はじめに:人生は有限、読める本もまた有限
*2017.03.01 タイトル修正
人生は有限で、読める小説の数にも限りがあります。その限られた時間の中で、どうすれば魂を揺さぶる本に出会えるか。確率を上げていく方法があります。
それは、相性の良い翻訳家に頼る、ということです。
翻訳家は、多数の本を読んで、『これは』という作品を翻訳するのです。翻訳には時間がかかるので、自然と厳選する作業が発生するのは自明でしょう。
ということで、信頼できる翻訳家を見つければ、あとは彼らの訳した海外小説を読めば当たりを引く可能性は自然と高まります。
今日は私の独断と偏見で、オススメ翻訳家を6名紹介したいと思います。ちなみに、海外文学系です。
ミステリー小説やSF小説、ファンタジー小説、児童文学などは対象外ですのでまたの機会に。
目次
柴田元幸
私が最も敬愛する翻訳家で、ご存知の方も多いでしょう。日本文学界で最も有名な翻訳家の一人です。 大先生です。
ポール・オースター、チャールズ・ブコウスキー、スティーヴ・エリクソン、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウンなど現代アメリカ文学や、ポストモダン文学の翻訳を数多く行っています。
私は彼のおかげでレベッカ・ブラウンという作家に出会えました。オースターの『ムーン・パレス』を読んで以来、完全に信頼を置いて、柴田元幸の翻訳を読み漁っていたからです。
また、村上春樹の翻訳の助けも行っており、交友も深いです。翻訳賞の受賞歴も多いです。
1995年、ポール・オースター『ムーン・パレス』でBABEL国際翻訳大賞日本翻訳大賞(主催:「翻訳の世界」(バベル・プレス))を受賞
2005年、『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)で、サントリー学芸賞を受賞
2007年、『ふつうに学校にいくふつうの日』で第11回日本絵本賞翻訳絵本賞を受賞
2010年、『メイスン&ディクスン』(上・下)で第47回日本翻訳文化賞を受賞
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1994/03
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 2回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
柴田元幸が専属的に翻訳しているポール・オースターのおすすめ作品はこちら。
岸本佐知子
私が始めて彼女の作品に出会ったのはジョン・アーヴィング『サーカスの息子』でした。物語そのものは、いつものアーヴィング作のような切れ味が少ないな、と感じたのですが、描写がものすごく印象に残ったのです。
そのシーンは雪のシーンだったのですが、映像が脳内にくっきりと浮かんで、主人公と自分の見ている光景、感情が完全に一致したように感じました。奇跡のような体験でした。
そんな体験をして以来、彼女の翻訳する作品をチェックしています。たくさんの素晴らしい作家に出会うことができました。ニコルソン・ベイカー、ジュディ・バドニッツ、
そして、何よりミランダ・ジュライ。優れた女性作家に出会いたいのなら、岸本佐知子訳の本は要チェックです。
また、エッセイも非常に人気で、日本の文学界からも川上弘美、小川洋子、北村薫を愛読者に持つほどです。
- 作者: ミランダ・ジュライ,岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/08/31
- メディア: ハードカバー
- 購入: 16人 クリック: 533回
- この商品を含むブログ (100件) を見る
野崎歓
彼に関しては意見が分かれるところかもしれません。(スタンダール『赤と黒』で下川茂から激しい誤訳批判をされ、論争を巻き起こしました)
ただし、ミシェル・ウェルベックの多くの小説で翻訳を務めていて、この翻訳は素晴らしいです。
その他、多数の翻訳を手がけています。ジャン=フィリップ・トゥーサン、エルヴェ・ギベール、ボリス・ヴィアン、クリスチャン・ガイイなど。要チェックです。
野崎孝
野崎縛りではないですが、野崎孝も忘れてはなりません。サリンジャー作品の超名翻訳で一躍有名になりました。サリンジャー作品は村上春樹も翻訳をよく手がけていますが、私的にはまるで相手になりません。野崎孝訳がぶっちぎりで良いです。
古典名作の多くを手がけています。ジョン・スタインベック、F・スコット・フィッツジェラルド、マーク・トウェイン、ハーマン・メルヴィル、アーネスト・ヘミングウェイ、グレアム・グリーンなどなど。
古典読まず嫌いの人は、彼の翻訳したものだけでも読めば、相当印象が変わると思います。リズム感と切れ味が段違いです。
土屋政雄
カズオ・イシグロ作品の多くを手掛けるする翻訳家です。カズオ・イシグロが、作品ごとに異なる語り口を非常にうまく訳し分けています。もちろんカズオ・イシグロのテクニックに驚いたのですが、よく考えれば、その訳し分けをできる彼もすごい技術の持ち主だな、と。
他にはサマセット・モーム、ヴァージニア・ウルフ、アーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベックなども手がけています。
カズオ・イシグロのおすすめ作品はこちら。
村上春樹
おい、こいつは翻訳家じゃないだろ、こいつは認めないぞ、そういう声もあるかと思います。私も彼の翻訳はまだまだだとは思います。
しかし、彼の一番の功績は、本来なら埋もれかねない海外作家を彼のネームバリューで、出版にこぎつけてくれたことです。彼のおかげでチャンスが広がったのです。
それに、そんなに言うほど翻訳はひどくはありません。確かに村上節が気にはなるかもしれませんが、柴田元幸のチェックも入っていますし、そんなに問題ではなくなってきているように思います。
私がレイモンド・カーヴァーに出会えたのは、この人のおかげです。あなたにとって運命的な出会いをもしかしたらもたらしてくれるかもしれません。
愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)
- 作者: レイモンドカーヴァー
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 61回
- この商品を含むブログ (76件) を見る
おわりに
人生は有限で、読める本には限りがあります。
この記事が、あなたの海外小説との出会いの助けになりますように。
あわせて読みたい