はじめに
あなたは合コンにいるとします。
趣味の話になって、例えばお目当ての人とたまたま趣味が一緒だった場合。これは話が弾むチャンスですよね。例えばその趣味が『野球』だった場合、どんな風にも会話は持っていけますよね。(まぁ、「今度ハマスタ行こー」言うとけばいいんでしょ。)
しかし『読書』の場合は話が別。自己啓発書しか読まない読書家もいれば、ノンフィクション専門、SF専門、国内純文学専門、ややこしいことに、純文学でも死んだ作家のものしか読まない、なんて人もいるわけで。しかも読書家は縄張り意識が強い。自分の好きな分野をけなされた日には完全に殻に閉じこもるか、牙を向くかどちらかでしょうよ。
話題にしにくいんです。そりゃあ野球と読書両方趣味だったら、無難に『野球』って言いますよね。読書!って言う人もいるけど、初対面でいきなり盛り上がるとかは期待薄いなぁと。話が弾みにくい趣味の一つに認定していいんじゃないですかね、読書。何が言いたいかっていうと、読書の話って、リアル生活で話しづらいんです。だから、ブログで言わせてほしい。
ということで今日は、普段人には言えないけど、誰もが知っているメジャー作家のマイナー作品おすすめさせてください。
決して合コンで『趣味は読書』と言って失敗した鬱憤を晴らしたいわけではありません
『ライ麦畑でつかまえて』、『フラニーとゾーイー』 などの大ヒット作の著者、サリンジャー、『わたしを離さないで』、『日の名残り』、『忘れられた巨人』のカズオ・イシグロ、『デミアン』、『車輪の下』のヘルマン・ヘッセのマイナー作品を紹介します。
目次
サリンジャー:ハプワース16、一九四二
ライ麦~もある意味怖いけど、もっと気味悪い本です
ホンマ、気味悪い作品です。何がって、サリンジャーの純粋無垢にこじらせきった中年の心が、天才シーモア・グラース*(七歳)の口から延々と語られんねんで!!おー怖
『ライ麦畑でつかまえて』はまだ良いんです。サリンジャーの超絶技巧でそのこじらせきった心を全てごまかせきってるから。本作は、『ライ麦』でやったような、主人公が意味のないことを言っている、と、見せかけて、読者には主人公の言外の意味を伝える、的な構造にはなっていないんですよね。もうサリンンジャーの怨念が垂れ流されてる、そんな感じです。
信者(サリンンジャーの怨念までも愛せる方)向け作品
サリンジャーの作品、世に出ているのが少なすぎるんですよね。
『ライ麦~』も『フラニーとゾーイ』も『ナインストーリーズ』も『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』も読んだあと、特にフラニーとゾーイを何回も読み返して読み返して。それでもなおサリンジャーの本が読みたい!ってなりますやん?ってかサリンジャー信者はあるもの全部読みたいんです。
とはいえ、『ライ麦~』、『フラニーとゾーイ』あたりのポップさは皆無。読んだあと、世間への憎しみと大人の汚さが鼻について、麻痺するために一杯やらなくちゃならなくなったなら、もうあなたはグラースファミリーの一員。
カズオイシグロ:遠い山なみの光
踊る、ライト見つめて、忘れない
人がワクワクするのってどんな時でしょうか。セクシーなマッチョお兄さんの二の腕を見てその後を妄想したとき?エロエロお姉さんに見つめられて話しかけに向かう時?旅行の前日ふとんに入って目を閉じた時?新しいCDを借りて家に帰るまでの間?非日常なことに?それとも新しいことに?諸説あると思いますねん。
私は、謎、だと思うんです。
謎があれば人はワクワクする。カズオ・イシグロはそこを突いてきます。
信頼できない語り手
カズオ・イシグロといえば語り手に特徴があるので有名です。どんな特徴かって言うと、『信頼できない語り手』を使っているんです。
読者は物語に入っていくために語り手に導かれていくのは当然です。言わば語り手=作品世界の神、と言ってもいいでしょう。けれど、その信頼をあえて揺らがせ、物語そのものを揺さぶるのです。例えば宗教家のように。たとえばマジシャンのように。その世界の真実は、現実世界では真実ではありません。が私たちはそれに信頼を寄せるしかないのです。
なぜなら抜群のペテンを持って引き込むのですから。
日本への思いが強い
浮世の画家でも、
わたしたちが孤児だったころ、でも
日本人、日本の戦争というものが物語の中で重要な役割を果たします。
もうね、何でアンタそんな日本人の気持ちわかるん? 良いとこも悪いところも、突かれたくないところもほめて欲しいところも、何でわかるん? ってくらいわかってはります。5歳でイギリス移住したとは思えないくらい。日本文学の流れ汲んでないのに、日本的要素がめっちゃあって、ファンになっちゃいますよね。
ヘルマン・ヘッセ:シッダールタ
どんな本か?
ヒトが真理や宇宙を悟る様子(ニュータイプに覚醒する様子)が、悟るまでの過程を中心に描かれていている。これを読まずに瞑想なんてやってはいけない。
こんなあなたにオススメ
もう新しいことなんて仕事の役割が増えたとか家族ができたとか受動的なことばかりだろうなあ~死ぬまでの人生だいたいわかっちゃったわ~と思っているあなたたちにこそこの物語は捧げられています。
欲にまみれることもあるだろう、努力が報われないこともあるだろう、大切な人はどんどん去っていき、息絶えていき、いつの間にか敵の方が増えていき・・・。そんな誰にでもある普遍的な悩みを越えていく、いや、受け入れていく、そんなしなやかさをヘッセが見事に描いています。
ヘッセが到達した答え、それを自分に憑依させてじっくりと味わっていれば、きっとシッダールタ(ブッダ)のどこかにある何らかのスイッチを押してくれる。そして感覚が広がったのを感じてほしいです。
あれ!?矛盾?笑
”(悟りを)教えによって得られたのではありません(中略)悟りを開かれたときあなたの心に起ったことを、あなたはことばや教えによって何ぴとにも伝えたり言ったりすることはできないでしょう”
(本文より)
とまあこんなようなことを"ことば"で真剣に描こうとしているヘッセさん。
書いてますやん!!!
全員が読んでて突っ込んだと思いますが。まぁ本ですし仕方がない。
読み進めれば読み進めるほど、複雑難解なことは何も書かれてないはず、理解できていることばかりなはずんだけれども、そのほとんどを『悟れて』ないなーと再確認してしまうことでしょう。
おわりに
シッダールタはマイナーでもないかな?と思いつつ、ヘッセ好きの友達何人かに聞いてみると、『手塚治虫のブッダ?』、『あのギャグマンガ?』と意味不明なことを言われたのでマイナーとして扱いましたとさ。はぁ。すっきりした。
大量の情報をコンパクトに。キンドルがお勧め。