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アジア・ドラッグ・母性を自由自在に描く角田光代の読むべき15冊

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静かな怨念や恨みがそこかしこに感じられる作家 

大学を卒業して1年後の1990年、「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞し、角田光代としてデビュー。1996年に『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を受賞したほか、数度芥川賞の候補に挙がった。2005年、『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞受賞。『キッドナップツアー』など児童文学も手がけている。
私生活では、2006年に芥川賞作家の伊藤たかみとの結婚が発表されていたが、2008年に一部雑誌で離婚が報じられる。2009年10月、ロックバンドGOING UNDER GROUNDのオフィシャルウェブサイトでドラマーの河野丈洋との再婚が発表された。
学生時代からボクシングを始め、2013年現在も輪島功一のボクシングジムに通っている。
●受賞歴●

1988年「お子様ランチ・ロックソース」で第11回コバルト・ノベル大賞受賞(彩河杏名義)。
1990年「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞受賞。
1996年『まどろむ夜のUFO』で第18回野間文芸新人賞受賞。
1998年『ぼくはきみのおにいさん』で第13回坪田譲治文学賞受賞。
『草の巣』で第11回三島由紀夫賞候補。
1999年 - 『キッドナップ・ツアー』で第46回産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞
2000年『キッドナップ・ツアー』で第22回路傍の石文学賞受賞
2003年第3回婦人公論文芸賞受賞。
2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞受賞
2006年「ロック母」で第32回川端康成文学賞受賞。
2007年『八日目の蝉』で第2回中央公論文芸賞受賞。
2011年 - 『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞受賞。
2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞受賞。
『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞受賞。
2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞受賞。

角田光代 - Wikipedia

読んで感じるのが、絶対この人暗い過去があるんだろうな、っていうことです。実際にあまり思い出したくない過去があるようで、それが作品にモロ出てます。 よくない形で出てくると、読むのがとてもしんどい。良い形出てくると、多くの人を揺さぶるヒット作となります。
角田光代は試行錯誤の上、良い形で自らの闇を表現し、『八日目の蝉』で大ヒットしたのでしょう。
純文学路線で行くのかと思われた時期もあったようですが、主戦場は純文学からは穴れてしまったエンタメ作家です。
この記事では角田光代のおすすめ小説を15作ランキング形式で紹介します。

目次

 

ランキング

ランキングポリシーと雑感(のようなもの)です。

  • 独自ランキング
  • 角田光代作品の全ては読んでいません
  • 大ヒット作家は作家志望にも勉強になるところが多い

 

それではランキングどうぞ

15位 トリップ

 

普通の人々が平凡に暮らす東京近郊の街。駆け落ちしそびれた高校生、クスリにはまる日常を送る主婦、パッとしない肉屋に嫁いだ主婦―。
何となくそこに暮らし続ける何者でもないそれらの人々がみな、日常とはズレた奥底、秘密を抱えている。小さな不幸と小さな幸福を抱きしめながら生きる人々を、透明感のある文体で描く珠玉の連作小説。直木賞作家の真骨頂。
https://www.amazon.co.jp/dp/4334741924

おもしろみのない町にあって、少し変わった人たちを描いた作品集です。それぞれの小説がところどころつながっていておもしろい。
大きなオチもサスペンスもないんですが、登場人物の誰もが悩んで、苦しんでいる。中でも表題作『トリップ』はとても良かった。文字通りトリップする奥さんの描写が、なんとも言えない。
大人になりきれない大人にオススメ!

14位 学校の青空

 

女子だけの中学に上がって最初に夢中になったことはカンダをいじめることだった。退屈な日常とおきまりの未来の間で過熱してゆく少女たち。新鋭女性作家による話題の4篇の作品を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/4309405797

しょうもなくて、恥ずかしくなる稚拙な悪意。子どもの頃を思い返してみると、いたるところにあったと思います。感覚が呼び起こされます。
女子ってめんどくさい、そう思ったことのある全ての人へ。

13位 夜かかる虹

 

ひとり暮らしの私を突然男連れで訪ね、男を置いて帰ってしまった妹リカコ。外見はそっくりで性格は正反対、甘い声で喋り、男に囲まれ、私を慕いながら、一方で恋人まで奪おうとする妹。
痛くて切ない姉妹関係をリアルに描く表題作をはじめ、人とのつながり、自分の居場所を誠実に問う作品集。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01FDIEUAO

三島由紀夫賞候補になった『草の巣』が収録されていて、それがとても良いです。自分の居場所について悩む時、自分の存在価値について悩んだ時読んでみてください。直木賞作家ですが、芥川賞も狙えたんじゃね?って思わせる作品です。

12位 キッド・ナップ・ツアー

 

私を見下ろすお父さんの背後には、車輪のぴかぴか光るいろんなタイプの自転車があった。きっとこの人は、私がいなかったら、なんの罪悪感もなく鍵のかかっていない自転車を拝借しちゃうんだろうな、と私は思った。本当のことを言うと、私はそう思うことがうれしかった。
甲斐性ない。だらしない。お金ない。3N(ナイ)父親と、ハルとの、ひと夏のユウカイ旅行。新進文芸作家の描く、あたらしい児童文学。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101058210

ロードムービーを観ているような小説。軽やかでいて、どこか切ないのは、お父さんの親としての情けなさを自分自身に見るからでしょうか。
子を持つ大人におすすめ。もちろん子どもにも。 

11位 対岸の彼女

 

専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。
結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4167672057

直木賞受賞作。 
大人になったら、知り合いは増えるけれど、深い意味での友達って、なかなかできにくい。それはきっと、一緒に苦労したり、一緒に時間を過ごす軸が違うからだと思うんですよね。
女性同士の微妙な距離感がすごく上手く描かれた良作です。

10位 幸福な遊戯

 

ハルオと立人とわたし。恋人でもなく家族でもない者同士の共同生活は、奇妙に温かく幸せだった。しかし、やがてわたしたちはバラバラになってしまい─。表題作「幸福な遊戯」を含む、瑞々しさ溢れる短編集。
https://www.amazon.co.jp/dp/4043726015

純文学作家として生きていく可能性があった時代の作品集。デビュー作である表題が良いです。
心理描写があまり上手くなく、ちょっと空回りしているんですが、ところどころにぐっと来る表現も。 

9位 ツリーハウス

 

じいさんが死んだ夏のある日、孫の良嗣は、初めて家族のルーツに興味を持った。出入り自由の寄り合い所帯、親戚もいなければ、墓の在り処もわからない。一体うちってなんなんだ?この際、祖父母が出会ったという満州へ行ってみようか―。
かくして、ばあさんとひきこもりの叔父さんを連れた珍道中が始まる。伊藤整文学賞受賞作品。
https://www.amazon.co.jp/dp/416767209X

純文学より、こういうちょっとサスペンス or ミステリーチックな作品を書いた方が良い作家ですね。しょうもない出来事を、ドラマチックに書ける筆力に脱帽。 
読んで深遠な気持ちになることはありませんが、ある程度のカタルシスは味わえます。

8位 ピンク・バス

 

子供を妊娠し浮かれているサエコの家に、夫の姉・実夏子が突然訪れる。長い間消息不明だったという実夏子は、そのまま勝手に住み着いてしまった。真夜中に化粧をしたり、冷蔵庫のハムを丸ごと食べたり、と不審な行動を繰り返す実夏子。何も言わない夫に苛つき、サエコの心はかき乱されていく…。出産を目前に控えた女性の心の揺れを描いた表題作ほか、一篇を収録。瑞々しい筆致で描き出された、心に染みる極上中篇集。
https://www.amazon.co.jp/dp/4043726023

妊娠中のいらだちを、実夏子という人物に表出させた作品。中編なのでサクッと読めます。どこかずっとずれてる世界観が味わえる良作です。

7位 マザコン

 

「あなたはマザコンよ、正真正銘の」妻に言われ、腹立ちまぎれに会社の女の子と寝てしまったぼく。夫より母親を優先する妻のほうこそ、マザコンではないのか。苛立つぼくの脳裏に、死の床から父が伸ばした手を拒む母の姿がよみがえり…
表題作ほか、大人になった息子たち娘たちの、母親への様々な想いを描く作品集。疎ましくも慕わしい母と子の関係―胸がしめつけられる、切なくビターな8編。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087466302

子にとって母はいつまでたっても母だし、母にとって子はいつまでたっても子なんですよね。たとえお互いが老け込んでしわしわになったって。
いつまでたっても分かり合えない気もするし、お互いだけが分かり合える存在のような気もする。
そんなことを思ってしまう小説。

6位 みどりの月

 

男女四人の奇妙な共同生活。別れの予感を抱えた夫婦の、あてのないアジア旅。最も注目を集める作家が、今を生きる若者達の胸にひそむ明るい孤独感とやるせない心の行方を描く。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087475832

角田光代の小説にはよくドラッグが出てきますが、ジャンキーだった時代があるんだろうか?中島らもじゃあるまいし、と思いつつ、世界の軸がズレたような描写があったりするので想像してしまいます。まぁしてないか。
ちょっと暗くなるお話ですので取扱注意。

5位 ロック母

 

作家としての苦悩のはじまりに“しょぼんとたたずむ”忘れ難い作品、「ゆうべの神様」。シングルマザーになる覚悟で離島の実家に帰った私を待っていたのは、恐ろしいほど変わらない風景と“壊れた”母親だった。
――川端康成賞受賞作、「ロック母」など、15年にわたる作家活動をあまさずとらえた傑作作品集。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062766701

”母と子”、”アジア”など角田光代お得意の世界観が詰まった作品集です。なので、角田光代がどんな作家か知りたければこれから入るのもあり! 
むちゃくちゃ感情を揺さぶるような作品はありませんが、心のかゆいところをくすぐってくる感じ。

4位 かなたの子

 

生まれなかった子が、新たな命を身ごもった母に語りかける。あたしは、海のそばの「くけど」にいるよ―。
日本の土俗的な物語に宿る残酷と悲しみが、現代に甦る。闇、前世、道理、因果。近づいてくる身の粟立つような恐怖と、包み込む慈愛の光。時空を超え女たちの命を描ききる傑作短編集。泉鏡花文学賞受賞。
https://www.amazon.co.jp/dp/4167672103

ロック母、がポップな短編集だとしたら、この『かなたの子』は角田光代のシリアスな短編集。本格派です!
この世界はちょっと足元を踏み外すと全然違う世界につながっている。駅のホームであと数歩足を踏み出したら、包丁に力を入れるその瞬間、くしゃみや目眩が急にきたら......世界が変わってしまう、うすら寒い瞬間が味わえます。

3位 紙の月

 

ただ好きで、ただ会いたいだけだった。わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。正義感の強い彼女がなぜ?そして―梨花が最後に見つけたものは?!第25回柴田錬三郎賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4758438455

文学的要素なんてどこ吹く風。繊細な描写や芸術性なんて捨てて、とにかく読者を楽しませることを考えて書かれています。
エンタテイメントに徹した角田光代の本気が味わえます。

2位 私のなかの彼女

 

「男と張り合おうとするな」醜女と呼ばれた亡き祖母、そして物書きを志した祖母の言葉の意味は何だったのだろう。和歌が心に芽生えた書く衝動を追い始めたとき、イラストレーターの仙太郎と夢見た穏やかな未来は、いびつに形を変えた。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。それでも自分は切実に求めているのだ、何かを。
すべてに抗いもがきながら、自分の道を踏み出す新しい私の物語。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101058326

2016年の角田光代が読める!
もはやベテラン作家の粋に達し、数々の文学賞や大ヒットを生み出したあと、それでも書き続けるのはなぜか。やっぱり書くことが生きることになっているんでしょうね。
”私のなかの彼女”という題名が暗示するものを考えさせる一作。

1位 八日目の蝉

 

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。
https://www.amazon.co.jp/dp/4122054257

 一位は八日目の蝉。やっぱりかという感じですが、角田光代を語る上でこれは外せないでしょう。
何故か誘拐犯に感情移入してしまうのは語り口のせいなのか、それとも自分の中に眠る家族や世間への不信感のせいなのか。
芸術性はないけれど、多くの人の心を動かした何かが詰まっています。

おわりに

角田光代のおすすめ小説15作をランキング形式で紹介しました。
しかし賞も取りまくって、大ヒットを当てたベテラン作家って、何をモチベーションに書いているんでしょうかね。自分だったら売れ線のエンタメ小説は卒業して、純文学に移行すると思うんだけどな。まぁ読者としてはおもしろいものが読めれば何でも良いのですが。
大ヒット作品は作家志望にも勉強になるので、そのような目で読むのもおすすめの作家です。

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