多彩なクリエイター辻仁成の略歴(作家)
1989年、『ピアニシモ』で第13回すばる文学賞を受賞し作家デビュー。1991年、本格的に作家としての活動を始める。1994年、『母なる凪と父なる時化』で芥川賞候補、『ミラクル』が青少年読書感想文課題図書になる。1996年、『アンチノイズ』が三島由紀夫賞候補に。1997年、『海峡の光』で第116回芥川賞を受賞(柳美里『家族シネマ』と同時受賞)。同年に函館市栄誉賞受賞。
1999年、『白仏』の仏語翻訳版 Le Bouddha blanc(仏語翻訳者:Corinne Atlan)でフランスの五大文学賞の一つであるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『白仏』は祖父、今村豊をモデルとした作品。2003年、渡仏。拠点をフランスに置き、創作活動を続けている。
辻仁成 - Wikipedia
ECHOES( エコーズ)のフロントマンとしても人気を集めた辻仁成。『愛をください』でお馴染み”ZOO”の原曲を歌っていたバンドですね。
バンドが難しくなってきて、小説家に転進したのか、逃げた、などと当時は言われたみたいですが、小説家としての才能の方が本物だったみたいです。
『冷静と情熱の間』の男性視点、『サヨナライツカ』など、大ヒットを飛ばしまくる売れっ子作家。
売れ腺の小説以外にも読ませる小説がたくさんありますが、この記事ではその中から10作をランキング形式で紹介します!
目次
ランキング
選定にあたってのランキングポリシーと雑感を下記↓
- 独自ランキング
- よく言えばロマンチストさ、悪く言えば自意識過剰さが伝わってくる小説
- とにかく『白仏』が良すぎる
それではランキングどうぞ!
10位 オキーフの恋人 オズワルドの追憶
失踪した作家・高坂譲の行方を追って編集者の小林慎一郎は、作家の代理人・榛名潤子を下北沢に訪ねる。作家が遺した原稿「オズワルドの追憶」は、下北沢を舞台にした探偵小説で、主人公の夢窓賢治が巻き込まれる、女子高校生を狙った悪夢のような連続殺人が描かれていた。カウンセラーでもある代理人の美貌に編集者が惹かれてゆく一方、作者不在のまま続く連載小説はやがて衝撃の展開を迎える。オキーフとオズワルド。たくらみに満ちた二つの物語が、互いに幻惑しながら誘う一つの大きな世界。圧倒的な筆致と、巧妙な仕組みで到達した、未知なる文学アドベンチャー。
https://www.amazon.co.jp/dp/4094088423
辻仁成版の”世界の終わりとハードボイルドワンダーランド(村上春樹)”って感じでしょうか。言い過ぎか?笑
内的世界と外的世界がパラレルワールドとして展開していくんだけど、ラストに向けてハマっていく感覚は気持ちいい!一方、溶けていくための仕掛けが長いので、辛くもあります。ということで、いきなりこれは読めない。笑 相当辻仁成のことを好きになってから、もしくは、小説というものが好きで好きでしょうがない人が読んでほしい。
9位 愛のあとにくるもの
「変わらない愛って、信じますか?」小説家を目指す潤吾は、失恋の痛手のなか、韓国からの留学生・崔紅と出会いそう問われる。そこから始まる狂おしい愛の生活―。やがて二人は、小さな行き違いで決別するが、七年後の再会で愛が蘇り…。韓国人気作家・孔枝泳(コン・ジヨン)とのコラボレーションで放つ渾身の恋愛長編小説。https://www.amazon.co.jp/dp/4344413458
辻仁成って、恋愛もののコラボ好きですよね?しかもなんていうか、国境を越えていきそうなやつ。”冷静と情熱のあいだ”なんかもそうですし。というか”冷静と情熱のあいだ”がヒットしたから企画がどんどん出て来るのか。
まぁどちらでも良いですが、韓国の人気作家とのコラボということで、 純愛大国、韓国の物語が好きなマダムには良いかも。文学的には......?
ちなみに、コン・ジヨンは女性作家です。
8位 99才まで生きたあかんぼう
人は誰もが泣いて生まれてくる。笑うことを覚え、ヨチヨチ歩いては、転んで泣いて、また起きて。恋をして愛を知り、成功と挫折、哀しみを乗りこえて、それでも人は歩き続ける──。〈人間は死ぬまで赤ん坊なんだと思いませんか?(あとがきより)〉。一人の男の、0才から99才までをつづった一大叙事詩。年齢、性別、人種、宗教を超え、百年のいのちの輝きを描いて、著者の祈りが心を打つ感動作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087462641
辻仁成はロマンチストなアイデアマンですね。
この作品は、アイデアに中身が追い付いてない、というかそこまで中身を求めていない、というのが正しいでしょうか。99歳までの1年間ずつを見開き2ページで書いてみる、というアイデア一本勝負で書ききった作品です。
”愛をください/ZOO”として表現していたのも、いわばアイデア一本勝負。見方を変えれば(変えてもらうことができれば)、同じものを見てもおもしろくなる、っていうヤツですね。
7位 ミラクル
僕はママを知らない。でも、いつもどこでもママを探しているんだ――。優しい文と絵でかつての子供たちに贈る愛しくせつない物語。
https://www.amazon.co.jp/dp/410136124X
人間の美しさに触れられる一冊。辻仁成はロマンチストすぎる部分もありますが、この本ではそれが良い方向に作用しています。子どもに絶対読ませたい一冊!もちろん大人が読んでも楽しめます。
プレゼント用としても超おすすめです!
6位 海峡の光
廃航せまる青函連絡船の客室係を辞め、函館で刑務所看守の職を得た私の前に、あいつは現れた。少年の日、優等生の仮面の下で、残酷に私を苦しめ続けたあいつが。傷害罪で銀行員の将来を棒にふった受刑者となって。そして今、監視する私と監視されるあいつは、船舶訓練の実習に出るところだ。光を食べて黒々とうねる、生命体のような海へ……。
海峡に揺らめく人生の暗流。芥川賞受賞。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101361274
舞台設定は特殊ですが、登場人物の心理描写が真に迫っていて、この物語がある種の真実を語りかけてきているのが感じ取れるはず。
自意識過剰の人が読むと心がざわつき、苦しみ、運がよければ(幾分か)救われるでしょう。
5位 ピアニシモ
形だけの家庭と敵意に満ちた教室。転校生の僕の孤独を癒してくれるのは、伝言ダイヤルで知り合った少女サキだけだった…。すばる文学賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087498115
ロッカーとして活躍していた辻仁成が小説家デビュー!ということで、『食っていけなかったのか』などと思われた方も多かったはず。
ですが、ここからどんどん作品を増やして小説家として大成するんですからわからないですよね。初期の作品の中でも特に自意識が高く、孤独な個人世界にこもっているのですが、そこがまた良い。一人称の小説が好きな方は読みましょう。
4位 代筆屋
どうしても伝えなきゃいけない想いがある。自分では表現できないほど強い想いがー。 舞台は、吉祥寺の井の頭公園のそばにあるカフェ「レオナルド」。小説家のはしくれの「私」は、口コミで広がった「代筆屋」として、恋に悩む青年から、88歳の老女まで、老若男女のさまざまな想いの代筆を依頼されます。
恋あり、別れあり、喜びあり、悲しみあり、依頼人らの人生模様と切実な想いは、手紙を通してあなたの胸を優しく包みこみます。思わず大切な人に手紙を書きたくなる一冊です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4344411129
狙いがすごく良い。マーケティングの勝利と言っても良い作品。
想いを伝える、想いを汲み取る、その意図を持っているという時点でドラマがあるに決まっていますよね。
疲弊しているとき、弱っているときに読んでみてください。自分にとって本当に大切なものに気づけるはず。
3位 愛はプライドより強く
ナナは、「愛している」と、たったひとこと打ち明けるのに、二年もかかったナオトのことを、もう忘れてしまったわけではなかった。しかし、日数なんて問題じゃない、と言いきった鉅鹿の言葉とあの突き刺すようなまっすぐな視線は、それ以上にナナの心を揺さぶりつづけている。
迷う男と迷わない女たちへ。愛をとるか。プライドをとるか。辻仁成初の書き下ろし恋愛小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/4877285814
芸術というものは、売れるということを考えては高みにいけない。しかし、売れないと芸術を続けることはできない。そんな当たり前のことを突き詰めて考えて、辻仁成流の物語にすると、こんな小説ができあがるのですね。
題名をしっかりと胸に刻むと良いです。
青臭いけど、大切な気持ちを忘れないために読みたい一冊。
2位 サヨナライツカ
「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」。“好青年”とよばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しくくるおしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。
愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/434440257X
ミリオンセラーの大ヒット小説。主人公の好青年のスーパーマンぶりに腹が立ちます。けどいわば”おとぎ話”なんです。普通の人間には味わえない、特殊な夢のようなものですよね。そう思って(無理やり)感情移入すると、夢を色鮮やかに体験できます。
まぁナルシストで自意識過剰なんですよね辻仁成って。それを理解して読むとこれは超オススメです。
1位 白仏
19世紀終わり、筑後川最下流の大野島で刀鍛冶の息子として生まれた稔。大正七年のシベリア出兵から帰国後、手先の器用さを活かして機械の発明、改良の職に就いた彼は、あるとき戦死した兵隊や亡き初恋の人、家族、友人の鎮魂に、島中の墓の骨で一体の仏像を造ることを決意する―。
明治から昭和まで、激動の時代を生き抜いた男の一生を描く長編小説。フランス、フェミナ賞外国小説賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087453472
辻仁成の最高傑作はコレ。
一生丸ごとを語った小説なので、読む時期によって印象ががらりと変わるはず。私の場合、ジョン・ウィリアムズの”ストーナー”を読んでいるときに感じた、人生の無意味さ、無価値さ、それに対する絶望、みたいなものが蘇りました。
ちなみに、暗い本では全くありません。むしろ、人間の強さ・たくましさといった、希望の側面が描かれているはず。残酷なエピソードもあるけれど、基本的にはとても人間が美しい物語なんです。
それでも読後には、人生について絶望しちゃうんですよね。読み手の解釈次第だと思いますが、読み進める中で人生や死と向き合わざるを得ない一作。
おわりに
辻仁成のおすすめ小説10作をランキング形式で紹介しました!
個人的には、自意識過剰でナルシスト気味というテレビでの印象がそのまま反映されてるなーって感じです。全く悪い意味ではありません。
すかした感じの小説さえも、そういうイメージが想起されるので、かえって男性らしい、というか人間らしい物語になるんですよね。
読まず嫌いの人は是非『白仏』から読んで見てください!絶対後悔はしませんよ!
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