はじめに:この作家が好きなら、あの作家はどう?
良い本に出会うのは難しい。
星の数ほど本はあるし、しかも今まさに増え続けている。生きているうちに読むことのできる量は有限なのだから、できるだけ『当たり』を引きたいものだ。
各種ランキングを参考にするのも手だが、できるだけ『当たり』な本と出会うためにおすすめの方法がある。それは、好きな作家、思い入れのある作品が共通の人から、その作家・作品に連想する他のおすすめ作を教えてもらうということだ。
私はこれまでその方法でいくつもの本に出会い、それらの本から新たなる本に更に派生していって、自分の読書世界を広げることができた。
この記事では日本人有名作家の25作品から、世界で活躍する海外作家25名(作)を数珠つなぎ的におすすめしていく。
音楽で例えれば、ミスチルが好きな人にOasisを薦める、みたいなことを小説で行おうと思うのだ。要するに、これが好きならあれもどう?という感じで勝手におすすめしていく。
逆に、おすすめがあったら教えてほしい。私の趣味はおそらく純文学系に、青春文学系に偏りがちだと思うが、ファンタジー、SF、ハードボイルド、恋愛小説にノンフィクション小説、ミステリーや携帯小説にだって隠れたお宝があるはずだ。
私もまだまだ知らない本を読みたい。
目次
- はじめに:この作家が好きなら、あの作家はどう?
- 目次
- 1.川上未映子→シャーリィ・ジャクソン
- 2.川上未映子→マリー=ヘレン・ベルディーノ(岸本佐知子)
- 3.村上春樹→ドストエフスキー
- 4.村上春樹→オースター
- 5.田辺聖子→サガン
- 6.円城塔→ミルハウザー
- 7.安部公房→カフカ
- 8.安部公房→カズオ・イシグロ
- 9.よしもとばなな→ミランダ・ジュライ
- 10.堀江敏幸→ジョイス
- 11.星新一→グレッグ・イーガン
- 12.阿部和重→チャック・パラニューク
- 13.三浦しをん→ジョン・ウィリアムズ
- 14.森博嗣→ミシェル・ウェルベック
- 15.山内マリコ→スチュワート・ダイベック
- 16.宮部みゆき→ミヒャエル・エンデ
- 17.中島らも→ブコウスキー
- 18.宮沢賢治→モーム
- 19.吉田修一→ホーソーン
- 20.重松清→ライマン・フランク・ホーム
- 21.筒井康隆→チャンドラー
- 22.伊坂幸太郎→スティーブン・キング
- 23.森見登美彦→ジョン・アーヴィング
- 24.谷崎潤一郎→レベッカ・ブラウン
- 25.梶井基次郎→トルーマン・カポーティ
- おわりに
- あわせて読みたい
1.川上未映子→シャーリィ・ジャクソン
川上未映子は自意識の強い作家だ。自分の中のネガティブ要素-嫉妬、妬み、偏見-などを小説の中に発現させる天才だ。
『ヘヴン』ではその闇が、イジメという形になって現れてくる。初長編ということで、粗い部分もあるけれども、感情を揺さぶるうまさという意味では、最近の作家の中でも群を抜いていると思う。
そんな川上未映子が好きなあなたにオススメなのが、シャーリィ・ジャクソン『ずっとお城で暮らしてる』だ。
ファンタジーかと思わせるような美しい装丁、軽やかな歌声のような呪い、少し読み進めるだけで異様な迫力を持った作品だとわかってもらえると思う。
『少年少女のイジメ』、という共通点があるのはもちろんだが、人間の心の深い闇を覗けるという部分が、2つの作品に通じる醍醐味だ。
ヘヴン/川上未映子
第20回(2010年) 紫式部文学賞受賞
「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」 善悪の根源を問う、著者初の長編小説。
ずっとお城で暮らしてる/シャーリィ・ジャクスン
- 作者: シャーリィジャクスン,Shirley Jackson,市田泉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 文庫
- 購入: 8人 クリック: 73回
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あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。
2.川上未映子→マリー=ヘレン・ベルディーノ(岸本佐知子)
川上未映子からの数珠つなぎでもう一作オススメしたい。
私は岸本佐知子翻訳作品偏愛しているのだが、その中でも短編集『楽しい夜』は今年読んだ本の中でも上位に来るほど良い本だった。そして、川上未映子好きは絶対にハマる。
家族、愛、というテーマはありきたりな食材だれども、調理次第で、煮付けにもなるし唐揚げにもなるし、カルパッチョにまでなれる。そんな具材だと思う。
『乳と卵』は十分に日本文学に衝撃を与えた作品だ。ただし、『楽しい夜』の作品も負けてはいない。『乳と卵』とは違った衝撃的な設定の話が多く、刺激的で、かつ、胸をうつ物語が多く詰まっている。川上未映子が好きなら、読んで損はないだろう。
乳と卵/川上未映子
2008年の第138回芥川賞受賞作! 娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取りつかれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった傑作。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00NOCWRNE
楽しい夜/岸本佐知子編訳、マリー=ヘレン・ベルティーノなど
メキシコの空港での姉妹の再会を異様な迫力で描いた、没後十余年を経て再注目の作家による「火事」(ルシア・ベルリン)、一家に起きた不気味な出来事を描く「家族」(ブレット・ロット)。アリの巣を体内に持つ女という思い切り変な設定でありつつはかなげな余韻が美しい「アリの巣」(アリッサ・ナッティング)、30代女子会の話と思いきや、意外な展開が胸をつく表題作「楽しい夜」(ジェームズ・ソルター)。飛行機で大スターの隣に乗り合わせてもらった電話番号の紙切れ…チャーミングでせつない「ロイ・スパイヴィ」(ミランダ・ジュライ)など、選りすぐりの11編です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062199513
3.村上春樹→ドストエフスキー
ベタではあるが、村上春樹についても言及しておきたい。
『1Q84』が好きならば、ドストエフスキーは欠かせないだろう。なぜならば、村上春樹はドストエフスキーのような小説を書くことを長年目指して、作風を広げてきたからだ。
『僕』だけの物語から始まって、作品を積み重ねるごとにマジックリアリズムで技巧を尽くし、リアリズム小説で大ヒットを叩き、短編でテクニックを磨いて、とうとう総合小説を書こうと試みたのが『1Q84』だ。他者の視点を入れることで、より大きな世界を描こうとしているのだ。
ドストエフスキーの代表作はたくさんあるが、やはり『カラマーゾフの兄弟』をオススメしたい。小説の全てが詰まっていると言ってもいい傑作だ。
1Q84/村上春樹
1Q84年―私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう。青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。…ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー
父親フョードル・カラマーゾフは、圧倒的に粗野で精力的、好色きわまりない男だ。ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人兄弟が家に戻り、その父親とともに妖艶な美人をめぐって繰り広げる葛藤。アリョーシャは、慈愛あふれるゾシマ長老に救いを求めるが…。
4.村上春樹→オースター
村上春樹についても、もう一人オススメさせて欲しい。それはポール・オースターだ。
村上春樹がなぜ売れたのか、という分析の一つに、彼の小説は『大人あるある』だからだ、というものがある。
私はこれに同意するわけではないけれども、村上春樹の小説を読んでいると、まるで自分のことを描かれているかのような気になったことがある人は多いと思う。センチメンタルな気分や、退廃的な空気感を描かせるとものすごく読者に刺さる。
一方ポール・オースター『ムーン・パレス』は青春文学の中にそびえ立つ金字塔だ。オースターお得意のご都合主義にもとれる『コメディ』のような展開のはずなのに、深々と心に刺さるストーリーは絶品で、こちらも時間がたっても心のどこかに刺さったまま、忘れられない小説になると思う。
ねじまき鳥クロニクル/村上春樹
「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0049B3OV8
ムーン・パレス/ポール・オースター
- 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/09/30
- メディア: 文庫
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人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102451048
5.田辺聖子→サガン
妻夫木聡と池脇千鶴、上野樹里が出演した映画も良かった『ジョゼと虎と魚たち』、作中にもサガンの言葉が印象的に使われている。
引用元である『一年ののち』ももちろん良いが、やはり『悲しみよこんにちは』の完成度が素晴らしい。『ジョゼと虎と魚たち』も完璧な短編のうちの一つだと思うので、田辺聖子が好きならば、こちらを推したい。
ジョゼと虎と魚たち/田辺聖子
足が悪いジョゼは車椅子がないと動けない。ほとんど外出したことのない、市松人形のようなジョゼと、大学を出たばかりの共棲みの管理人、恒夫。どこかあやうくて、不思議にエロティックな男女の関係を描く表題作「ジョゼと虎と魚たち」。他に、仕事をもったオトナの女を主人公にさまざまな愛と別れを描いて、素敵に胸おどる短篇、八篇を収録した珠玉の作品集。
悲しみよこんにちは/フランソワーズ・サガン
- 作者: フランソワーズサガン,Francoise Sagan,河野万里子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/12/20
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セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ…。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。
6.円城塔→ミルハウザー
円城塔は読み手を選ぶ。
おもしろくない、と思う人が読むと、全くおもしろくない。例えば通勤時間の合間に読むような小説ではない、ひたすらに斜めから物事を見ている、そんな感じだ。
もし仮に円城塔が好きだというのならば、スティーブン・ミルハウザーは超おすすめできる。ミルハウザーもぶっとんだ設定を読者に強引に押し付けて物語を引っ張っていくが、読みやすさはピカイチ。更に、柴田元幸の安心翻訳があるので心強い。
オブ・ザ・ベースボール/円城塔
「道化師の蝶」で第146回芥川賞を受賞した円城塔氏のデビュー作が登場。ほぼ一年に一度、控えめに見ても百人を下ることのない人間が空から降ってくる町、ファウルズ。単調で退屈な、この小さな町に流れ着き、ユニフォームとバットを身につけ、落ちて来る人を「打ち返す」レスキューチームの一員になった男の物語。奇想天外にして自由自在な文学空間。表題作は文學界新人賞受賞。
ナイフ投げ師/スティーブン・ミルハウザー
飛翔する想像力と精緻な文章で紡ぎだす、魔法のような十二の短篇集。語りの凄み、ここに極まる。
https://www.amazon.co.jp/dp/4560071799
7.安部公房→カフカ
もっと長く生きていたらノーベル文学賞を取ったであろう安部公房。
その彼に多大な影響を与えたと言われるのがフランツ・カフカ。不条理な世界観が大好きな人は是非読んで欲しい。超ベタではあるが、外せない数珠つなぎ。
砂の女/阿部公房
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
ttps://www.amazon.co.jpdp/410112115X
城/フランツ・カフカ
- 作者: フランツ・カフカ,Franz Kafka,前田敬作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/04
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測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な“城"は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない……。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102071024
8.安部公房→カズオ・イシグロ
安部公房の不条理作品に通じる作品をもう一作紹介したい。
それはカズオ・イシグロ。カズオ・イシグロと言えば『信頼できない語り手』の手法が有名な、類稀なるストーリーテラーだ。安部公房もそれらの要素を持ちあわせてはいるが、属性的には離れているように思える。しかし、カズオ・イシグロにも不条理な世界観を描いた傑作があるのだ。
それは『充たされざるもの』だ。カズオイシグロファンからはあまり人気がないのだが、安部公房が好きならば確実に楽しめる。オススメ。
人間そっくり/安部公房
《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人――彼はいったい何者か? 異色のSF長編小説。
https://www.amazon.co.jp/dp/4101121125
充たされざるもの/カズオ・イシグロ
世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り……。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の異色作。
https://www.amazon.co.jp/dp/B009DEMBKG
9.よしもとばなな→ミランダ・ジュライ
よしもとばななに、孤独とか、切なさとかを描かせるとものすごいものが生まれる。多くの作品で、神秘的なものが登場して、作品を彩る。女性にすごく刺さる作家だ。
そんな感受性の豊かな読者に捧げたいのがミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』だ。ものすごく良い。『ひとりぼっち』だと感じる瞬間を持った人に届けたいおすすめ本。
鳥たち/よしもとばなな
家族を失い、天涯孤独で身を寄せ合う「まこ」と「嵯峨」。お互いしか癒せない淋しさを抱えた、ふたりの恋のかたちとは―。静かな祈りに包まれる、待望の長編小説。
いちばんここに似合う人/ミランダ・ジュライ
- 作者: ミランダ・ジュライ,岸本佐知子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/08/31
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孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取った16の物語。カンヌ新人賞受賞の女性映画監督による初短篇集。フランク・オコナー賞受賞。
10.堀江敏幸→ジョイス
日本のどこかにある、沈みゆく『雪沼』の人びとを描いた短編集『雪沼とその周辺』で谷崎賞まで受賞した堀江敏幸。
人生と、『生きる場』、『生活の場』というのは深く結びついていて、雪沼の人びとの使う道具や、住む家など、すべての生活感に人生が詰まっていて、たまらなく愛おしくなる名作。
そんな堀江敏幸の短編集が好きならば、ジェイムス・ジョイスの『ダブリナーズ』は必読だ。こちらも連作短編小説で、ダブリンに住む人々を描いた作品集。数々の芸術家を産んだ退廃的な世界観が味わえる。
雪沼とその周辺/堀江敏幸
小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。
ダブリナーズ/ジェイムス・ジョイス
- 作者: ジェイムズジョイス,James Joyce,柳瀬尚紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03/02
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アイルランドの首都ダブリン、この地に生れた世界的作家ジョイスが、「半身不随もしくは中風」と呼んだ20世紀初頭の都市。その「魂」を、恋心と性欲の芽生える少年、酒びたりの父親、下宿屋のやり手女将など、そこに住まうダブリナーたちを通して描いた15編。最後の大作『フィネガンズ・ウェイク』の訳者が、そこからこの各編を逆照射して日本語にした画期的新訳。『ダブリン市民』改題。
11.星新一→グレッグ・イーガン
ここで大先生、星新一に登場いただこうと思う。
説明するまでもないが、ショートショートの神様、SF界の神様で、超多作なのにハイクオリティーを維持するという、手塚治虫みたいな人だ。
そんなSF界の神様が好きならば、確実にオススメしたいのがグレッグ・イーガンだ。
彼のSF短編の切れ味は半端ない。量子力学、宇宙論、哲学、ナノテクノロジー、脳科学、様々な最新技術や知識を取り入れながら彩りあふれる世界を描く、現代的未来SFが味わえる。
きまぐれロボット/星新一
お金持ちのエヌ氏は、博士が最も優秀と自慢するロボットを買入れた。オールマイティのロボットだが、時々あばれたり逃げたりする。ひどいロボットを買わされたと怒ったエヌ氏は博士に文句を言ったが……。ショート・ショートでは第一級の作者が綴る、大人と子供のための童話。表題作他35編を収録。
しあわせの理由/グレッグ・イーガン
12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、事故に遭遇して脳だけが助かった夫を復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、全九篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
12.阿部和重→チャック・パラニューク
インディヴィジュアル・プロジェクションの衝撃をあなたは覚えているだろうか。強烈な暴力にサイコな心理戦、それらを描く激しい文体。芸術がもたらす刺激が脳みそを伝って肉体にフィードバックされる喜びを感じたのは私だけではないはずだ。
チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』はそんな感覚を味わいたい読者に必読の一冊だ。肉体に感じる痛みこそが生きてるという感覚を思い出させてくれる。本の中でも外でもカルト的な人気を誇るファイト・クラブにあなたも参加してみないか。
インディヴィジュアル・プロジェクション/阿部和重
渋谷・公園通り。風俗最先端の街に通う映写技師オヌマには、5年間にわたるスパイ私塾訓練生の過去があった。一人暮しをつづけるオヌマは、暴力沙汰にかかわるうち、圧縮爆破加工を施されたプルトニウムをめぐるトラブルに巻き込まれていく。ヤクザや旧同志との苛烈な心理戦。映画フィルムに仕掛けられた暗号。騙しあいと錯乱。ハードな文体。現代文学の臨界点を超えた長編小説。
ファイト・クラブ/チャック・パラニューク
傷痕一つない体で死にたくない。殴り、殴られ、ぼくたちは生を実感する。
痛いほど繊細な語りがほとばしる伝説的作品が、改訳新版でついに復活!
デヴィッド・フィンチャー監督×ブラッド・ピット&エドワード・ノートン主演の映画化以後、創作の原点をパラニューク自らが明かした衝撃の著者あとがきと、アメリカ文学研究者・都甲幸治氏の解説を新規収録。
おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。事の始まりはぼくの慢性不眠症だ。ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたからだ。ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと驀進する――人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス
13.三浦しをん→ジョン・ウィリアムズ
日本人は職人が大好きだ。自分は職人になれなくても、なりたくなくても、職人のことは好きな人はたくさんいる。特にその『職』が、異様であればあるほど、報酬を伴わなければ伴わないほど、ひたむきな姿への尊敬度は上がる。『舟を編む』はある種そんな心理をついた物語だ。(もちろん本質はそこではないが)
そんな職人好きの読者におすすめなのがジョン・ウィリアムズの『ストーナー』だ。これはただひたすらに美しい小説だ。一人の男が大学に進み、教師になるだけの物語だ。しかしその物語には全ての感情が詰まっている。あなたは人生を体感することだろう。文学を愛する全てのものに読んで欲しい。
あとがきで語られる翻訳者の命がけの翻訳までもが、胸を打つ。
船を編む/三浦しをん
出版社の営業部員・馬締光也(まじめみつや)は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書「大渡海(だいとかい)」の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作! 馬締の恋文全文(?)収録!
ストーナー/ジョン・ウィリアムズ
半世紀前に刊行された小説が、いま、世界中に静かな熱狂を巻き起こしている。名翻訳家が命を賭して最期に訳した、“完璧に美しい小説”。
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14.森博嗣→ミシェル・ウェルベック
作家の知力に圧倒される、そんな経験はないだろうか。私は大学入学したての頃、森博嗣の小説でそれを体験した。トリックはもちろんだが、世界観全てに圧倒されたのだ。
それに近い体験がミシェル・ウェルベックの小説でも起こる。森博嗣の場合とは違って、未来を予言するような、世界のあり方そのものを教えてくれるような、そんな小説を彼は書くことができる。
世界が変わった(変わっていく)瞬間の事件が起こる前に書いたものとは思えない作品を出し続けているので、これからも注目の作家だ。
すべてがFになる/森博嗣
すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&M
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孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。
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素粒子/ミシェル・ウェルベック
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人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な“愛”を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル―捨てられた異父兄弟の二つの人生をたどり、希薄で怠惰な現代世界の一面を透明なタッチで描き上げる。充溢する官能、悲哀と絶望の果てのペーソスが胸を刺す近年最大の話題作。
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15.山内マリコ→スチュワート・ダイベック
山内マリコは描写の天才だ。
私もあなたも知っているあの国道沿いを読者の脳内に映し出す。それはきっと私たちがしるあの街ではないけれど、みんなが知ってる街なのだ。登場人物はダサいヤツばかりなのに、物語はものすごくクール。
スチュワート・ダイベックの『シカゴ育ち』もひとつの街を描いた作品だ。シカゴなんて行ったことがない人も、なぜか懐かしくなるような、そんな魅力的な作品。
ここは退屈迎えに来て/山内マリコ
そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる——。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生……ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。
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シカゴ育ち/スチュワート・ダイベック
七つの短篇と七つの掌篇が織りなす美しく力強い小説世界。シカゴに生まれ育ったダイベックは、ユーモアと愛惜をこめてこの古い湖岸の街の人間模様を描き出す。
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16.宮部みゆき→ミヒャエル・エンデ
日本が誇るストーリーテラーの宮部みゆき。ファンタジーまで書けて、しかもどの作品も読者を離さない。どんな頭してるんだろうって不思議になる。
『はてしない物語』は、『モモ』でも有名なミヒャエル・エンデの超名作。
こちらも単なる物語ではなく、どこまで本に入り込ませるのか、という表現方法がすごい。読者も本の中に吸い込まれてしまうのだ。
ブレイブ・ストーリー/宮部みゆき
僕は運命を変えてみせる——。勇気と感動の冒険ファンタジー、ついに文庫化
東京下町の団地に住む小学5年の亘は、テレビゲームが好きな普通の男の子。そのワタルの身に降りかかった思いがけない家族の不和。この運命を変えることはできるのか? 和冒険ファンタジーの金字塔、ついに文庫化!
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はてしない物語/ミヒャエル・エンデ
- 作者: ミヒャエル・エンデ,上田真而子,佐藤真理子,Michael Ende
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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バスチアンはあかがね色の本を読んでいた――ファンタージエン国は正体不明の〈虚無〉におかされ滅亡寸前。その国を救うには、人間界から子どもを連れてくるほかない。その子はあかがね色の本を読んでいる10歳の少年――ぼくのことだ! 叫んだとたんバスチアンは本の中にすいこまれ、この国の滅亡と再生を体験する。
https://www.amazon.co.jp/dp/4001109816
17.中島らも→ブコウスキー
中島らもとブコウスキー、私は何故か二人を結びつけてしまう。どこかに狂った、欲求に任せた作家、というレッテル貼りをしている自分がいるのかもしれない。
ドラッグをするとこんな気分になるのだろうか(妄想)というような幻視感が気持ちいい。逆にこういうのは酔っ払って読まない方がいい。正座するぐらいの気持ちで。
頭の中がカユいんだ/中島らも
何かワケありの僕は、ある日、突然、妻と子を残して家出する。勤める小さな広告代理店に、寝泊まりするようになった僕。TV局員をはじめ、いろんなギョーカイ人たちと、夜に、昼に、昭和最後のヒートアップする大阪を徘徊する日々。次々とトンデモナイ事件が起こる中、現実と妄想の狭間で僕は……。中島らも自身が「ノン・ノンフィクション」と銘うった記念碑的処女作品集。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01ER7029A
勝手に生きろ!/チャールズ・ブコウスキ ー
- 作者: チャールズブコウスキー,Charles Bukowski,都甲幸治
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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一九四〇年代アメリカ。チナスキーは様々な職を転転としながら全米を放浪する。いつも初めはまじめに働こうとするが、過酷な労働と、嘘で塗り固められた社会に嫌気がさし、クビになったり自ら辞めたりの繰り返し。そんなつらい日常の中で唯一の救いは「書くこと」だった。投稿しては送り返される原稿を彼は毎日毎日書きつづける。嘘と戦うための二つの武器、ユーモアと酒で日々を乗り切りながら。ブコウスキー二〇代を綴った傑作。映画『酔いどれ詩人になるまえに』原作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4309462928
18.宮沢賢治→モーム
宮沢賢治の短編は色気がある。死の色気だ。『注文の多い料理店』は小学校の教科書にあったけれど、子どもながらに異様な色気にクラクラしたのを覚えている。あれこそが死の恐怖、死の色気だ。
モームの小説にも色気がある。ナニかを暗示させる色気がそこかしこに漂っている。小説好きにとって短編『雨』は必読だろう。
注文の多い料理店/宮沢賢治
これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません――生前唯一の童話集『注文の多い料理店』全編と、「雪渡り」「茨海小学校」「なめとこ山の熊」など、地方色の豊かな童話19編を収録。賢治が愛してやまなかった“ドリームランドとしての日本岩手県”の、闊達で果敢な住人たちとまとめて出会える一巻。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0099FMM0S
雨・赤毛/サマセット・モーム
- 作者: サマセット・モーム,William Somerset Maugham,中野好夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1959/09/29
- メディア: 文庫
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狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」のほか、浪漫的なムードとシニックな結末で読者を魅了する恋愛小説「赤毛」など、南海を舞台にした短篇3編を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/410213008X
19.吉田修一→ホーソーン
『パーク・ライフ』はなんてことない小説だ。何も起こりやしないからだ。ただし、『何かが起こりそうな予感』だけは漂っている。
そんな世界観を19世紀、いち早く確立していたのがホーソーン『ウェイクフィールド』。舞台設定が違い過ぎますが、時代を超えた共通点が見つかるはず。
パーク・ライフ/吉田修一
昼間の公園のベンチにひとりで座っていると、あなたは何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。『東京湾景』の吉田修一が、日比谷公園を舞台に男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。役者をめざす妻と上京し働き始めた僕が、職場で出会った奇妙な魅力をもつ男を描く「flowers」も収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B009DED484
ウェイクフィールド/ナサエル・ホーソ-ン
「およそ文学における最高傑作の一つと言っても過言ではない」とボルヘスに激賞され、オースターが『幽霊たち』を書く際に依拠したとされるホーソーン著『ウェイクフィールド』。ストーリーも時代設定も同じながら、新たな光をあてラテンアメリカ、欧米諸国で絶賛されたベルティ著『ウェイクフィールドの妻』。不可解な心理と存在の不確かさに迫る文豪と鬼才のマスターピース二篇。
https://www.amazon.co.jp/dp/410544901X
20.重松清→ライマン・フランク・ホーム
重松清は感情表現がすごい。『ロング・ロング・アゴー』では、忘れてしまっていたあの感覚に再会できる。
『オズの魔法使い』もそんな『再会スイッチ』を持った作品だ。
児童文学で誰しも読んだことがあるので、当時の感情が蘇るのは当然だが、それに加えて、未だに克服できていない、子供の頃から変わっていない弱点のようなものが、自分の心の中から浮き出てくるのがわかるはずです。
ロング・ロング・アゴー/重松清
最後まで誇り高かったクラスの女王さま。親戚中の嫌われ者のおじさん。不運つづきでも笑顔だった幼なじみ。おとなになって思いだす初恋の相手。そして、子どもの頃のイタい自分。あの頃から時は流れ、私たちはこんなにも遠く離れてしまった。でも、信じている。いつかまた、もう一度会えるよね──。「こんなはずじゃなかった人生」に訪れた、小さな奇跡を描く六つの物語。『再会』改題。
https://www.amazon.co.jp/dp/B015IPTE12
オズの魔法使い/ライマン・フランク・ボーム
カンザスの大平原のまんなかから大竜巻で家ごと見知らぬ土地に飛ばされたドロシー。ヘンリーおじさんとエムおばさんが待つ故郷へ戻りたい一心で、どんな願いも叶えてくれるという偉大なる魔法使いオズに逢いにエメラルドの街を目指す。頭にわらの入ったかかし、心臓がないブリキの木こり、勇気がほしいライオン。仲間とともに困難を乗り越える一行の願いは叶えられるのか? 柴田元幸の新訳による不朽の冒険ファンタジー!
https://www.amazon.co.jp/dp/B00CBPPC96
21.筒井康隆→チャンドラー
筒井康隆の技巧はすごい。どんな文体だってお手のもの。読者だってからかうし、文壇だってクサしてやる。生き方がハードボイルドだ。
『わたしのグランパ』は、そんなハードボイルドさは影を潜め、読みやすさを徹底的に追求したジュブナイル小説だ。ただし、根底にはハードボイルドな血が流れている。
チャンドラー『ロング・グッドバイ』は掛け値無しに素晴らしいハードボイルド小説の最高峰だ。自らの規範に則って行動する私立探偵フィリップ・マーロウがかっこ良すぎる。ギムレットにはまだ早すぎる。友情が激熱。
『わたしのグランパ』とは文体が全然違うが、筒井の行き方や姿勢が好きな方は読んでみて欲しい。必ず損はしない。
わたしのグランパ/筒井康隆
中学生の珠子は、両親と祖母の4人暮らし。だが、周囲の話を聞くと、どうも祖父がいるらしい。ある日、珠子の前に、突然現れたグランパ(祖父)はなんと刑務所帰りだった。出所を聞いて、祖母はわれ先にと逃げ出したが、一緒に暮らしてみると、侠気(おとこぎ)あふれるグランパは、町の人からは慕われ、珠子や家族をめぐる問題を次々と解決してくれる。そしてグランパの秘密を知った珠子に大事件が襲いかかる。「時をかける少女」以来、待望のジュブナイル。読売文学賞受賞作。
ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー
- 作者: レイモンド・チャンドラー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/03/08
- メディア: 単行本
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私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた…大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞受賞作。
https://www.amazon.co.jp/dp/4152088001
22.伊坂幸太郎→スティーブン・キング
伊坂幸太郎『砂漠』の青春感を覚えているか。事件の隙間にある、何をするわけでもない時間を覚えているか。あなた自身にもあった時間だ。
それよりもっと昔に遡ってみよう。まちの知らない部分を冒険をしていた頃のこと、山や川の中を無駄に探検をしていた頃のこと。もう会わない友達のこと。スタンド・バイ・ミーはもう会わない友達との昔話だ。
過去を振り返るたび、人は幸福になっていくという。ただし、現代に戻ってこなくてはいけない。本ならば、それができる。
砂漠/伊坂幸太郎
入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン・・・。学生生活を謳歌する五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で、超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく・・・。進化し続ける人気作家が生み出した、青春小説の新たなスタンダード!!
https://www.amazon.co.jp/dp/B009RCKMI2
スタンド・バイ・ミー/スティーブン・キング
- 作者: スティーヴン・キング,Stephen King,山田順子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1987/03/25
- メディア: 文庫
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森の奥に子供の死体がある──噂を聞いた4人は死体探しの旅に出た。もう子供ではない、でもまだ大人にも成りきれない少年たちの冒険が終ったとき、彼らの無邪気な時代も終ったのだった……。誰もが経験する少年期特有の純粋な友情と涙を描く表題作は、作家になった仲間の一人が書くという形をとった著者の半自伝的作品である。他に英国奇譚クラブの雰囲気をよく写した1編を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102193057
23.森見登美彦→ジョン・アーヴィング
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』は、ポップなおとぎ話だ。マンガのような親しみやすさと読みやすさ、中間地点、及びゴールにはカタルシスが待っている。さくっと読めて前向きになれる、人生を肯定できる小説だ。
そんな小説が好きなあなたは『ホテル・ニューハンプシャー』を読むべきだ。
あなたはこれを読むと苦しくなる。
あなたはこれを読むと悲しくなる。
あなたはこれを読むと、前向きになれる。
夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作!
https://www.amazon.co.jp/dp/B0093GEBJS
ホテル・ニューハンプシャー/ジョン・アーヴィング
家族で経営するホテルという夢に憑かれた男と五人の家族をめぐる、美しくも悲しい愛のおとぎ話――現代アメリカ文学の金字塔。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102273034
24.谷崎潤一郎→レベッカ・ブラウン
谷崎『春琴抄』は日本文学のある種の部分では最高峰のものとも言えるのではないだろうか。それほど極みがかった、磨き上げられた素晴らしさがある。
ミランダ・ジュライ『私たちがやったこと』を読んだ時は、そんな谷崎が恋しくなったものだ。海外文学で日本文学の影を見つけると、心に光が射す。この上ない喜びだ。
彼女の小説はいわゆるハッピーエンドの愛ではなく、もっと本物の、もっと肉体の、もっと愛憎入り混じった、愛を描いている。不条理で、美しい。
春琴抄/谷崎潤一郎
盲目の地唄の名手・春琴は丁稚奉公の佐助と心を通わせていく。そんなある日、お琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。そのとき佐助は――。異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン
- 作者: レベッカブラウン,Rebecca Brown,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09/30
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互いが不可欠になるために、耳を聞こえなくした“私"と、目を見えなくした“あなた"。その愛の行方を描く表題作。二人きりで過ごすはずの、新婚旅行先のコテージに、夫の知人がどっと押し寄せ、困惑する“私"――「結婚の悦び」。ホームケア・ワーカーの日常を描き、ラムダ文学賞などを受賞、静かな感動を呼んだ『体の贈り物』の著者が鋭く描く、人間関係と愛の不条理さ。幻想的で美しい短編集。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102149325
25.梶井基次郎→トルーマン・カポーティ
感覚を、起こっていることを読者の脳にありありと浮かばせる短命の天才作家。言葉の魔術師とも言える幻想的かつ肉感のある文体で若くしてデビューした早熟の天才作家。
一見彼らに共通点はないように見えるが、二人とも、自らの体験から物語を作り出している。(カポーティはノンフィクションノベルを開拓したが、主戦場はフィクション)
『場』の描き方に本人の魂、本人の目が宿っている。そんな凄味を感じたい読者におすすめ。
檸檬/梶井基次郎
私は体調の悪いときに美しいものを見るという贅沢をしたくなる。香りや色に刺激され、丸善の書棚に檸檬一つを置き--。現実に傷つき病魔と闘いながら、繊細な感受性を表した代表作ほか、12編を収録。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
https://www.amazon.co.jp/dp/B00DHX5G6U
遠い声 遠い部屋/トルーマン・カポーティ
父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近づきつつある大人の世界を予感して怯えるひとりの少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事に捉えた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーティにより、新鮮な言語感覚と幻想に満ちた文体で構成されたこの小説は、発表当時から大きな波紋を呼び起した記念碑的作品である。
https://www.amazon.co.jp/dp/4102095020
おわりに
熟練の読書家にとっては少し物足りないラインナップだったかもしれないが、ひとまずはこんなところで。
私もどんどん新しい世界を開拓したいので、数珠つなぎ的におすすめがあれば、教えて欲しい。
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