恋愛小説を受け付けない人へ
江國香織と言えば恋愛小説。けどそんなもの読めないし、読みたくもない、という人向けに、恋愛小説以外の作品ばかりを集めました。
の前に、江國香織ってどんな作家だっけ?って方のために、略歴をwikiから↓↓
1987年の『草之丞の話』で童話作家として出発、『きらきらひかる』『落下する夕方』『神様のボート』などの小説作品で人気を得る。2004年、『号泣する準備はできていた』で直木賞受賞。詩作のほか、海外の絵本の翻訳も多数。父はエッセイストの江國滋。
●受賞歴
1987年 『草之丞の話』で《小さな童話》大賞大賞。
1989年 『409ラドクリフ』で第1回フェミナ賞。
1991年 『こうばしい日々』で第38回産経児童出版文化賞。
1992年 『こうばしい日々』で第7回坪田譲治文学賞。
1992年 『きらきらひかる』で第2回紫式部文学賞。
1999年 『ぼくの小鳥ちゃん』で第21回路傍の石文学賞。
2002年 『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第15回山本周五郎賞。
2004年 『号泣する準備はできていた』で第130回直木賞。
2007年 『がらくた』で第14回島清恋愛文学賞。
2010年 『真昼なのに昏い部屋』で第5回中央公論文芸賞。
2012年 「犬とハモニカ」(『新潮』2011年6月号)で第38回川端康成文学賞。
2015年 『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で第51回谷崎潤一郎賞。
江國香織 - Wikipedia
私個人的にも、不倫だとか、秘められた恋だとか、エンタメに徹する江國香織はあまり好きではありません。ファンタジックで非日常な世界を描く作品の方が好きなんですよね。筆力はあるし。
この記事では、江國香織の恋愛小説以外のおすすめ作品ベスト7をランキング形式で紹介します!
目次
ランキング
ランキングポリシーと所感を下記↓
- 独自ランキング
- 恋愛小説を除くが、一部含まれている作品もあり
- 恋愛モノ以外は現実逃避したい時に読むべし
それではランキングどうぞ!
10位 温かなお皿
季節の彩りを添えた12皿の美味しいショート・ストーリー。
https://www.amazon.co.jp/dp/4652072171
『ささやかだけど、役に立つこと/レイモンド・カーヴァー』は私が何度読んだかしれない短編です。辛いときだったり、少しセンチになってしまったり、人生ってなんだろう、みたいな漠然とした不安が押し寄せてきたときに逃げ場所として一つでも二つでも物語を持っておくことは大切です。
この短編集も、そんな一冊になれうる作品が詰まっています。
9位 こうばしい日々
恋に遊びに、ぼくはけっこう忙しい。11歳の男の子の日常を綴った表題作など、ピュアで素敵なボーイズ&ガールズを描く中編二編。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101339120
恋愛小説ではないんですよ、これは。確かに恋があったり、マセてんのか?って思わせるところもあるんですが、全然ピュア。笑
こんな時代もあったねって微笑みながら読んでください。
8位 間宮兄弟
もてなくとも幸福に生きる兄弟の日常の物語 女性にふられると兄はビールを飲み、弟は新幹線を見に行く。そんな間宮兄弟は人生を楽しむ術を知っている。江國香織がもてない男性の日常を描いて話題になり、森田芳光監督の映画化も大ヒットした小説の待望の文庫化。
https://www.amazon.co.jp/dp/4094082182
女性作家が描くモテない男、これがいいんだよなぁ。何が良いって、愛に溢れた眼差しが感じられるんですよね。普通、作家の恣意的な造詣だとかを見抜いてしまうと、萎えてしまうことが多いと思うんですが、そうでもないこともあるんだな、と。狙っているとは思えませんが。
7位 すいかの匂い
あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある。つい今しがたのことみたいに――バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音、そしてすいかの匂い。無防備に出遭ってしまい、心に織りこまれてしまった事ども。おかげで困惑と痛みと自分の邪気を知り、私ひとりで、これは秘密、と思い決めた。11人の少女の、かけがえのない夏の記憶の物語。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101339163
こどもって純粋。純粋な悪意もあれば、純粋な善意もあって、そのどちらも残酷なものです。無垢さがもたらす記憶の感覚がおもしろい。
表題作で巻頭に配置されている”すいかの匂い”だけ若干短編集の中で特異な作品になっていて、私は一番好きだったのですが、これを超える作品がなかったのが残念でした。
もう二度と戻ってこない瞬間の秘密の経験が味わえます。
6位 流しのしたの骨
たとえお隣でも、よそのうちは外国より遠い。違う空気が流れている。怪談のきしみ方も、薬箱の中身も、よく口にする冗談も、タブーも、思い出も。
19歳の「私」と、不思議な家族たちの物語。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101339155
何気ない日常を淡々と描いているという体裁ではあります。が、日常の中身はヘンテコです。
考えてみると”普通”の家族なんてそうそうありませんよね?私たちのどの家族も、自分たちがどこかズレていると感じているはず。そのズレをうまく書くから、読者に『私だけの小説』として受け入れられるんでしょうね。テクニシャンです。
物語に抑揚がなく、カタルシスや大きな感動をもたらす類の小説じゃないので、そういうのを期待している人はお気をつけて。
5位 雪だるまの雪子ちゃん
ある豪雪の日、雪子ちゃんは空から降ってきたのでした。そして最初に彼女を発見した画家・百合さんの物置小屋に住みつきました。雪子ちゃんはトランプや夜ふかしやバターが大好きで、数字が苦手な野生の雪だるま。近所の小学生と雪合戦やなわとびもします。夏の間は休眠するし、いずれは溶けてしまうので、いつも好奇心旺盛。
「とけちゃう前に」大冒険!カラー銅版画12枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101339279
童話作家としての江國香織が味わえる作品。
日常と非日常の融合のさせ方がうまいです。子どもに読ませるのも良いですが、大人にも効きます。
4位 ホテル カクタス
古いアパートの奇妙な住人たち。大人のメルヘン。三階に帽子が、二階にきゅうりが、一階に数字の2が住んでいる石造りの古びたアパート、ホテル カクタス。
三人の、おかしくてすこし哀しい日々を描く、詩情あふれる大人のメルヘン。挿画多数。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087477096
防止、きゅうり、数字の2が登場人物というありえない設定です。ありえないのに、物語として読ませるんですよね。小さなエピソードの積み重ねで、どんどん物語の意図が見えてきます。そうこうしているうちに、誰もが三人のファンになってしまうはず。
読後は独特の切なさが残ります。
3位 ヤモリ、カエル、シジミチョウ
虫と話をする幼稚園児の拓人、そんな弟を懸命に庇護しようとする姉、ためらいなく恋人との時間を優先させる父、その帰りを思い煩いながら待ちつづける母―。危ういバランスにある家族にいて、拓人が両親と姉のほかにちかしさを覚えるのは、ヤモリやカエルといった小さな生き物たち。彼らは言葉を発さなくとも、拓人と意思の疎通ができる世界の住人だ。近隣の自然とふれあいながら、ゆるやかに成長する拓人。一方で、家族をはじめ、近くに住まう大人たちの生活は刻々と変化していく。
静かな、しかし決して穏やかではいられない日常を精緻な文章で描きながら、小さな子どもが世界を感受する一瞬を、ふかい企みによって鮮やかに捉えた野心的長篇小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/4022512296
家族それぞれの視点で物語が語られるのですが、小さな姉弟のパートが狂気を帯びていて読ませる一作です。姉弟がどう成長していくのか、認識と記憶がどう移行していくのか、そんなところに注目すると興味深さが増します。
ちなみに私は、江國香織の作中の恋愛観や不倫観が嫌いです。それらを売りにした小説は読む気がありませんが、本作にはその嫌な部分も出てきます。それが嫌な人は読まないほうが良いでしょう。
2位 ぼくの小鳥ちゃん
雪の朝、ぼくの部屋に、小さな小鳥ちゃんが舞いこんだ。体長10センチ、まっしろで、くちばしときゃしゃな脚が濃いピンク色。「あたしはそのへんのひよわな小鳥とはちがうんだから」ときっぱりいい、一番いいたべものは、ラム酒のかかったアイスクリーム、とゆずらないしっかり者。でもぼくの彼女をちょっと意識しているみたい。
小鳥ちゃんとぼくと彼女と。少し切なくて幸福な、冬の日々の物語。
https://www.amazon.co.jp/dp/410133918X
小鳥ちゃんがかわいすぎる。生意気だし、強がっているけどやきもち焼きな一面もあったりして、読んでいると幸せな気持ちになれます。
イラストがまた秀逸。のんびり現実逃避しながら読むと最高です。
1位 犬とハモニカ
外国人青年、少女、老婦人、大家族…。空港の到着ロビーで行き交う人々の、人生の一瞬の重なりを鮮やかに掬い取った川端賞受賞の表題作。恋人に別れを告げられ、妻が眠る家に帰った男性の心の変化をこぼさず描く「寝室」。
“僕らは幸福だ”“いいわ”―夫婦間の小さなささくれをそっと見つめた「ピクニック」。わたしたちが生きる上で抱え続ける、あたたかい孤独に満ちた、六つの旅路。川端康成文学賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101339287
空港のロビーって素敵ですよね。
何かが始まる、何かが終わる、そんな予感・実感がそこかしこに溢れている場所。そして、(大きな空港であれば)ひっきりなしに人が出入りして、色んな人がいて、人生がちっぽけに感じられる、そんな場所だと思うんですよね。
その空気を感じさせるのが表題作『犬とハモニカ』。短編集のなかでも圧倒的にできが良いんです。刹那的な出会いを感じてください。
おわりに
江國香織のおすすめ小説ベスト7をランキング形式で紹介しました。
恋愛もの以外にも、名作はたくさんあるんですよね。恋愛もので辟易としてしまって読まず嫌いになった人も、再チャレンジしてみると、印象が変わるはず!
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