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ポールオースターは孤独を感じる時に読むべし!16作品について語る

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孤独を抱える全ての人に読んで欲しい小説家

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あなたは読書に何を求めますか?
癒し?感動?高揚感?新しい知見への出会い?それとも本なんてただの暇つぶし?


ポール・オースターの小説は、『悲しくて苦しい物語なのに、忘れられないほど大切なものを残してくれる』ものばかりです。


彼の小説では、様々なものが失われます。孤独で寂しい人間がたくさん出てきます。心身ともに痛めつけられる登場人物たちに感情移入して、こちらまで心底ゾッとします。ハッピーエンドでなく、悲しいだけの物語のように見えるものも多いです。ですが、読み終えた後には、何か大切なものを得ています。孤独だった人生に、少し光が指すような気がするのです。

ポール・オースターはアメリカ文学界でも有名ですが、海外でも文学賞を受賞するなど、世界中で人気の作家です。日本でも、東大教授で超売れっ子翻訳家(日本一有名ではないでしょうか)の柴田元幸が翻訳を手がけていることもあり、人気が高いです。ノーベル賞が期待される『ノルウェイの森』村上春樹も対談し、音楽的な魅力がある、という趣旨のコメントを残すなど、小説家からの評価も高いです。

ポール・オースター海外文学賞受賞歴

  • メディシス賞外国小説部門(1993年:フランス)
  • アストゥリアス皇太子賞(2006年:スペイン)
  • 芸術文化勲章(2007年:フランス)

など

 

ランキングポリシー

  • ポールオースター作品の(ほぼ)全てを読んだ私が独自にランキング
  • なるべくネタバレなしで紹介
  • できるだけ近い作品も合わせて紹介

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では早速ランキングどうぞ

 

 16位 写字室の旅

 彼はどこに行くのか。どこにいるのか――未来を巡る、新しいラビリンス・ノベル。奇妙な老人ミスター・ブランクが、奇妙な部屋にいる。

部屋にあるものには、表面に白いテープが貼ってあって、活字体でひとつだけ単語が書かれている。テーブルには、テーブルという言葉。ランプには、ランプ。老人は何者か、何をしているのか……。
写字室の旅 | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

はっきりいって難しい。ポールオースターはメタフィクション的に物語を構築するのが得意です。、物語の中の映画、物語の中の小説などが存在したりするのです。

この小説にはそんなメタ要素が多く含まれていて、過去のポールオースター作品を読んでいないと通じないものがたくさん出てきます。もちろん往年のファンにとっては相当おもしろいのですが、他人におすすめするか、と言われれば、先に他のものを勧めるので、16位です。 

 

 15位 最後の物たちの国で

人々が住む場所を失い、食物を求めて街をさまよう国、盗みや殺人がもはや犯罪ですらなくなった国、死以外にそこから逃れるすべのない国。アンナが行方不明の兄を捜して乗りこんだのは、そんな悪夢のような国だった。

最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑) | ポール・オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

ひとことで言うと、ディストピア小説です。ディストピアとはユートピアの対義語で、理想郷とは真逆の社会のことです。ジョージ・オーウェル『1984年』、カズオイシグオロ『わたしを離さないで』、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、安部公房『壁』を読んだことがある方は、その世界を想像してもらえればと思います。かなり凝っていて、ある種その時々の社会を風刺するような物語を描くのに使われます。

本作では女性が主人公という、ポールオースターでは珍しい取り組みで、主人公アンナはとてもチャーミングで、魅力的です。それだけに、ディストピアに存在する違和感があって感情を揺さぶります。

いきなり読むのは少しハードルが高いかもしれないので15位です。

 

 14位 ティンブクトゥ

ミスター・ボーンズは犬だ。だが彼は知っていた。主人のウィリーの命が長くないことを。彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?

ティンブクトゥ (新潮文庫) | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

汚れた世界を書かせると本当に素晴らしい働きをするポールオースター。私たち日本人のよく知らないアメリカの姿を『犬目線 』で知らせてくれます。

表紙の犬、かわいい。

 

 13位 オラクル・ナイト

重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンの街を歩き始め、不思議な文具店で魅入られたようにブルーのノートを買う。そこに書き始めた小説は……。美しく謎めいた妻グレース、中国人の文具店主Ⅿ・R・チャン、ガーゴイルの石像や物語内の物語『神託の夜(オラクル・ナイト)』。ニューヨークの闇の中で輝き、弦楽四重奏のように響き合う重層的な愛の物語。

オラクル・ナイト (新潮文庫) | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

オースターお得意の小説内小説『オラクル・ナイト』が登場します。物語内物語と、物語そのものが、密接につながって響き合います。

村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』では、2つのパートに分けて物語が進み、お互いが結びついている、という構成ですが、そのような話が好きな方は、絶対にはまると思います。

 

12位 リヴァイアサン 

 一人の男が道端で爆死した。製作中の爆弾が暴発し、死体は15mの範囲に散らばっていた。男が、米各地の自由の女神像を狙い続けた自由の怪人であることに、私は気付いた。FBIより先だった。実は彼とは随分以前にある朗読会で知り合い、一時はとても親密だった。

彼はいったい何に絶望し、なぜテロリストになったのか。彼が追い続けた怪物リヴァイアサンとは。謎が少しずつ明かされる。
リヴァイアサン (新潮文庫) | ポール オースター, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

たくさんの要素が入っています。探偵小説、ハードボイルドに恋愛小説、ミステリーに、サスペンス。 けれどセンチメンタルな、『どんな人だって壊れてしまう』、というオースターの世界観は軸として存在しています。

偶然の出来事たちで物語は進んでいきますが、それを偶然と信じさせる筆力は素晴らしい。

 

 11位 幻影の書

その男は死んでいたはずだった──。何十年も前、忽然と映画界から姿を消した監督にして俳優のへクター・マン。その妻からの手紙に「私」はとまどう。自身の妻子を飛行機事故で喪い、絶望の淵にあった「私」を救った無声映画こそが彼の作品だったのだから……。へクターは果たして生きているのか。そして、彼が消し去ろうとしている作品とは。

幻影の書 (新潮文庫) | ポール オースター, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

ポールオースターの描写力がいかんなく発揮された作品です。無声映画を描写しているのですが、このリアリティが桁違いです。無声映画なんてほとんど見たことがないのに、無声映画を本当に見ているようです。 

作中に出てくる『マーティン・フロストの内なる生』は、実際に製作されていて、いつか見てみたい映画のひとつ。

 

10位 ガラスの街 

「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開――。

ガラスの街 (新潮文庫) | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

 続いて9位をどうぞ

 9位 幽霊たち

私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何の変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー…。

幽霊たち (新潮文庫) | ポール・オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp 

  続いて8位をどうぞ

 8位 鍵のかかった部屋

 幼なじみのファンショーが、美しい妻と小説の原稿を残して失踪した。不思議な雰囲気をたたえたこの小説の出版に協力するうちに、「僕」は残された妻ソフィーを愛するようになる。だがある日、「僕」のもとにファンショーから一通の手紙が届く。

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) | ポール・オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

10位、9位、8位は『ニューヨーク三部作』と呼ばれる作品群です。

『ガラスの街』は多くの出版社に出版を断られたらしく、当時からすると斬新な物語になっています。 ミステリ小説の形を為しているのに、やたらと凝った文学調な会話(会話にすらなっていない?)や、展開の物語です。物語の主人公たちが誰も存在していないのでは、夢オチなのでは、と思わされるような、独特の味わいを持った傑作小説です。

『幽霊たち』は同じく読者の意表をつく小説です。何かが起こりそうなきがする、何かが起こるはず、ずっとそのような空気が保たれたまま、何も起きずに時間が進んでいきます。ブラックやブルー、ホワイトといった、記号的に付けられた名前も効果的に世界観を作り出している作品です。

『鍵のかかった部屋』は三部作の最後の作品です。彼の作家人生の中で、最も前衛的だった時期も、いったんこの三部作が区切りとなっているのではないでしょうか。三部作の最後は、物語のおもしろさが一番成熟しているように思います。

 

このニューヨーク三部作は衝撃的におもしろいと思います。

 

 7位 ブルックリン・フォリーズ

幸せは思いがけないところから転がり込んでくる──傷ついた犬のように、私は生まれた場所へと這い戻ってきた──一人で静かに人生を振り返ろうと思っていたネイサンは、ブルックリンならではの自由で気ままな人々と再会し、とんでもない冒険に巻き込まれてゆく。9・11直前までの日々。

ブルックリン・フォリーズ | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

 オースターの話の中では比較的希望の要素が強い話ではないでしょうか。喜劇と言っても良いのではないでしょうか。それでいて、深い余韻を残すラストは相変わらず、おお、いい仕事してますな、という感じ。

 

6位 偶然の音楽 

妻に去られたナッシュに、突然20万ドルの遺産が転がり込んだ。すべてを捨てて目的のない旅に出た彼は、まる一年赤いサーブを駆ってアメリカ全土を回り、“十三ヵ月目に入って三日目”に謎の若者ポッツィと出会った。“望みのないものにしか興味の持てない”ナッシュと、博打の天才の若者が辿る数奇な運命。

偶然の音楽 (新潮文庫) | ポール オースター, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

刺激的な作品です。『ジョジョの奇妙な冒険』を思わせる不穏な空気感に、カフカや安部公房ばりの、不条理な展開がページをめくる手を止めさせません。

とにかくオースター作品の中でもキャラクターが魅力的で、それだけでどんどん物語が進んでいきます。オースター作品に時を越えて横たわる『偶然』という単語がタイトルに入っているのも素敵ポイントです。

 5位 闇の中の男

 ある男が目を覚ますとそこは9・11が起きなかった21世紀のアメリカ。代わりにアメリカ本土に内戦が起きている。闇の中に現れる物語が伝える真実。祖父と孫娘の間で語られる家族の秘密――9・11を思いがけない角度から照らし、全米各紙でオースターのベスト・ブック、年間のベスト・ブックと絶賛された、感動的長編。
闇の中の男 | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

名前を聞くだけで情景が思い出せる小説というのがあると思います。私はこの小説がそうです。『闇の中の男』聞くだけで物語の中のアメリカ内戦の情景が浮かんできます。不思議なものですね。実際に『見た』わけではなく、『小説を読んで想像した』情景を思い出しているのですから。

物語自体は『家族』の物語で、ストーリーテラーの本領を発揮した感動巨編です。

 

4位 sunset park

『サンセットパーク』はまだ和訳翻訳されていませんが、オースターが好きすぎて英語版を読みました。文学的にこった表現などは少ないので、辞書さえあれば高校卒業程度の英語力があれば読めると思います。英語の勉強も兼ねてペーパーバック読んでみるのもオススメ。

英語独特のリズムで日本語とはまた違った余韻が味わえます。 

オースターの得意な表現に、『羅列』があります。たとえばニューヨーク三部作『幽霊たち』の冒頭はこのようになっています。

まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。

『幽霊たち』ポールオースター 冒頭

色の名前が重なっていって、独特のイメージが生まれていますよね。

本作でもどこか狂ったアメリカを描くのに、効果的に単語の羅列がなされています。

 

 3位 invisible

 こちらもまだ訳が出ていません。

往年のファンからはマンネリ作品、と言われている作品ですが、初見の方にとっては、展開はスリリング(いつもですが)、お得意の小説内小説はもちろんありますし、章ごとに視点が異なって、謎や仕掛けがたくさんあって、技量の限りを尽くしたような作品になっています。

村上春樹『1Q84』は総合小説が書きたくて書いた、と言われていますが、そのようなテンションの作品です。

これから読んでみよう、という方にはぴったりかもしれません。

 

2位 ミスター・ヴァーティゴ

「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」ペテン師なのか? 超人なのか? そう語る「師匠」に出会ったとき少年はまだ9歳だった。両親なし、教養なし、素行悪し。超然とした師匠の、一風変わった「家族」と暮らす奇妙な修行生活のなかで、少年がやがて手にしたものとは――。
ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫) | ポール オースター, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp 

 素っ頓狂な設定で、オースターには珍しいタイプのファンタジー小説です。だがしかし、とてつもない力を持った作品です。

私の場合、実在するはずのないとわかりきっている登場人物たちに、どんどんどんどん感情移入していってしまいました。物語自体も全然信じられるような話じゃないのに、『人間ドラマ』に涙が出てしまいました。

ストーリーテラーとは、まさに嘘を真実にしてしまうのだな、と。

物語の持つ力を感じられる作品です。

 

 1位 ムーン・パレス

 人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。
ムーン・パレス (新潮文庫) | ポール・オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp

 

 青春小説というジャンルに金字塔を打ち立てた作品です。

青春時代に良い思い出がある人も、悪い思い出がある人も、等しく絶望し、等しく喪失感に浸っていただけたらと思います。アメリカ文学のうち、必読の一冊。

 

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