純文学とエンタメ小説の文学賞をダブル受賞の最強売れっ子作家
1997年、「最後の息子」で、第84回文學界新人賞を受賞し、小説家デビュー。同作で、第117回芥川龍之介賞候補。2002年、『パレード』で、第15回山本周五郎賞を受賞。同年には「パーク・ライフ」で、第127回芥川龍之介賞を受賞。純文学と大衆小説の文学賞を合わせて受賞したことで話題になった。2003年、布袋寅泰のシングル『NOCTURNE No.9』のカップリング「グレイト・エスケイプ」で作詞に挑戦。
若者の都市生活を描いた作品が多かったが、殺人事件を題材にした長編『悪人』で2007年に第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞を受賞。2010年、『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。2016年、芥川龍之介賞の選考委員に就任。
吉田修一 - Wikipedia
そもそも文学賞には2種類あって、芸術的要素を重んじる純文学系の賞と、娯楽的要素が重んじられるエンタメ系の賞の2つがあります。有名な賞を例にするとわかりやすいので下記します。
- 純文学系(芸術性が高いとされる):芥川賞など。又吉先生、綿矢りさなどなど
- エンタメ系(娯楽性が高いとされる):直木賞など。やめるってよの朝井リョウなどなど
吉田修一は、当初純文学系の作家として賞レースをどんどん勝ち上がっていってたのですが、エンタメ系の賞も受賞し、映画化されるヒット作をばんばん出すなど、縦横無尽の活躍をしているのです。
そもそも純文学とエンタメ小説の境は薄まってきていたとはいえ、素晴らしい活躍っぷり。すごいです。でも、純文学系の切ない、乾いた作風の方が俄然好きだったなぁ。純文学厨ではありませんが、昨今の作品はテーマが派手になっていったり、重く見えてくる割に内容が軽くなるのは寒いよ。。。。。。
この記事ではそんなマルチな吉田修一のおすすめ小説ベスト13をランキング形式で紹介します!
目次
おすすめ小説ランキング
13位 森は知っている
南の島で知子ばあさんと暮らす十七歳の鷹野一彦。体育祭に興じ、初恋に胸を高鳴らせるような普通の高校生活だが、その裏では某諜報機関の過酷な訓練を受けている。ある日、同じ境遇の親友・柳が一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも―!?その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとなる初ミッションに挑むが…。https://www.amazon.co.jp/dp/4344426436
ハリウッド映画とかって、売れた映画の外伝みたいなのよくやるじゃないですか。スターウォーズのハン・ソロが大活躍するやつとか、ハリーポッターのお茶濁しみたいなやつとか。”森は知っている”はそんな感じの作品。
でもおもしろいよ!怒られるか。笑
まぁ最初に読む本じゃありません。昔はもっと純文学してたんだぞーーー若い読者へ伝えたい。
12位 東京湾景
「愛してないから、こんなに自由になれるの」「それでも、お前と一緒にいたかったんだよ」。品川埠頭の倉庫街で暮らし働く亮介が、携帯サイトの「涼子」と初めて出会った25歳の誕生日。嘘と隠し事で仕掛けあう互いのゲームの目論見は、突然に押し寄せた愛おしさにかき消え、二人は運命の恋に翻弄される。東京湾岸を恋人たちの聖地に変えた、最高にリアルでせつないラブストーリー。
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吉田修一って、意外とブルーワーカーの描写がいいんですよね。ひねくれてるけど欲望に忠実というか、妙に傷つきやすい不良っていうか、そういう絶妙なバランス感覚がいいんだよなぁ。
エンタメエンタメしすぎ、売れたすぎでしょアンタ、ってなってきているのは事実なんですが、そんな中に一筋の光が見える作品です。
11位 路
台湾でも大反響! 国を越え、溢れる想い 台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作! 1999年、台湾~高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。 台湾新幹線開発事業部に勤務する多田春香は、正式に台湾出向を命じられた。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。 1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。 「生きる感触を伝える物語の力」「国境を越える絆を描く傑作」「戦後文学の終焉、新しい感動を味わわせてくれる必読の小説」と各紙誌で絶賛された傑作長編。
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台湾って良いところなんですよ。夜市がイイ。メトロみたいなのに乗って大きな市場まで行って。コショウの味しかない唐揚げとか、汚い机で食べる麺類、小籠包みたいなやつ、フライドポテトとか何でも食べて。一晩中、そんな味の濃いつまみを片手に青島ビールやらなにやらを飲みながら泥酔していくっていうね。古着屋みたいなクオリティのアパレルショップに行って意味不明なTシャツ買ったり。とにかく無駄な時間が過ごせる。
こう書くと私の体験を通した台湾が浮かび上がってきたと思うんですが、吉田修一の小説は違う。もちろん取材に行ったりしたとは思いますが、完全に仕事として虚構を作り上げてる。文字を浮かび上がらせて、世界に引き込むんですよ。プロですね。
10位 パーク・ライフ
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。
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何も起こらない小説。
地方から東京に出て来た方ならば、自分が全く存在しないみたいな感覚になったことがあると思います。そんな無機質な肌触りを上手く描いた作品です。
近年の、エンタメ寄りの要素はあまりなく、芥川賞受賞か、ブンガクか、という感想が多そう。
他に『flowers』が収録されていますが、これは全くの駄作。読む価値なし。言い過ぎか。笑
9位 最後の息子
爽快感200%、とってもキュートな青春小説!! オカマと同棲して気楽な日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは……。とてもキュートな青春小説。文學界新人賞受賞作
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収録されている作品の中では、”Water”が良い。青春小説には目がないのですが、熱い気持ちを思い出させてくれます。
気持ちをずっと若く保ちたければ必読です。
8位 平成猿蟹合戦図
歌舞伎町のバーテンダー浜本純平は、ある日、ひき逃げ事件を目撃する。だが逮捕されたのは、まったくの別人だった。真犯人への恐喝を目論むうちに、世界的なチェロ奏者のマネージャー園夕子と知り合った純平は、いつの間にか地元東北から国政選挙に出馬することになり…。
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エンタメにパラメーターを振り切って書かれた大衆向け小説。その分深みだとか、芸術性はなくなっていますが、読ませるのなんの。
まず題名から狙ってますよね。誰が猿で、誰が蟹なのか。もしくはどの概念が猿でどの概念が蟹なのか。風刺を効かせてるのがたまりません。
7位 太陽は動かない
油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件。産業スパイ組織AN通信の鷹たかの野一彦は、部下の田岡とその背後関係を探っていた。目的は機密情報を入手し高値で売り飛ばすこと。商売敵のデイビッドと謎の美女AYAKOが暗躍し、ウイグル過激派による爆破計画の噂もあるなか、田岡が何者かに拉致された。息詰まる情報戦の末に、巨万の富を得るのは誰か?
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スパイに美女に裏ビジネス情報選.....とすっかりエンタメ小説が板についた吉田修一。元々筆力があるので、すごく良い具合に仕上がってます。
吉田修一版007みたいなお話です。
6位 愛に乱暴
これは私の、私たちの愛のはずだった―本当に騙したのは、妻か?夫か?やがて、読者も騙される狂乱の純愛。“家庭”にある闇奥。“独り”でいる孤絶。デビュー以来一貫して、「ひとが誰かと繋がること」を突き詰めてきた吉田修一が、かつてない強度で描く女の業火。
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今度の吉田修一は不倫がテーマ。ほんと、一作ごとに意欲的に新しい試みを取り入れ続けるところが魅力ですね。読者を飽きさせない、新鮮な驚きが常にあります。 違和感を効果的に配置し、読者を驚かせる仕組みが巧い。
個人的にはピュアな純文学でカズオイシグロばりの”信用できない語り手”の手法を使ってほしいな。
5位 横道世之介
大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い…。誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。第7回本屋大賞第3位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。
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吉田修一は、無機質で特徴のない都会の男を描くこともあれば、どうしようもないクズだったり、ダメ人間を描くのが得意です。このような場合ははっきり言って全く感情移入できません。
しかし、今作の世之介は、なぜかすごく愛おしい。憎めないんですよね。
その他、いつも通り巧妙な仕掛けがあって、楽しめます。
4位 さよなら渓谷
緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介に、集団レイプの加害者の過去があることをつかみ、事件は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の傑作長編。
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サスペンス/ミステリの体裁を取っているものの、 描かれている内容は複雑奇怪。書き始める前に相当吉田修一は悩んだんじゃないかな。
悩みの方向が内へ行っているというよりかは、外へ(読者へ)向かっていっているからこそ、読者は増えるんだろうなぁ。評価はどうなっていっているのかは知らないけど。
愛とは赦すこと。どういうことだろうと思ったら、読んでみてください。
3位 悪人
九州地方に珍しく雪が降った夜、土木作業員の清水祐一は、携帯サイトで知り合った女性を殺害してしまう。母親に捨てられ、幼くして祖父母に引き取られた。ヘルス嬢を真剣に好きになり、祖父母の手伝いに明け暮れる日々。そんな彼を殺人に走らせたものとは、一体何か―。
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ミリオンセラーの大ヒット小説。 この作品で一気に吉田修一は殻を破りました。凄まじいです。ミステリーの中にこれだけヒューマンドラマ的要素を入れられちゃあ、そこらへんの大衆小説家は太刀打ち出来ないです。
純文学純文学した作品が好きな人には向きませんが、濃厚な体験ができることは保証します。
2位 パレード
都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達。本音を明かさず、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。
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終盤までは初期の吉田修一臭がぷんぷんするんです。なんでもない日常をさらっと描いているのか~と思いきや、思いきやですよ。ラストのための仕掛けだったんですな。エンタメ。こういうのは良いですよ。前半たっぷり中身がない(ように思われる)展開が味わえるんですから。そこからの高低差がカタルシスですねぇ。良し悪しはありますが、カタルシス、昨今では必須みたいですから。
ベルリン国際映画祭で賞を取った行定勲監督、藤原竜也主演の映画も良い。
1位 怒り
若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「怒」という血文字が残されていた。犯人は山神一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。そして事件から一年後の夏―。房総の港町で働く槇洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。
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すっかりエンタメ小説家になった吉田修一が、読者を楽しませるテクニック満載で望んだ売れ線作品。
渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、池脇千鶴に妻夫木聡、綾野剛に森山未來、広瀬すずなどなど、超豪華俳優陣で話題になった映画も超高評価。 映画との相性良すぎなのは、きっと吉田修一創作の段階でが映画を無意識のうちに描いているからでしょうね。脱帽です。
おわりに
吉田修一のおすすめ小説ベスト13をランキング形式で紹介しました。
もともとは純文学作家として芥川賞も受賞したんですが、近年は映画と非常に相性の良い作品でヒットを飛ばしまくるエンタメ作家って感じになってきていますね。
それでも、芥川賞受賞の筆力は伊達じゃない!ということで、読み応えは抜群です。映画だけ観たって言う人も是非原作読んでみてください。映画の10倍は楽しめるはず。