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きゃすのキラキラブログ

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【小説・技法】信用できない語り手の解説とともに作家・作品紹介する

小説
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小説技法:信用(信頼)できない語り手 とは?

信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、信用できない語り手、英語: Unreliable narrator)は、小説や映画などで物語を進める手法の一つ(叙述トリックの一種)で、語り手(ナレーター、語り部)の信頼性を著しく低いものにすることにより、読者や観客を惑わせたりミスリードしたりするものである。

信頼できない語り手 - Wikipedia

簡単に言うと、物語の語り手(大体の場合は登場人物、主人公)が、記憶が怪しかったり、わざと嘘と真実を混ぜて物語を語ったりすることで、読者を惑わしながら語る技法です。

現実世界でも、真実か嘘か、というものは厳密にはわかりません。 人の気持ちなどわかったつもりなだけで、本当に心から脳内を覗くことはできないのです。

物語という虚構の世界もこのような立場に立って書かれていて、嘘が発覚するにすれてその矛盾を楽しんだり、理解に苦しみながら人間の奥深さが感じられる技法です。高度な技術が必要ですが、上手い話は、人間の真理のようなものが透けて見えてくるので本当におもしろい!

ミステリで使われる叙述トリックとも親和性が高いのですが、この記事ではミステリの楽しみではなく、人間を描くドラマについて語りたいと思います。

それでは目次に続いて、信用できない語り手が使われているおすすめ小説とともに、技法について解説していきます。

 

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目次

 

信用できない語り手の人称について

基本的にこの技法は、一人称視点で使われます。一人称視点とはなんなのか。詳しく見てみましょう。

私たちは物語を、語り手から得られる情報のみで判断します。

一人称視点

例えば村上春樹『ノルウェイの森』などでは”僕”が感じたこと、聞いたことからしか物語は見えてきません。例えばこんな文です。

やれやれ、僕はパスタを茹であがるのを待ちながらスタン・ゲッツの音色が絶頂に達するのを聞いた。

村上春樹の初期作品はほとんど一人称視点での物語ですね。

三人称視点

J・K・ローリングス『ハリーポッター』シリーズでは、”ハリー”が感じたこと、聞いたことを、作者が語ります。例えばこんな文です。

「エクスペリアームズ」ハリーはそう叫ぶが、既に死喰い人たちが束になって彼を取り囲んでいるのに気づいてしまった。

これは三人称視点などとも言います。全知全能の物語形式、神視点というのもこちらに含まれますが、ここでは語らないでおきましょう。

使われ方

キャラクター知識や知覚の限界(例えば老化での記憶混乱など)によって信憑性がなくなったり、精神病や気が狂っていて信憑性がなくすことで、物語を混沌とさせる。更に、自分自身に嘘をついたりしたまま語る、なども可能です。

基本的に三人称視点、神視点は作者が物語を語るため、知識や知覚の限界、精神病や気が狂っているということはありえないので、一人称視点で使われることがほとんどです。

例えばこんな感じ。

  • 精神病の患者が主人公。出会う女性全てを娼婦だと信じ切って、自分の妻も誰かわからないまま話が進む
  • 記憶喪失の男が主人公。出会う人の全てが知らないまま話が進む
  • etc...

いずれにしろ、読者もその世界を理解できないまま話が進むので、サスペンスを生むことができます。

それでは、実際に 信用できない語り手が使われている作品を見ていきましょう!

 

信用できない語り手と言えばカズオイシグロ!

最も尊敬する作家の一人、カズオイシグロですが、彼はこの技法を初期からずっと使っています。読ませるのが上手い作家です。2作品をご紹介します。

わたしを離さないで

自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。

キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕すると評されたイシグロ文学の最高到達点。
https://www.amazon.co.jp/dp/4151200517

これは凄まじいです。カズオ・イシグロの物語の語り手の話すことには嘘が含まれている、もしくは本人さえも知らないことがたくさんある。まずはそうわかって読み進めてみるんですよ。

それでも強烈な”引き”が物語にあります。えっ? なんで? って思うシーンがめちゃくちゃ出てきます。そうして読み進めるうちに、絶妙な場面で絶妙な量の情報が出てきて、絶妙なバランスでお話がどんどん進んでいきます。

最後にはわかってはいるのだけれど、涙が止まらない。すごいカタルシスが生まれるんですよね。この技法の最高点だと思います。必読です。

 

日の名残り

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4151200037

これも大変におもしろい傑作小説です。初見よりも、何度も味わううちに良さが染みてくるタイプの小説。

老紳士はプライドや、思い込みのせいで、色んなものを犠牲にしてしまっているのです。もちろん悪いことばかりではなかったに違いありません。でもどこか胸が締め付けられます。

私たちもつまらないプライドに縛られて、無くしてきてしまったものがあるはず。それを思い出して切なくなってしまいます。きっと自分自身の一部に響くはずです。

 

技巧派ウラジミール・ナポコフ

『文学談義』でもお馴染みの、感性に優れ、かつ技巧派でもある小説家です。『ロリータ』も良いですが、今回は1作青白い炎をおすすめします。

青白い炎

帝政ロシアで生まれ、亡命作家としての生涯を送ったナボコフ(1899-1977)。999行から成る長篇詩に、前書きと詳細かつ膨大な註釈、そして索引まで付した学問的註釈書のような体裁のこの〈小説〉は、いったいどう読んだらいいのだろうか。はたして〈真実〉とは? 諧謔を好んだ『ロリータ』の作者による文学的遊戯に満ちた問題作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4003234111

狂人の真実と、嘘を見極めながら読み進めていくうちに、ニヤリとした笑いが止まらなくなります。どこからが物語でどこがナポコフの本音なのか、なども考えながら読むと相当おもしろいです。上級者向けです。

 

必ず読みたいアゴタ・クリストフ

片言とも言われるフランス語を駆使して、独特の文体で書かれた『悪童日記』三部作が世界中で大ヒットした作家です。ハンガリーからの亡命(難民)生活が色濃く反映されている点でも文学的価値が高いとされています。

悪童日記

戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00O1VK0CW

未読の人は必ず読みましょう。全く新しい体験ができます。

幼く、危うい怪物が語る物語は、無駄なものを一歳削ぎ落とされたナイフのように鋭く読者の胸に突き刺さってきます。語り手は『ぼくら』。双子の天才少年リュカとクラウスです。

私は何故だかリュカとクラウスにひたすら憧れてしまいました。続編『ふたりの証拠』『第三の嘘』にも絡みながら混沌とした世界観を絶妙に描ききっています。これを読まずに死ねるか本です。

 

ノーベル賞受賞作家ウィリアム・フォークナー

ノーベル賞を受賞した20世紀を代表する作家の一人。古典となっていますが、未だに読んでもおもしろいものも多いです。他者視点での語りを使っている一作をご紹介。

響きと怒り

アメリカ南部の名門コンプソン家が、古い伝統と因襲のなかで没落してゆく姿を、生命感あふれる文体と斬新な手法で描いた、連作「ヨクナパトーファ・サーガ」中の最高傑作。ノーベル賞作家フォークナーが“自分の臓腑をすっかり書きこんだ”この作品は、アメリカのみならず、二十世紀の世界文学にはかり知れない影響を与えた。
https://www.amazon.co.jp/dp/4061975773

知的障害者や、自殺する青年の視点を取り入れていあmす。独自の見解を述べている似すぎず、かつ上記のような背景から信憑性の乏しい語りになっています。

『意識の流れ』の技法を駆使したことで有名ですが、信頼できない語り手の技法が効果的に使われている点でも重要な作品です。

 

アウトサイダーにおすすめ夢野久作

怪奇色と幻想性が合わさった、麻薬のような作品が多く、熱狂的なファンを持つ一方、理解できないと読者から距離を置かれがちな作家です。独白形式の小説も良いですが、今回は書簡形式で有名な一作を紹介します。

ドグラ・マグラ

昭和十年一月、書下し自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成する。“日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。
https://www.amazon.co.jp/dp/4041366038

異常に読みにくく、気が狂う小説、とも言われますが、相当な仕上がりです。ここまで難解な内容・構成でよく書ききったな、と。

カズオ・イシグロ、アゴタクリストフなどを読んで、信用できない語り手、の話術にハマったら是非チャレンジしてください。

 

おわりに

まだまだ紹介したりないですが、まずはカズオ・イシグロorアゴタ・クリストフから読み始めるとよいと思います。文学史上に残る名作を楽しめると思います。

 

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