです。考える道具として、問いを用いるのです。問いの出し方ですが、下記が重要になってきます。
- yes/noで答えられるものではなく、5w1hを使う
- 時間軸を広げる
- 空間軸を広げる
日本でサッカーを発展させたい。こう考える人はたくさんいると思います。この意見を深めるのに上記を踏まえて問い出しをしていきましょう。
- 年間どのくらいの人が実際に競技場に足を運んでいるのだろう(5w1h)
- 過去のサッカーブームはどうして起こったのだろう(時間軸)
- 人工知能・ロボットの発達はサッカーにどのような影響を及ぼすだろう(空間軸)
- 未来にロボット対人間でサッカーをするとしたら何が課題になるだろう。人間はどういう関わりをするだろうか、どこでやるのがふさわしいだろうか(組み合わせ)
- ......etc
と、無限に問いが出てきて、ひとつひとつについて考えていけば、おのずと意見は深まっていきます。
2.望む結果
これもとても大切です。読み手あっての文章です。独りよがりにならないようにする必要があります。
下記をしないように気をつけましょう。
- 自慢話
- 要点を絞らず全部書く
- 自分の興味だけを詳しく書く
もっとも大切なのは、読んだ人に何と言ってもらいたいか、を考えて書くこと、それだけです。
3.論点
論点を制する者は文章を制する、と著者山田ズーニー氏は言います。論点とは何なのでしょうか。
論点とは議論のポイントのことですね。では議論の先にあるものは?それは主張、意見です。また、意見とは、問いから生まれます。(大事なことなので何度も言います)
つまり、論点とは、問いのことです。問いをどう設定するかは1.意見でも述べました。その際に、問いはいくらでも出せると言いました。問いを絞り込む、論点を絞り込むために、状況に応じて下記を行いましょう。
- 自分に切実な動機がある問いか
- 読み手の要求にかなっているか
- 自分の力量で扱いきれるか
- 社会的にみて論じる価値があるか
論点と意見は対なので、論点の絞り方が文書の方向性を決めます。
4.読み手
4.5はまとめて語ります。
5.自分の立場
望む結果、でもありましたが、読み手にどう言ってもらいたいか、を理解する必要があります。そのためには、常に同じ調子で文章を書いていてはなりません。読み手に応じて書き方を変える必要があります。
また、読み手にどう受け取ってもらうかを考えると、自分と相手の関係性を考える必要があります。また、多くの人に向けて文章を書くときには、他者の目を持って文章を書かなければなりません。
6.論拠
論拠とは、文章中を説得、揺さぶる共鳴させるための要素です。つまり文章の持つ説得力のことです。
説得力の弱い文章とは、相手の目線が抜け落ちた文章のことです。たとえばサッカーを始めるためにお小遣いを増やしてもらいたい夫がいたとします。ここで、『タバコが値上がりしたんだ、お小遣い上げて』とだけメールで伝える。これは書き手自身の都合でしかありませんので、『タバコ辞めれば?健康にも良いし』、と言われてKOですね。
説得のためには適切なステップを踏んで、論拠を鍛える必要があります。そのステップは下記です。
- 自分の理由を挙げる
→サッカーを始めたい。そのためにユニフォームなどお金がかかる - 相手の都合から見た理由を想定する
→サッカーを始めるなら最近太った夫がサッカーで痩せて健康になるかもしれない - 相手の反対理由を正しく押さえる
→給料が上がらない中家計が逼迫する。そもそもタバコ代がかさんでいるのが気に食わない - 反対理由に合わせた論拠を準備する
→昇進して給料が上がる。もちろんタバコも3割カットするよう努力する。
ポイントは3ですね。『相手に反対理由を聞く』それも突っ込んで、じっくり話し合う。その反対理由をお互い納得いくように解消できれば、説得は完了できるはずです。
文章を書く時にも、反対理由をしっかりと考えて、それへのカウンターを構築する。そうすることで論拠のしっかりした文章を書くことができます。
7.根本思想
小手先の技術だけでは相手の心は動かない。山田ズーニー氏は言います。自分の信念に忠実な文章は、深い思想に溢れています。そのために深い意見と問い、論拠が備わり、良い文章になるのです。
本書の中にも、氏の根本思想が詰まっています。特に、最終章にある『感情を犠牲にするか、孤立するか?』『正直という戦略』という節はかなり熱いです!!
甘い、と言われるかもしれませんが、信念を貫いて生きる姿勢はかなり熱いと思いました。必読です。
さいごに
山田ズーニー氏は糸井重里のほぼ日刊糸井新聞で、『大人の小論文教室』連載中です。
本記事では考え方の部分に焦点を当てましたが、本書では実践的編として、具体的な例を使って、使えるテクニックもたくさん載っています。
オトナが一から始めるロジカルシンキングの第一歩としても良書です!