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エドワード・ゴーリーの残酷で美しい大人の絵本おすすめ12冊紹介する

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はじめに:大人の絵本って?

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エドワード・ゴーリーの絵本の中には子供たちが出てくることが多くあります。もちろん絵本ですから、子どもが出てくるのが不自然というわけではありません。
ただし、彼らは健やかに育つわけではありません。時には殺されます。意味もなく殺されるのです。正しくは、意味は語られない、と言った方が良いでしょうか。意味のない死は、暴力的で、悲惨です。熊に襲われ、虫にやられ、ピーチを詰まらせ、ごろつきのえじきになり、じゅうたんの下敷きになって、がびょうをごくりと飲み込んで、死んでいきます。

殺される話ばかりではありませんが、倫理観なんて全く無く、不条理で残酷な暴力が支配する世界。薄ら寒くなるはずなんだけれども、惹きつけられてしまう。そんな非道徳的な魅力がエドワード・ゴーリーの絵本にはあります。世界中の大学や美術館で展覧会や特別展が開かれるようになり、世界的にカルト的人気を誇っています。

 

では本編へ。

 

目次

 

エドワード・ゴーリー略歴

絵本という体裁でありながら、道徳や倫理観を冷徹に押しやったナンセンスな、あるいは残酷で不条理に満ちた世界観と、徹底して韻を踏んだ言語表現で醸し出される深い寓意性、そしてごく細い線で執拗に描かれたモノクロームの質感のイラストにおける高い芸術性が、「大人のための絵本」として世界各国で熱心な称賛と支持を受けている。
また、幻想的な作風とアナグラムを用いたペンネームを幾つも使い分けて私家版を出版したことから、多くの熱狂的なコレクターを生み出している。

1972年、最初のアンソロジー本『Amphigorey』が出版され、ニューヨーク・タイムズのブックレビューにおいて「今年最も注目すべきアートブック5冊」に選ばれた他、「ベスト・デザイン・ブック15」として、アメリカン・インスティテュート・オブ・グラフィックアーツ賞を受賞。1978年、ブロードウェイの舞台『ドラキュラ』のセットと衣裳デザインを担当し、トニー賞を受賞したが、授賞式を欠席する。

エドワード・ゴーリー - Wikipedia

 尖ってますね。

 

話は逸れますが個人的には解散してしまった邦ロックバンド、ゆらゆら帝国のような世界観に近い気がします。彼らもカルト的な人気でした。

cass-9999.hatenablog.com

 

それではおすすめ絵本10選どうぞ!

うろんな客

風の強いとある冬の晩、館に妙な奴が闖入(ちんにゅう)してきた。そいつは声をかけても応答せず、壁に向かって鼻を押しあて、ただ黙って立つばかり。翌朝からは、大喰らいで皿まで食べる、蓄音機の喇叭(らっぱ)をはずす、眠りながら夜中に徘徊、本を破る、家中のタオルを隠すなどの、奇行の数々。でもどういうわけか、一家はその客を追い出すふうでもない。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309264344

超おすすめの一冊。
丁寧に読んで、色んな感情を味わって欲しいです。解説は解釈の一例にすぎませんが、丁寧に読んだあとには沁みると思います。ぜひ読んでください。

エドワード・ゴーリーはシュールすぎる作品も多いので、まずはこれを読むことをおすすめします。

 

ギャシュリークラムのちびっ子たちーまたは遠出のあとで

AからZまでが名前の頭文字についた子どもたち。登場と同時に次々と怪我や死に遭う。ただそれだけの、あっけなくも悲惨な話が、マザーグース風の2行ずつ脚韻を踏んだ軽快なテンポのうたに乗って進む、エドワード・ゴーリーの代表作。左ページに英語の原文、右ページに白黒のペン画、画の下にキャプションのような邦訳がついた、怖い絵本だ。

階段から落ちる、びょうを飲む、火だるまになる、線路で圧死、沼でおぼれる、オノでグサッ、ケンカのまきぞえ…。26人の子どもたちは、実に26通りの事故や犯罪に遭って、死んでいく。ここまで正面から当然のように子どもの死を陳列されると、いったいこれは何?と考え込んでしまう。

不幸の箱のような絵本なのに、繰り返し見たくなる。その魅力は、これら26人の子どもたちが、私たちの身代わりの人形(ひとがた)として悪魔払いをしてくれる、と思わせるからかもしれない。

危険に満ちた遠出の後でも、ふつう多くの子どもは戻ってくるのだが、一見平穏な日常が、紙一重で死と隣り合わせていることを、きゃしゃな手足、無防備で無垢な表情の、ゴーリー描く人形(にんぎょう)めいたこのちびっ子たちが、気づかせてくれる。
(中村えつこ)

https://www.amazon.co.jp/dp/4309264336

エドワード・ゴーリーの代表作で、典型的な世界観が描かれています。

ABC book、という形態を取っています(ちょっと違うけど日本で言うかるたみたいな感じ)。子どもの勉強絵本のようなつくりを逆手にとって、次々と意味もなく子どもを殺します。なんともおもしろいつくりになっています。

英語の文章もよく練られていてリズムがとても良い。 

おぞましい二人

1965年に明るみに出た「ムーアズ殺人事件」。イギリスで二人の男女が4年にわたり5人の子供を残虐に殺して荒野(ムーア)に埋めていた事実が明らかとなった。「もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と自ら言うエドワード・ゴーリーが、この現実に起きた悲惨な事件によって心底動揺させられ、描いたのが本書である。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309268005

エドワード・ゴーリーに出会った一冊です。

え、こんな絵本が存在して良いのか!?
読み進めると薄ら寒い展開にぞっとして、価値観が揺さぶられました。カフカや安部公房など、不条理な世界観の小説は大好きでしたが、絵本でそれをやられると、本当に斬新でぞっとしたのを覚えています。

華々しき鼻血

タイトルにひかれて表紙の絵に目を凝らせば、ハンカチで鼻を押さえた女が、岩の上にのけぞっている。厚い毛皮の外套を着た男が2人、鼻血の女には無関心で、彼方を見やる。裏表紙では、3人退場。代わりにとぼけた顔の白い犬が、女の倒れていたあたりをかいでいる。空には暗雲垂れこめて…。

でも本書は、不吉な一篇の物語というわけではなく、26の個別な文と、緻密な白黒のペン画とで構成された、アルファベットブック。AからZまでの頭文字の副詞が、ワンセンテンスの短文の中に必ず含まれている。というより、その副詞を中心にしている点が、珍しい。

たとえば「B」なら、「The creature regarded them Balefully」が原文。「まがまがしく/こ(子)らにらむ/いきもの」という訳文に、水から上がってきたばかりの変な生き物が、桟橋の上で3人の子どもをじっとにらんでいる絵。「E」は「Endlessly(とめどなく)」で、長い長いマフラーのはなし、などなど。それぞれは独立した場面だが、全体をタイトルに結びつく1つの筋に想像力でつなげようとして、はてつながるかどうか。ゴーリーの手品に挑むもよし、あるいはお好みの場面だけ、心の箱にしまっておくのもよい。

訳文は、2から3行の縦書き平仮名。原文には必ずある主語が訳文にはなく、おまけに文頭の文字が黒丸に白抜きと目立つので、名調子のいろはカルタのよう。どのページにも、予感としての不吉は漂っているものの、ゲーム感覚で、楽しめる。
(中村えつこ)

https://www.amazon.co.jp/dp/4309265030

こちらも『ギャシュリークラムのちびっ子たちーまたは遠出のあとで』同様ゴーリーお得意のABC bookの形式をとっています。
特徴的なのは副詞に焦点が当てられているところ。あまり(というか一度も)見たことのないような英語の副詞がたくさん出てきます。
仕掛けが楽しい一冊です。 

蟲の神

蟲の神の生け贄に 捧げられてしまった少女のゆくえを描く、ゴーリー初期の大傑作がついに邦訳!

https://www.amazon.co.jp/dp/4309275036

黒い影をまとった蟲がものすごく不気味なんだけれども美しい。

生け贄に捧げられたと知らず、我が子の身を案じる家族の姿が上述の三冊とは違って感情をいくぶんにあらわしています。

結末は変わらず不条理ではありますが。

キャッテゴーリー

とぼけた味わいがなんとも愛らしい、ゴーリーならではの不思議な猫たちが、1から50まで、様々な数字書体(漢字もあるのだ!)とともに登場する、奇妙な絵本!

https://www.amazon.co.jp/dp/4309266878?

子どもはばんばん殺すし、不条理な暴力が多いゴーリー作品ですが、猫にだけは本当に甘いです。偏愛しすぎ。笑

ウエスト・ウイング 

どこの西棟(ウエスト・ウイング)なのか? いったい何が描かれているのか? すべてが見るものの想像力にゆだねられてしまう、途方もなく怖い、文字のない絵本。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309265898

『キャッテゴーリー』も文字は(ほぼ)ないが、このような恐ろしさは全く無い本でした。

こちらは想像力のみが頼りになっています。

子どもが見るとどうなんだろうなぁ。

蒼い時 

人生のすべてがメタファーとして解釈できるわけじゃないぜ。それはいろんな物が途中で脱落するからさ。旅嫌いのゴーリーが、唯一遠出したというスコットランド旅行での思い出を二匹の犬に託して語る、摩訶不思議な物語。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309265022

『蟲の神』のあとがきにこんな言葉があります。

「人がどうしていつもエベレスト山に登りたがるのか、私にはさっぱり理解できない。ベッドを出るだけでも十分危険だとわかっているのに」、とエドワード・ゴーリーはあるとき語った。 

(あとがきより)

旅が嫌いどころの騒ぎじゃないですよね。ビビリですよ、ビビリ。そこからエドワード・ゴーリーの本質が浮かび上がってくるような気がします。良い子にしていても、気をつけていても、安心だと思っていても、いつも側には危険がある、不条理な暴力がある。

本書は暴力的な本ではありませんが、意味不明な哲学的会話の中にエドワード・ゴーリーの心の中がすこし覗けるような気がする一冊です。

題のない本

 固定カメラでとらえた画面の中で繰り広げられる激しくシュールな世界。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309267831

激しくシュール、そのとおり。

ゴーリー好きにおすすめなので、最初の一冊にはしないでください。笑

まったき動物園 

ようこそゴーリーの世界の動物園へ! A~Zまで26の不思議な動物たちが登場するゴーリー版「幻獣辞典」。原著英文コメントと、ユーモラスな短歌形式の和訳を併記。

https://www.amazon.co.jp/dp/4309267173

こちらもゴーリー好きになったら読んで欲しい一冊。

ただし、眺めているだけでも楽しいです。鑑賞用としてもどうぞ。

ジャンブリーズ

詩人リアの傑作5行詩(リメリック)に、奇才ゴーリーが絵を描いた! ジャンブリーズが住む海の向こうへ……。ふたりのエドワードによる、ナンセンスにあふれたごきげんな絵本!
 ジャンブリーズ :エドワード・リア,エドワード・ゴーリー,柴田 元幸|河出書房新社

エドワード・リアという詩人というのにゴーリーが興味を持ったというのは、きっと同じ名前だったから、とかそんな理由だったと思うんですよね。。。笑 それでもこんな素敵な絵本が出来あがるんだから、ご縁とか、運命とかって大切にしなきゃいけませんね。
第二弾も合わせてどうぞ↓↓

輝ける鼻のどんぐ

どんぐの哀切なる叫びを美しくもナンセンスに語る傑作。ふたりのエドワードによるごきげんな絵本、第二弾。
リア,エドワード 1812年、ロンドン郊外のホロウェイ生まれ。イギリスの画家、ナンセンス詩人。リメリック詩(5行脚韻詩)に滑稽な挿絵をつけた作品を発表し、ルイス・キャロルなどに影響を与えた。1888年1月29日、サンレモで死去  
https://www.amazon.co.jp/dp/4309269877

第一弾”ジャンブリーズ”について、上ではあまり語っていないですが、エドワード・リアはナンセンス詩人です。ただ、第一弾のジャンブリーズはどちらかと言うと、童話のような、陰と陽で分けるとするならば、陽、そして本作”輝ける鼻のどんぐ”は陰に当たります(そんな単純なものではないのですが)。
そして、もちろん我らがゴーリーさんが得意とするのは陰の方。今作では陰が輝きを放ちます。
”ジャンブリーズ”の登場人物が出てくるので、必ずセットで楽しみたいところ!

おわりに

いかがでしたでしょうか。
『絵本』という枠組みを効果的に使って読者を出し抜く。計算され尽くした大人の絵本はプレゼントにもおすすめです。お試しあれ。 

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