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『迷子の警察音楽隊』大人だけが味わえる人生の哀愁

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はじめに:コメディーだけど苦笑/微笑映画

 カンヌ映画祭にて、ある視点部門一目惚れ賞/国際批評家連盟賞/ジュネス賞を受賞した本作ですが、ジャンル的にはほっこり笑える映画でしょうか。

 

微笑ましいというかなんというか、いやいや、苦笑の方が多かった気もします。ともかく心に残る映画には間違いありません。

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目次

 

あらすじ&作品概要

 文化交流の為イスラエルに招かれてやってきたエジプトのアレキサンドリア警察音楽隊。何故か空港に出迎えは無く、自力で目的地に辿り着こうとするうちに、彼らは一文字間違えてホテルすらない辺境の町に迷い込んでしまう。そこで、食堂の美しい女主人に助けられ、地元の人の家で一泊させてもらう事に。

でも相手は言葉も宗教も違い、しかも彼らアラブ民族と長年対立してきたユダヤ民族。空気は気まずく、話しは噛み合わない。国を越えて愛されてきた音楽の数々、それらが彼らの心を解きほぐし・・・愛や友情、家族について語り合う、忘れられない一夜がはじまる。

出演: サッソン・ガーベイ, カリファ・ナトゥール, ロニ・エルカベッツ
監督: エラン・コリリン

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緊張と緩和

 アラブ民族とユダヤ民族という、緊張感溢れる対比に加えて、音楽隊のメンバーも堅物のリーダーにナンパな若手団員というコントラスト、美女と堅物団長というコントラストもあります。それらがうまく緊張と緩和の働きをして、いたるところに微笑が生まれます。

緊張のある場には必然的に笑いが生まれる、というのは自明でそれを狙った映画もたくさんあります。葬式をコメディに仕上げたフランク・オズ監督の『Death at a funeral』/(邦題:ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式)なんかもうめちゃくちゃおもしろいです。

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白黒つけない大人の味

この映画にははっきりとしたメッセージ性はありません。あるとすれば、『白黒つけずに、今ある条件を受け入れ、やりくりして生きていく』というような曖昧なメッセージです。何も語っていないのと同じです。


主人公が全てを象徴していますが、大人になればなるほど、真にわかりあえないものが増えていくものです。『息子の自殺』が象徴するように、受け入れがたい事実もたくさん生まれてきます。

音楽隊というタイトルなだけに、音楽は凄まじく良いのか、と言われると、それほどでもない、というまた何ともいえない空気感なのです。ですが、その酸いも甘いも噛み分けたような、知り尽くした大人感が、苦笑と微笑を誘ってくれるのです。

 

エンターテイメント映画、娯楽映画としてではなく、大人が嗜む映画として、オススメです。

 

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