はじめに:読書のよろこび、メリット
*2018.2 後進
信じられない、一冊の本にこれだけ感動するなんて。
じっとしているのが嫌いなはずなのに、ずっと布団で読んでしまう。
え、そんな結末あり!?
読書には人生の全てが詰まっていると言っても過言ではありません。いわば、作者の表現したい人生観や価値観が、文字を読むだけでダイレクトに体験できる、すさまじいアトラクションなのです。
例えば100冊しっかりと読みこめば、あなたの中に100冊分の人生体験が蓄積されるのです。
それはあなたにとって大きな武器となります。多様な価値観を知るということはそれだけ人間の幅を広げる、ということです。人間の幅が広がると、『嫌い』が少なくなります。多くのものを受け入れられるようになるのです。『嫌い』が少なくなると、チャンスが広がります。新しいものを拒むことがなくなるのです。
そう、まるで子どもの柔軟な脳を手に入れたかのように。
一方、読書からは純粋に教訓も学べます。してはいけないこと、しないほうが良いこと、すればよかったこと、やっておいてよかったこと。人生の疑似体験で、あなたはより賢くなります。こちらは、いわば防具です。
小説を読むメリットはこのような武器と防具を手に入れられることです。
ですが、それはあくまで副次的なもの。夜を徹して、会社を休んでのめり込むように読み耽ってしまうような、そんな悪魔の魅力を持ったもの、それが小説の本来の姿です。脳、想像力がもたらす絶頂に近い快楽を読書で手に入れましょう。
それでは小学生のころからずっと読書大好きな私が選んだおすすめ海外小説をランキング形式で紹介したいと思います。
ランキングポリシー
- 個人的にオススメしたいランキングベスト100
- なるべく同一作者は避けた
- なるべく難解なものは避けた
- 文学中心だがミステリ・ファンタジー・ホラー・SF・恋愛小説など何でもあり
- 小説家になろう作品、携帯小説、無料小説などは入っていません(海外文学編なので)
それでは目次に続いて早速ランキングどうぞ(目次内にランキングアリ)
目次
- はじめに:読書のよろこび、メリット
- ランキングポリシー
- 目次
- 100位 華氏451度/レイ・ブラッドベリ
- 99位 マクベス/シェイクスピア
- 98位 草の葉/ウォルト・ホイットマン
- 97位 鉄仮面/フォルチュネ・デュ・ボアゴベイ
- 96位 悲しみよこんにちは/フランソワーズサガン
- 95位 ホーニヒベルガー博士の秘密/ミルチャ・エリアーデ
- 94位 ひとさらい/ジュールシュペルヴィエル
- 93位 ハツカネズミと人間/ジョンスタインベック
- 92位 星の王子様/サン=テグジュベリ
- 91位 君がそこにいるように/トムレオポルド
- 90位 光あるうち光の中を歩め/トルストイ
- 89位 饗宴/プラトン
- 88位 インディアナ、インディアナ/レアード・ハント
- 87位 アンネの日記/アンネフランク
- 86位 バスカヴィル家の犬/コナン・ドイル
- 85位 桜の園/チェーホフ
- 84位 雨/サマセット・モーム
- 83位 夜がはじまる時/スティーヴン・キング
- 82位 密林の語り部/バルガス=リョサ
- 81位 ハックリベリー・フィンの冒険/マークトゥウェイン
- 80位 イリュージョン/リチャード・バック
- 79位 罪と罰/ドストエフスキー
- 78位 モモ/ミヒャエルエンデ
- 77位 仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン
- 76位 水滸伝/施耐庵
- 75位 少年少女/アナトール・フランス
- 74位 人生のちょっとした煩い/グレイス・ペイリー
- 73位 ベンジャミン・バトン/スコット・フィッツジェラルド
- 72位 若きウェルテルの悩み/ゲーテ
- 71位 プラットフォーム/ミシェルウェルベック
- 70位 ナイフ投げ師/スティーヴンミルハウザー
- 69位 車輪の下/ヘルマンヘッセ
- 68位 地底旅行/ジュール・ヴェルヌ
- 67位 十五少年漂流記/ジュール・ヴェルヌ
- 66位 もしもし/ニコルソンベイカー
- 65位 必要になったら電話をかけて/レイモンドカーヴァー
- 64位 夏への扉/ロバート・A・ハインライン
- 63位 草の竪琴/トルーマンカポーティ
- 62位 スローターハウス5/カートヴォネガットジュニア
- 61位 オリエント急行殺人事件/アガサクリスティ
- 60位 異邦人/カミュ
- 59位 族長の秋/ガルシア=マルケス
- 58位 地上最強の商人/オグ・マンディーノ
- 57位 アルケミスト/パウロコエーリョ
- 56位 オズの魔法使い/ライマン・フランクボーム
- 55位 ウェイクフィールド・ウェイクフィールドの妻/N.ホーソーン
- 54位 あしながおじさん/ウェブスター
- 53位 ミスター・ヴァーティゴ/ポール・オースター
- 52位 ハウルの動く城/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
- 51位 微笑を誘う愛の物語/ミランクンデラ
- 50位 ほとんど記憶のない女/リディアデイヴィス
- 49位 柔らかい月/イタロカルヴィーノ
- 48位 恐るべき子供たち/コクトー
- 47位 アムニジアスコープ/スティーヴエリクソン
- 46位 はつ恋/ツルゲーネフ
- 45位 ハリーポッター/J.K. ローリング
- 44位 サキ短編集/サキ
- 43位 忘れられた巨人/カズオイシグロ
- 42位 赤と黒/スタンダール
- 41位 審判/カフカ
- 40位 サーカスの息子/ジョンアーヴィング
- 39位 若い藝術家の肖像/ジェイムズジョイス
- 38位 イソップ寓話集/イソップ
- 37位 若かった日々/レベッカ・ブラウン
- 36位 アーサー王/ローズマリサトクリフ
- 35位 シカゴ育ち/スチュアート・ダイベック
- 34位 動物農場/ジョージ・オーウェル
- 33位 さよなら僕の夏/レイブラッドベリ
- 32位 ティファニーで朝食を/トルーマンカポーティ
- 31位 ホーカス・ポーカス/カートヴォネガット
- 30位 大聖堂/レイモンド・カーヴァー
- 29位 ライ麦畑でつかまえて/J.D.サリンジャー
- 28位 グリーン・マイル/スティーヴン・キング
- 27位 アッシャー家の崩壊/エドガー・アラン・ポー
- 26位 オイディプス王/ソポクレス
- 25位 蠅の王/ウィリアム・ゴールディング
- 24位 ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー
- 23位 存在の耐えられない軽さ/ミランクンデラ
- 22位 ホテル・ニューハンプシャー/ジョン・アーヴィング
- 21位 ダブリナーズ/ジェイムズジョイス
- 20位 ずっとお城で暮らしてる/シャーリィジャクスン
- 19位 シッダールタ/ヘルマンヘッセ
- 18位 私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン
- 17位 変身/フランツ・カフカ
- 16位 ゲド戦記/アーシュラ・K.ル=クヴィン
- 15位 空中スキップ/ジュディ・パドニッツ
- 14位 1984年/ジョージ・オーウェル
- 13位 妖女サイベルの呼び声/パトリシア A. マキリップ
- 12位 第三の嘘/アゴタ・クリストフ
- 11位 ふたりの証拠/アゴタ・クリストフ
- 10位 悪童日記/アゴタ・クリストフ
- 9位 グレート・ギャッツビー/フィツジェラルド
- 8位 カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー
- 7位 はてしない物語/ミヒャエル・エンデ
- 6位 幸せの理由/グレッグイーガン
- 5位 素粒子/ミシェルウェルベック
- 4位 いちばんここに似合う人/ミランダ・ジュライ
- 3位 ムーン・パレス/ポール・オースター
- 2位 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ
- 1位 フラニーとゾーイー/サリンジャー
- あわせて読みたい
100位 華氏451度/レイ・ブラッドベリ
舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会。そこでは本の所持が禁止されており、発見された場合はただちに「ファイアマン」と呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた。
密告が奨励され、市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。だがその結果、人々は思考力と記憶力を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた。
レイ・ブラッドベリは文明嫌いで有名でした。
懐古厨とも言える作風ですが、本、というものに触れ合わなくなった昨今、是非今一度読み返したい作品です。
”わずか数年前のできごとでさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民"
ギクリとさせられます。
99位 マクベス/シェイクスピア
勇猛果敢だが小心な一面もある将軍マクベスが妻と謀って主君を暗殺し王位に就くが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政を行い、貴族や王子らの復讐に倒れる。実在のスコットランド王マクベス(在位1040年–1057年)をモデルにしている。
嘘が嘘を生むような感覚で、将軍マクベスはどんどん良き心が悪しき心に蝕まれていきます。四大悲劇の中で最も短くて読みやすいです。
98位 草の葉/ウォルト・ホイットマン
アメリカ文学の歴史に画期をなす『草の葉』決定版の全訳.ホイットマン(一八一九‐九二)は脚韻や韻律といった詩の形式を無視して歌い,また既成の道徳にとらわれず在るがままの人間の生命を,肉体や性を臆することなく讃美し表現した.
読んでると覚醒できそうな気になります。『自分の道は、自分で歩くほかないのだ』。
犬式というアーティストの楽曲『「草の葉」第32節』も最高。Life Is Beatfull に収録。
97位 鉄仮面/フォルチュネ・デュ・ボアゴベイ
ヴァンダは初恋の人モーリスが捕えられたのを知り、彼を追ってパリに向かう。モーリスが送られたバスチーユには、謎の囚人がとらわれていて鉄仮面をかぶっていた。いったい、その囚人とはだれなのか。ヴァンダはモーリスとふたたび会うことができるのだろうか。愛と感動の物語。
Amazon.co.jp: 鉄仮面 痛快 世界の冒険文学 電子書籍: さとうまきこ, フォルチュネ・デュ・ボアゴベイ, 建石修志: 本
児童文学と侮るなかれ。小学生の時に初めて読書で号泣という体験を味わって以来、何度も読み返しています。心を動かすツボを本当によく押さえています。
96位 悲しみよこんにちは/フランソワーズサガン
18歳になるヒロインのセシルとやもめである父のレエモン、その愛人のエルザはコート・ダジュールの別荘で夏を過ごしていた。セシルは近くの別荘に滞在している大学生のシリルと恋仲になる。そんな彼らの別荘に亡き母の友人のアンヌがやってくる。アンヌは聡明で美しく、セシルもアンヌを慕う。
だが、アンヌと父が再婚する気配を見せ始めると、アンヌは母親然としてセシルに勉強のことやシリルのことについて厳しく接し始める。セシルは今までの父との気楽な生活が変わってしまったり、父をアンヌに取られるのではないかという懸念に駆られ、アンヌに対して反感を抱くようになる。やがて、葛藤の末にセシルは父とアンヌの再婚を阻止する計画を思いつき・・・
サガンは18歳のときにこれを書き上げたらしいです・・・
18歳の少女にこんな物語が書けるなんて衝撃です。才能のまぶしさにくらくらしながら、青春の残酷さを味わえるでしょう。
田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』もサガン出てきましたね。妻夫木聡、池脇千鶴主演、音楽くるりの同映画もかなり名作。
95位 ホーニヒベルガー博士の秘密/ミルチャ・エリアーデ
東洋文化を研究している〈私〉のもとに、ある日一人の使いがやってくる。
ヨーガの秘法に習熟したホーニヒベルガー博士の伝記を執筆中に亡くなった夫の代わりに、その仕事を完成してほしいというゼルレンディ夫人の申し出に興味をもった〈私〉は、遺された日記から驚くべき事実を発見する。
ホーニヒベルガー博士の秘密 (福武文庫) | ミルチャ エリアーデ, 直野 敦, 住谷 春也 | 本 | Amazon.co.jp
著者ミルチェ・エリアーデは、岡本太郎や平野啓一郎にも思想面で影響を与えたと言われています。日本の読者と親和性は高いです。
94位 ひとさらい/ジュールシュペルヴィエル
貧しい親に捨てられたり放置されたりしている子供たちをさらうことで自らの「家族」を築き、威厳ある父親となったビグア大佐。だが、とある少女を新たに迎 えて以来、彼の「親心」は、それとは別の感情とせめぎ合うようになり…。心優しい誘拐犯の悲哀がにじむ物語。
光文社の新訳シリーズ、割と好きです。挑戦的/前向きな試みをしているように思います。裏目に出るときもあるけれど、これは刺激的に仕上がっています。
93位 ハツカネズミと人間/ジョンスタインベック
南カリフォルニアの農場をわたり歩く二人の労働者を主人公に、夢を追いながらも過酷な現実に裏切られる下層の人々を描いた出世作。
オチを知ってるのに何度見ても泣いちゃう映画ありますよね。そういう本です。初見ですら、迫り来るよくない予兆を感じ取れることでしょう。けれど、最後まで読んでください。ずっしりとした感覚が残ります。
92位 星の王子様/サン=テグジュベリ
砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子さまだった……
『本当に大切なものは、目に見えないんだ』はじめて読んだときは心から信じられました。今はどうでしょう。
91位 君がそこにいるように/トムレオポルド
僕、ブロードウェイで役者稼業を営むサンディ・バヤード。キュートで演技力抜群なのになぜかさっぱり売れない。その上、前の恋人メアリが自殺したと聞いて大ショック……軽快にして真情あふれる語り口が『ライ麦畑でつかまえて』を思わせる、すっごくファニーでちょっぴりさびしいラブ・ストーリー
君がそこにいるように (白水Uブックス―海外小説の誘惑) | トム レオポルド, Tom Leopold, 岸本 佐知子 | 本 | Amazon.co.jp
岸本佐知子の翻訳が病的に好きだった時期に出会った一作です。紹介文にも『ライ麦』に言及されていますが、日常に疲れていて、センチメンタルな気分になりたい人にオススメです。
90位 光あるうち光の中を歩め/トルストイ
複数の人々が自分たちの人生を振り返ってどう思うかを話し合っていた。参加者の誰一人満足した人生を送っていないことが判明したが、ではキリスト教に倣った生活を送れるかというと、そうも行かず、実際には子供の教育は従来通りにやってしまうのだった。
話の舞台は古代のローマ帝国に移る。皇帝トラヤヌスの時代、イエス・キリストの弟子たちは世間から白眼視され肩身の狭い思いをしていた。
まず題名が良い。大きな光に包まれて眩しくて進めず、そうこうしている間に光が小さくなっていってしまう。そんな風景が浮かびます(風景というにはおかしいかもしれませんが)。
大切なものを忘れて瑣末なことにばかり時間をかけてしまうユリウスは、現代人にも共通した特徴を持っています。
89位 饗宴/プラトン
原題「シンポシオン」とは「一緒に飲む」というほどの意味.一堂に会した人々が酒盃を重ねつつ興にまかせて次々とエロス(愛)讃美の演説を試みる.談論風発,最後にソクラテスが立ってエロスは肉体の美から精神の美,更に美そのものへの渇望すなわちフィロソフィア(知恵の愛)にまで高まると説く.
エロスです。
88位 インディアナ、インディアナ/レアード・ハント
ひとりの男のこころと人生が一行一行から浮かび上がってくる。静かで哀しく無類に美しい小説。
私が敬愛する柴田元幸訳。柴田元幸が訳す、喪失感に溢れた小説は素晴らしい。ポールオースターもほれ込んだ才能を、ぜひ読んでください。
87位 アンネの日記/アンネフランク
1944年8月4日の午前10時から10時半頃、隠れ家に潜んでいた8人のユダヤ人は、何者かからの密告を受けて出動したアムステルダム駐留の保安警察(SD)の職員たちによって逮捕された。彼らを匿っていたヴィクトール・クーフレルとヨハンネス・クレイマンの2人も連行された。しかし女性だったミープ・ヒースとベップ・フォスキュイルは逮捕を免れた。
保安警察が去ると、ミープ・ヒースとベップ・フォスキュイルは床の上に散乱した文書をすぐに回収した。それらのテキストは、戦後アムステルダムに戻ったオットー・フランクに渡された。彼はこの文書を編集してまとめ、アンネやフランク一家をよく知る人のために私家版として配った。やがてこの文書の存在は広く社会に知られるようになり、周囲の声に推され、本格的な出版に踏み切ることになる。
こんなことが本当に起こった時代があったのか。同じ人間がこのようなことを許した時代があったのか。子どものころ始めて読んだ時、怒りよりも恐怖に震えました。著作権でなにやら騒がしいですし、読み時かと思います。
86位 バスカヴィル家の犬/コナン・ドイル
魔の犬の伝説がある富豪のバスカヴィル家で、当主のチャールズ・バスカヴィル卿が死体で発見される。表向きには心臓発作による病死と発表されたが、卿の死体のそばには巨大な犬の足跡があった。
名探偵コナンは四つの署名が好きだと言ってました。これも良いですよ。
85位 桜の園/チェーホフ
ロシアの劇作家アントン・チェーホフによる最晩年の戯曲。1903年に書かれ、1904年にモスクワ芸術座で初演された。
最後の劇作品で、『かもめ』、『ワーニャ伯父さん』、『三人姉妹』とともに「チェーホフ四大戯曲」と呼ばれる。
お金持ちの家族って、稼ぎ頭以外はどこか滑稽ですよね。かつて裕福だった地主の没落のお話です。広大な領地はすでに抵当に入り、まもなく競売にかけられる運命にある。笑えて美しい没落のお話です。
84位 雨/サマセット・モーム
狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」
男はロマンチストすぎるのでしょうか。
Coccoの『強く儚い者たち』の歌詞にも通じるものがある、欲望と自制心の問題。
83位 夜がはじまる時/スティーヴン・キング
悲しみに暮れる彼女のもとに突如かかってきた電話の主は……愛する者への思いを静かに綴る「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」、ある医師を訪れた患者が語る鬼気迫る怪異譚「N」、猫を殺せと依頼された殺し屋を襲う恐怖の物語「魔性の猫」ほか全6篇を収録
最期に収録されている『どんづまりの窮地』、これだけでも買う価値アリです。恐怖というものを真剣に突き詰めていって、この結果になったと思うと笑えるほどです。
82位 密林の語り部/バルガス=リョサ
都会を捨て,アマゾンの密林の中で未開部族の「語り部」として転生する一人のユダヤ人青年…….インディオの生活や信条,文明が侵すことのできない未開の人々の心の砦を描きながら,「物語る」という行為のもっとも始原的な形である語り部の姿を通して,われわれにとって「物語」とはどのような意味を持つのかを問う傑作.
正直これは少し難易度が高いかも、と思いつつ、オススメできるという自信があったので入れました。意味不明でも、読むのが楽しい。何が起こっているのかわからないけど、何故かゾクゾクする。そんな体験を保証します。
81位 ハックリベリー・フィンの冒険/マークトゥウェイン
『トム・ソーヤー』で知られているように、ハックはアルコール中毒の父親と暮らす、母親のいない怠惰な幼い放浪者である。
父親の元から脱出したハックは、妻や子供との生き別れを意味する川下への売却を恐れて逃亡した黒人奴隷のジムと出会い、二人は自由を求めて、オハイオ川の北を横断する事を試みる。本書はその二人の冒険を伝えている。
かのアーネスト・ヘミングウェイも言います。「あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。」
80位 イリュージョン/リチャード・バック
心優しき飛行機乗りと「救世主」を名乗る男の真の自由と愛を求める旅は、驚くべき奇跡が続々と…。『かもめのジョナサン』の著者バックのもうひとつの代表作! 不滅の青春ファンタジー!
イリュージョン/悩める救世主の不思議な体験| リチャード・バック/佐宗 鈴夫| 集英社文庫(海外)|BOOKNAVI|集英社
自由のイメージと空、鳥、飛行機。相性が良いです。
若者向け。
79位 罪と罰/ドストエフスキー
帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。学費滞納のため大学から除籍された貧乏青年ラスコーリニコフは、悪名高い高利貸しの老婆アリョーナから借りた金を、貧乏なため娘が娼婦になったと管を巻く酔っ払いのマルメラードフに与えた翌日、かねてからの計画どおり、アリョーナを斧で殺害し、金を奪う。
しかし、そこにアリョーナの義妹も入ってきたので、勢いでこれも殺してしまう。この日からラスコーリニコフは、罪の意識、幻覚、自白の衝動などに苦しむこととなる・・・
重厚なテーマと、圧倒的な読みやすさ。ドストエフスキー大先生の代表作のひとつです。ボリュームに圧倒されて読み出さないひとすら多いですが、一度読めばあっという間に読めちゃいます。
78位 モモ/ミヒャエルエンデ
イタリア・ローマを思わせるとある街に現れた「時間貯蓄銀行」と称する灰色の男たちによって人々から時間が盗まれてしまい、皆の心から余裕が消えてしまう。
しかし貧しくとも友人の話に耳を傾け、その人自身をとりもどさせてくれる不思議な力を持つ少女モモが、冒険のなかで奪われた時間を取り戻す。
児童向けですが、大人こそ読むべき。愚鈍になった感受性を研ぎ直すために。
『時計というのはね、人間ひとりひとりの胸のなかにあるものを、きわめて不完全ながらもまねて象ったものなのだ。光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ』
77位 仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン
大雪で閉鎖になった空港で、偶然出会った老人の問いかけに、動揺してしまった35歳の”私”。日々の仕事にゆきづまりを感じ、未来に期待感をもてない私 に、老人は一晩だけの講義を開始した。
人生とは、くだらないことが一つ、また一つと続いていくんじゃない。一つのくだらないことが〈何度も〉繰り返されていくんだよ。
ビジネス書としても読めます。
思想書としても読めます。
76位 水滸伝/施耐庵
武芸十八般の達人,妖術使いら百八人の愛すべき豪傑たちが,湖水の要塞「梁山泊」に拠って驚天動地の活劇を演じる武勇譚.人々に愛好され読み継がれた中国四大奇書中最大の傑作といわれる
長い月日が語り継いできた物語にはずれはないです。
75位 少年少女/アナトール・フランス
収められた十九編の短かい文章はすべて,あどけない子供たちの単純で無邪気な生活を描いたもの.これによって作者は,童心の世界を見失った世の大人たちには,さながら覗き眼鏡をみるように数々の懐しい思い出を思いおこさせ,また明日に生きようとする少年少女には優しい有益な忠告を与えてくれるのである.
読み始めは、「なんだこれ?」たわいもない日常が描写された物語集。
どう捉えるか。読み手が価値を決める、不思議な本です。
74位 人生のちょっとした煩い/グレイス・ペイリー
「ペイリーさんの小説は、とにかくひとつ残らず自分の手で訳してみたい」と村上氏が語る、アメリカ文学のカリスマにして伝説の女性作家の第一作品集。キッチン・テーブルでこつこつと書き継がれた、とてつもなくタフでシャープで、しかも温かく、滋味豊かな10篇。
翻訳者としての村上春樹は時にとてつもなく批判されます。(長編小説作家としての彼もそうですが)ですが、彼の文体が好きな人には確実にオススメできます。
『タフでシャープ』って春樹作品に出てきそうなフレーズ。彼が苦手な人はスルーすべし。
73位 ベンジャミン・バトン/スコット・フィッツジェラルド
80歳の状態で生まれ、年を取るごとに若返る人生を与えられた男の一生を描く。
ブラッド・ピット主演の映画で有名。原作はコミカルでエンタメ小説っぽく読めます。
しかし、どのような人でも、人生は下り坂という、悲哀に満ちたテーマに溢れていて、
フィツジェラルドの人生観が見えます。
72位 若きウェルテルの悩み/ゲーテ
青年ウェルテルが婚約者のいる身である女性シャルロッテに恋をし、叶わぬ思いに絶望して・・・
読むと暗くなるので取り扱いが注意です。でも調子いい時に読んでも駄目。少しだけさみしい時に。
71位 プラットフォーム/ミシェルウェルベック
「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」――圧倒的な虚無を抱えた「僕」は父の死をきっかけに参加したツアー旅行でヴァレリーに出会う。高度資本主義下の愛と絶望をスキャンダラスに描く名作
ここ数年で一番動向が気になると言っても過言ではない、ミシェル・ウェルベックの作品。小説を使ってあらゆる方向に攻撃をしかけている手法は、はっきり言って下品。
(2015年にはイスラム原理主義者から狙われ、警察の保護下に入ったことも)
取り扱うテーマ自体もいつも刺激的で、本作は『セックスツーリズム』。今後も楽しみな最注目作家の一作。
70位 ナイフ投げ師/スティーヴンミルハウザー
自動人形、空飛ぶ絨毯、百貨店、伝説の遊園地……ようこそ《ミルハウザーの世界》へ。飛翔する想像力と精緻な文章で紡ぎだす、魔法のような十二の短篇。語りの凄み、ここに極まる。
『頭の中を覗いてみたい』心からそう思える数少ない作家の一人。
圧倒的な妄想力(響きはよくないが)に、ページを捲る手が止まりません。
69位 車輪の下/ヘルマンヘッセ
ハンスという少年は、天才的な才能を持ち、エリート養成学校である神学校に2位の成績で合格する。町中の人々から将来を嘱望されるものの、神学校の仲間と触れ合ううちに、勉学一筋に生きてきた自らの生き方に疑問を感じる。そして、周囲の期待に応えるために、自らの欲望を押し殺し、その果てに、ハンスの細い心身は疲弊していく。勉強に対するやる気を失い、ついに神学校を退学する。
その後機械工となり出直そうとするが、挫折感と、昔ともに学んだ同級生への劣等感から自暴自棄となり、慣れない酒に酔って・・・
いつかの教科書で見た、『少年の日の思い出』が、衝撃過ぎて即ファンになったノーベル賞作家のヘルマンヘッセ。 感受性の尖い少年の心を天才的に描いていて、胸が痛くなります。
68位 地底旅行/ジュール・ヴェルヌ
ドイツの鉱物学者リーデンブロック教授は,16世紀の錬金術師が謎の文字を書き残した羊皮紙を発見,甥アクセルの協力を得て苦心のすえ解読した.
そこにはアイスランドの火山の噴火口から地球の中心に達することができると書かれていた.これが13週間に及ぶ地球内部への旅の始まりになった.
冒険心をくすぐる挿絵もたまらないんですよね。嘘か真か、というような知識が披露されていたりして、眠りこけた自らの少年の心を目覚めさせてくれます。
67位 十五少年漂流記/ジュール・ヴェルヌ
嵐の夜、少年達だけを乗せた船はニュージーランドの港から流されて無人島へと辿り着く。航海経験のある仏国人ブリアン、冷静な米国人ゴードン、優雅で誇り高い英国人ドニファンなど十五人の少年はいかに団結し、仲違いし、生き抜いていくのか?
漂流ものとしてはこれがよく出来てるな、と。子どもは力を合わせて頑張るべきです。(前フリです。20位~30位あたりで回収)
66位 もしもし/ニコルソンベイカー
全編これ2人の男女の電話の会話からなるおかしなおかしな「電話小説」。しかもこの電話は成人向けのいわゆる会員制セックス・テレフォン。2人は想像力の限りをつくして自分たちが何に一番興奮するかを語り合う。全米でベストセラーとなった本書のテーマはいわば、想像の世界の「究極のH」。
180ページ、テレフォンセックスの会話文のみ。(知的な)大人向け。
65位 必要になったら電話をかけて/レイモンドカーヴァー
世界を見つめる一対の確かな目、不思議な静けさと深い滋養。匂い、温もり、肌触り、息づかい。紛れもないカーヴァーの宇宙がここにある。
これまた題名が刺激的。取り扱うテーマは日常のことばかり。何気ないできごとを劇的に変えてしまう。カーヴァーのレンズで世界を見てみたいなと憧れます。短い間に何度も読み返して楽しめます。
64位 夏への扉/ロバート・A・ハインライン
ぼくが飼っている猫のピートは、冬になると"夏への扉"を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているからだ。そしてぼくもまた、ピートと同じように"夏への扉"を探していた。
最愛の恋人と親友に裏切られ、仕事を失い、生命から二番目に大切な発明さえも奪われてしまったぼくの心が、真冬の空のように凍てついてしまったからだ。失意の日々を送っているぼくにも、ピートが信じる"夏への扉"は見つかるのだろうか。 未来は、ぜったいに過去よりよいものになる―― それぞれの"夏への扉"を探して現代を生きる人々へ、ハインラインの希望に満ちあふれたメッセージ。
SFの基本、ストーリーの基本、登場人物の基本をしっかりと押さえてます。ロマンチックが止まらない、王道をゆく永遠の名作。『夏への扉』 タイトルセンス◎
63位 草の竪琴/トルーマンカポーティ
幼な児のような老嬢ドリーの家出をめぐる、ファンタスティックでユーモラスな事件の渦中で成長してゆく少年コリンの内面を描く。
トルーマン・カポーティ 大澤薫『草の竪琴』|新潮社
カポーティーの、純粋無垢な子どもの心が痛いほど伝わる作品です。私も懐古しがちで、酔うと、子供のままでいたかった、なんて、上司の前で平気で言っちゃうようなタイプです。
こういう人間には彼のナイーブさが時に痛いのです。
62位 スローターハウス5/カートヴォネガットジュニア
時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは、自分の生涯の未来と過去とを往来する、奇妙な時間旅行者になっていた。大富豪の娘と幸福な結婚生活を送り……異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され……やがては第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別爆撃を受けるピリー。時間の迷路の果てに彼が見たものは何か?
スローターハウス5 | 種類,ハヤカワ文庫SF | ハヤカワ・オンライン
『So it goes, (そういうものだ。)』多くの作品に通じる彼の無常観と、ニヒルな姿勢。そんな作風とともに、誰もが心震える読書体験ができるのが、本作の空襲の時間逆再生。私は文字通り、体ごと震えました。
61位 オリエント急行殺人事件/アガサクリスティ
大雪のため立ち往生した国際列車の車内で、老富豪が殺された。犯人は乗客の中にいる。大胆なトリックとポアロの名推理が冴える傑作ミステリ。
これほど楽しいミステリがあるだろうか。初心者に読んでほしい。シンプルで、トリッキー。
60位 異邦人/カミュ
アルジェリアのアルジェに暮らす主人公ムルソーの元に、母の死を知らせる電報が、養老院から届く。母の葬式のために養老院を訪れたムルソーは、涙を流すどころか、特に感情を示さなかった。
葬式の翌日、たまたま出会った旧知の女性と情事にふけるなど、普段と変わらない生活を送るが、ある日、友人レエモンのトラブルに巻き込まれ、アラブ人を射殺してしまう。
『太陽が眩しかったから』
失敗したとき、怒られた時、責められた時、人生で一度は真顔で言ってみたい名言。
59位 族長の秋/ガルシア=マルケス
この作品の最大の特徴は、段落のない長い文章で書かれていることにある。まず主人公の大統領に名前はなく(呼びかけられるときは「閣下」)、会話文に括弧もなく、一人称と三人称が混在し、語り手の主体はいつの間にか変わり、時系列も混在する。その縦横無尽な文章世界の中で、主人公である独裁者の残虐な行為と冷酷な行動とともに、彼の絶望と孤独が語られる。
言語と文学性には相関があると思います。どのように考えるか、は、どのような考え方で作られた言語を使うかに、ある程度依存するだろう、とうことです。ということで、全く新しい考え方を得たい時には、未知の言語圏の小説を読むのをオススメします。
ガルシアマルケスはバルガス=リョサより読みやすいです。ノーベル文学賞受賞作家で、同じくノーベル賞作家の大江健三郎をはじめ、筒井康隆、中上健次、池澤夏樹、寺山修司ら、日本の往年の名作家たちにも影響を与えたことでも知られています。
58位 地上最強の商人/オグ・マンディーノ
アラブの貧しい少年が。地上最強の商人となる奇想天外な物語を通して、人生成功の深い叡智を解き明かす
ビジネス書としても読めます。思想書としても読めます。
57位 アルケミスト/パウロコエーリョ
スペインの羊飼いの少年サンチャゴは、偶然出会った王様メルキゼデックに導かれ、ピラミッドにあるという宝物を探しに行くことを決意する。
羊を売り十分なお金を持っていたサンチャゴであったが、海を渡った直後、盗賊の少年にお金を騙し取られてしまう。そのため、サンチャゴは1年近くクリスタルショップで働くことになる。
月日が経過し、十分なお金を貯めたサンチャゴは再びスペインに帰って羊飼いに帰るつもりであったが、王様からもらった二つの石「ウリム」と「トムミム」を見て考え直し、再びピラミッドに向かうことを決意する。
こちらもビジネス書、いや自己啓発書風にも読むことができるでしょう。ただし圧倒的にエンターテイメント性が高いものになっています。物語にドキドキワクワクしたい、感情移入して自らを奮い立たせたい方にオススメ。
オバマも大好きパウロコエーリョ。
56位 オズの魔法使い/ライマン・フランクボーム
大たつまきに家ごと運ばれたドロシーは、見知らぬ土地にたどりつき、脳みそのないかかし、心をなくしたブリキのきこり、臆病なライオンと出会う。故郷カンザスに帰りたいドロシーは、一風変わった仲間たちと、どんな願いもかなえてくれるというオズ大王に会うために、エメラルドの都をめざす。
西の悪い魔女は、あの手この手でゆくてを阻もうとするが……。世界中で愛され続ける名作。
本作の登場キャラクターたちを愛せない人がいるでしょうか。人間よりも人間らしい仲間たちとの、心温まる冒険のお話です。
55位 ウェイクフィールド・ウェイクフィールドの妻/N.ホーソーン
ナサニエル・ホーソーンの小説。一人の男がある日ふと妻を置いて出かけ、そのまま帰らずに、妻にも知らせないまま自宅のすぐ隣の通りで20年間暮らした後、なにごともなかったようにひょっこり帰ってきた、という筋の、不条理な味わいを持つ短編作品
『伝記集』、『エル・アレフ』などでおなじみホルヘ・ルイス・ボルヘスに、「およそ文学における最高傑作の一つといっても過言ではない」と絶賛を受けた一冊。ポール・オースター『幽霊たち』の元ネタになるなど、多くの作家に影響を与えたそうです。
幽霊たち、とか本作にもろ影響受けてます。実は私は『幽霊たち』、を先に読んじゃったのですが。文学のレベルを一段押し上げた作品と言っていいんじゃないでしょうか。
54位 あしながおじさん/ウェブスター
孤児院で育った少女ジュディが一人の資産家の目にとまり、毎月手紙を書くことを条件に大学進学のための奨学金を受ける物語であり、ジュディが援助者を「あしながおじさん」と呼び、日々の生活をつづった手紙自体が本作品の内容となっている。手紙中、ジュディ自身が書いたという設定で挿まれる絵もウェブスターの手による。
募金の名前にもなってますよね。狂気的な文学作品ばかり読んでしまうと偏るので、いわゆる『良い話』も定期的に読みたいものです。
53位 ミスター・ヴァーティゴ/ポール・オースター
「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」ペテン師なのか? 超人なのか? そう語る「師匠」に出会ったとき少年はまだ9歳だった。両親なし、教養なし、素行悪し。超然とした師匠の、一風変わった「家族」と暮らす奇妙な修行生活のなかで、少年がやがて手にしたものとは――。アメリカ文学界きっての語りの名手が編む、胸躍る歓喜と痛切なる喪失のタペストリ、心に迫る現代の寓話。
ミスター・ヴァーティゴ | ポール オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp
ポールオースター大先生の名作です。普通の作家ならご都合主義的とも取れる展開を、説得力のある語り口で極上の物語に仕上げる名語り手です。あと、ポール・オースター作品全体にいえることですが、喪失感を感じさせる天才だと思います。物語の主人公たちは色んなものを失っていきます。何が残っているのだろうというくらい、奪われ、踏みにじられたあと、つばを吐きかけられさえします。それでも私は彼の作品を愛します。決して絶望だけの話ではないから
52位 ハウルの動く城/ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
呪いをかけられ、90歳の老婆に変身してしまった18歳のソフィーと、本気で人を愛することができない魔法使いハウルの、ちょっとふしぎなラブストーリー。
映画とは大きく違います。原作の方がファンタジーっぽく、読みどころが多いです。私の家族は映画を見て、あまりの違いに憤慨していました。
ちなみに私は映画も好きです。久石譲の楽曲素敵ですよね。メインテーマ『人生のメリーゴーランド』題名も良い。
51位 微笑を誘う愛の物語/ミランクンデラ
人生の機微、いたずらな運命、愛の皮肉…。“小説のマジシャン”クンテラが、巧妙にそしてエロティックに描きだす、ちょっとユーモラスでちょっと苦い、クフの大人の恋物語。
クンデラ作品をオススメするのに短編かよ、と読書家の方はきっと思われるでしょう。
ただ、私は彼の短編も相当好きです。マジックリアリズム、と言えばクンデラ、と言う人もいるくらいなので、読みにくいのでは?と読まず嫌いしている方もいると思いますが、全くその心配はありません。ラテンアメリカのマジックリアリズムとは違って、
違和感の小さい表現なので、すらすら読めます。クンデラを読み始めるきっかけとしてどうぞ。
50位 ほとんど記憶のない女/リディアデイヴィス
「とても鋭い知性の持ち主だが、ほとんど記憶のない女がいた」わずか数行の超短篇から私小説・旅行記まで、「アメリカ小説界の静かな巨人」による知的で奇妙な51の傑作短篇集。
作品と作者の距離がものすごく近い、そう感じられる。そして知的だけれど人間味のある、ものすごい文章を読むことができます。
49位 柔らかい月/イタロカルヴィーノ
変幻自在な語り部Qfwfg氏が、あるときは地球の起源の目撃者、あるときは生物の進化過程の生殖細胞となって、宇宙史と生命史の奇想天外な物語を繰り広げる。幻想と科学的認識が高密度で結晶した傑作。
ナイフ投げ師のミルハウザーが細部にこだわり抜く妄想家ならば、イタロカルヴィーノ(の本作)は、宇宙的マクロ視点から妄想を始める、奇想天外で型破りなストーリーテラー、という感じでしょうか。手塚治虫『火の鳥』にも通ずるような、『神目線』で創造を膨らませた独特の短編は、深夜のひとり読書にオススメします。巨匠の短編集です。
48位 恐るべき子供たち/コクトー
1929年コクトーが40歳の時に書き上げた小説であり、代表作の一つに数えられる作品。コクトーはこの作品をアヘン中毒の治療のために入院している時に、わずか3週間足らずで書き上げたとされる。エリザベートとポールの姉弟2人だけで暮らす世界が、ダルジュロスという美しい少年との出会いで崩壊して行く物語で、コクトーは己の運命の受諾というテーマを訴えている。
コクトーは、小説だけではなく、詩や小説・映画・批評など、あらゆるジャンルの文学に精通しているが、その中でも『恐るべき子供たち』は古典文学の悲劇を思わせる、最もコクトーらしさが出ている作品といえる。
光文社の新訳古典シリーズの中でも『当たり』の一作。古典は身を滅ぼすようにして書かれた作品が多く残っていておもしろいです。
47位 アムニジアスコープ/スティーヴエリクソン
アメリカ最高の幻視作家による〈愛〉の物語。
アメリカ現代文学を代表する作家エリクソンが、近未来、大震災が起きて廃墟と化した幻想的なLAを舞台に、これまで自分が関係してきた女性たちとの記憶を生々しく甦らせ、愛について考察する。アムニジアスコープ | スティーヴ エリクソン, Steve Erickson, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp
この物語に書かれているLAは廃墟と化しています。お酒に酔ってぼんやりしながら読むと、廃墟の雰囲気がどこか官能的に感じられるほどです。
46位 はつ恋/ツルゲーネフ
年上の令嬢ジナイーダに生れて初めての恋をした16歳のウラジミール――深い憂愁を漂わせて語られる、青春時代の甘美な恋の追憶。
これ、女性にぜひ読んでもらいたいんですよね。主人公は16歳の少年です。古臭いですが、あまり男って時代を経ても進歩していないんだなと思いますね。(今の男性たちを見て)
45位 ハリーポッター/J.K. ローリング
1990年代のイギリスを舞台に、魔法使いの少年ハリー・ポッターの学校生活や、ハリーの両親を殺害した張本人でもある強大な闇の魔法使いヴォルデモートとの、因縁と戦いを描いた物語。1巻で1年が経過する。
『自分が何者であるかは、持って生まれた才能で決まるのではない。自分がどういう選択をしたか、で決まるのじゃ』 byダンブルドア先生
私の人生の中でもとても大きな言葉です。何かあるたびに思い出しています。誰がお気に入りか、と言われれば、フレッドとジョージです。彼らのように生きていきたいと思っています。
44位 サキ短編集/サキ
ビルマで生れ、幼時に母と死別して故国イギリスの厳格な伯母の手で育てられたサキ。豊かな海外旅行の経験をもとにして、ユーモアとウィットの糖衣の下に、人の心を凍らせるような諷刺を隠した彼の作品は、ブラックユーモアと呼ぶにふさわしい後味を残して、読者の心に焼きつく。「開いた窓」や「おせっかい」など、日本のSFやホラー作品にも多大な影響をあたえた代表的短編21編。
O・ヘンリーと並ぶ短編の名手として、よく比較されますが、私は断然サキ派です。ソリッドで洒落た文章に、無駄なく張り巡らされた伏線に、痺れること間違いなしです。
43位 忘れられた巨人/カズオイシグロ
奇妙な霧に覆われた世界を、老夫婦は息子との再会を信じてさまよう。ブッカー賞作家が満を持して放つ、『わたしを離さないで』以来10年ぶりの新作長篇
カズオイシグロは『信用できない語り手』という手法を効果的に使います。『信用できない語り手』とは、簡単に言うと、読者に向かって嘘を含んだ情報を与えながら物語を進めるのです。これはともすれば、読者との信頼関係が崩れかねず、私個人的にはあまり好きな手法ではありません。(味方だ、と思っていたら最後の1ページで実は敵だったと判明する、みたいな展開が好きではないのです)
ただしカズオイシグロの作品には必然性があり、設定があり、テーマがあります。生存している作家の中で、最も好きな作家のうちの一人です。
42位 赤と黒/スタンダール
製材小屋のせがれとして生れ、父や兄から絶えず虐待され、暗い日々を送るジュリヤン・ソレル。彼は華奢な体つきとデリケートな美貌の持主だが、不屈の強靱な意志を内に秘め、町を支配するブルジョアに対する激しい憎悪の念に燃えていた。僧侶になって出世しようという野心を抱いていたジュリヤンは、たまたま町長レーナル家の家庭教師になり、純真な夫人を誘惑してしまう……。
『町を支配するブルジョワに対する激しい憎悪の念』を持つ青年ジュリアンが主人公。野心、まだ持ってますか?ぬるま湯に浸かっている大人向けです。
41位 審判/カフカ
Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない.なぜ裁判に巻き込まれることになったのか,何の裁判かも彼には全く訳が分らない.そして次第に彼はどうしようもない窮地に追い込まれ…….全編を覆う得体の知れない不安.カフカはこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう.
洗脳、印象操作、現代にも通じるテーマが描かれています。未来を先取りしていたとしか思えないカフカの作品たち。読中、読後、心から天賦の才を身近に感じることができるでしょう。光文社の新訳も注目されているので既読の人はぜひそちらも(私は未読です)
40位 サーカスの息子/ジョンアーヴィング
カナダ在住の医師ファルークは、サーカスの小人の遺伝子を研究するために、時々故郷のボンベイに戻る。そんな彼には、息子同然の俳優ジョン・Dが主演する人気インド映画、「ダー警部」シリーズの覆面脚本家という顔もあった。
昨今続発する映画を真似た娼婦殺人事件と、20年前遭遇した殺人との類似に気づいた彼は――。インドを舞台に奇想天外な物語が絡み合う、巨匠異色の大長編。
ジョン・アーヴィングらしからぬ作品ではあるものの、あえて、彼の作品を初めて読む方に読んで欲しい。『どこにも所属できていない』感はまさに今の時代の空気にぴったりだと思うのです。美しいラストにも期待してください。
39位 若い藝術家の肖像/ジェイムズジョイス
主人公スティーヴン・ディーダラスは、ジョイス自身がモデルとされ、代表作『ユリシーズ』の主人公の一人でもある。
ディーダラスは、ギリシャ神話のダイダロスと、太陽の近くまで飛んで墜落したその息子であるイカロスの説話をふまえている。
カトリックの信仰をすてて文学を志すディーダラスの、幼年時代から青春時代にいたるまでを描くもので、教養小説的な要素や自伝小説的要素もある。 その文体は、童話、教科書、礼拝、説教、美学論、日記などさまざまである。
少し難解なので、入れようか悩んだのです。ただ読書の楽しみに溢れた本だと思います。『私だったら・・・』的な妄想がいつも膨らみます。自由を愛する人にオススメです。
38位 イソップ寓話集/イソップ
子ども向けの人生訓話として世界中の人々になじみ深いイソップの動物寓話-実は,歴史上の人物としてのイソップ(アイソーポス)が作ったと実証できる話はひとつもない,いわば「イソップ風」寓話集であるが,そこには,読み手の立場によってさまざまな解釈が可能な,実に奥深い世界が展開されている.
手元にあると、役に立ちます。
37位 若かった日々/レベッカ・ブラウン
子供の頃の記憶、同性への先輩への憧憬、母の死、父との葛藤……。かつて経験した強烈な瞬間を、烈しい幻視力によって生き直した著者の自伝的作品集。
自分の心を削って書かれたということが、苦しいほどに伝わってくる作品です。家族をテーマにした米女性作家の作品は、鋭く尖っていて、力強い。ロマンチックな話に飽きている人にオススメです。
36位 アーサー王/ローズマリサトクリフ
カーネギー賞作家であるサトクリフが、アーサー王と円卓の騎士、魔術師マーリン、そしてブリテンの善と栄光を求める彼らの終わりなき戦いと伝説を、豊かな物語性と巧みな構成力、詩的な文章で彩られた魅力的な登場人物などで、美しくも神秘的な物語として紡ぎ出す。
エクスカリバーを抜く伝説の勇者。聖剣伝説はじめ、ドラクエやFF、多くのテレビゲームJRPGが影響を受けているのではないでしょうか。
35位 シカゴ育ち/スチュアート・ダイベック
7つの短篇と7つの掌篇が織りなす美しく力強い小説世界。シカゴに生まれ育ったダイベックは、ユーモアと愛惜をこめてこの古い湖岸の街の人間模様を描き出す。
ふとした出来事が、その後の全てを変える原因となっている。誰しもこんなことを思ったことがあると思います。そんな瞬間を描いた短編集。感受性が目覚めます。
34位 動物農場/ジョージ・オーウェル
動物たちが飲んだくれの農場主を追い出して理想的な共和国を築こうとするが、指導者の豚が独裁者と化し、恐怖政治へ変貌していく過程を描く。スペイン内戦に自ら参加した体験を持つオーウェルが、人間を豚や馬などの動物に見立てることで20世紀前半に台頭した全体主義やスターリン主義への痛烈な批判を寓話的に描いた物語である。
風刺小説の中でも最もわかりやすく、有名なものはこれでしょう。主義主張は脇においておくとして、読み物としてかなり良くできてます。
33位 さよなら僕の夏/レイブラッドベリ
おかえり、ダグラス――。永遠の名作『たんぽぽのお酒』で描かれた、あの夏の日がよみがえる。あたらしい物語は一年後、夏の終わりにはじまる。子どもたちを支配する老人たちとの戦い、時計塔の爆破、はじめての異性への感情……。人生との和解を学びはじめた少年の心の揺らぎをあざやかに描いた、名手ブラッドベリによる少年文学の最高傑作。
さよなら僕の夏:Farewell summer
なんと詩的で美しいタイトルでしょうか。『たんぽぽのお酒』を読まずにこれを読むな、と古くからのファンは言うでしょう。しかし私はこちらをオススメします。今は自動で考えてしまっていることの数々のこと(夏休みはいつか終わってしまう、自分はいつか死んでしまう、etc)に初めて気づいた時の気持ちをどうしてこんなに瑞々しく書けるのでしょうか。
ブラッドベリ作品を順番に読みたい人は『たんぽぽのお酒』からどうぞ。
32位 ティファニーで朝食を/トルーマンカポーティ
第二次大戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった……。
ヒロインホリーの名言の数々。
『慣れるっていうのは死ぬっていうのと同じよ』
『みんな私がちょっとレズっ気があると思ってるわ。実際そうよ。だから何?男ってそそんなにがっかりしないわ。むしろ興奮するんでしょ。知ってるわよ』
オードリー・ヘプバーンの映画原作としても有名です。
31位 ホーカス・ポーカス/カートヴォネガット
二〇〇一年、アメリカはまたも破産に瀕し、企業の大半が外国に買収された。ベトナム戦争中にばかげたスピーチ、ホーカス・ポーカスで新兵を鼓舞していたハートキは、帰国後、勤めていた大学を首になり、日本人が経営する刑務所の教師になる。だが、そこで大脱獄事件が発生した……ハートキがたどる波瀾の人生。
自国アメリカへの情念で書ききったような小説です。風刺が強すぎるのと、風刺対象となる事象が過去のものになっているということが少し気になります。(ベトナム戦争など)
同時代で読みたかったという気持ちもあるのですが、フィクションの読み物としても間違いなくよく出来ています。
30位 大聖堂/レイモンド・カーヴァー
「ぼくが電話をかけている場所」「ささやかだけれど、役にたつこと」ほか、一級の文学としての深みと品位をそなえた、粒ぞろいの名篇を収録。成熟期の風格漂う、カーヴァー最高の短篇集。
『ささやかだけれど、役に立つこと(原題:a small, good thing)』これがたまらないですね。『言葉にならない感情を、物語として伝える』ことが物語の役割だ、と言われることもあります。まさにそれを実感できる作品たちです。
29位 ライ麦畑でつかまえて/J.D.サリンジャー
インチキ野郎は大嫌い! おとなの儀礼的な処世術やまやかしに反発し、虚栄と悪の華に飾られた巨大な人工都市ニューヨークの街を、たったひとりでさまよいつづける16歳の少年の目に映じたものは何か? 病める高度文明社会への辛辣な批判を秘めて若い世代の共感を呼ぶ永遠のベストセラー。
説明不要の青少年のバイブル。いつまでもロックな心を持っていたいですね。
28位 グリーン・マイル/スティーヴン・キング
932年、アメリカの刑務所。死刑囚監房で看守を務めるポールのもとに、一人の大男が送られて来る。双子の少女を強姦殺人した罪を持つ死刑囚ジョン・コーフィは、その風貌や罪状に似合わないほど弱く、繊細で純粋な心を持っていた。これと同時期に、知事の妻の甥であるパーシーが看守となり、傲慢な態度で他の看守たちから嫌われる存在になる。
ある時、コーフィは触れるだけでポールの重い尿路感染症を治してしまう。彼はその後も、パーシーに重傷を負わされたネズミのミスター・ジングルスの命を救い、これを見た看守たちは、彼はその不思議な力を神から授かった特別な存在なのではと考え始める。同時にポールは悩む。コーフィが電気椅子に送られること、それを行う自分たちは大きな過ちを犯しているのではないかと。
書籍を映画化したもので、映画が書籍を越えるのは大変難しいと思いますが、どうでしょうか。本作は、映画も大ヒットしましたが、やはり原作の方が心に残ります。どうでもいいですがスティーブンキングの立ち位置って日本でいうと誰なんでしょうかね?宮部みゆきとか?
27位 アッシャー家の崩壊/エドガー・アラン・ポー
旧友アッシャーが妹と二人で住む屋敷に招かれた語り手が、そこに滞在するうちに体験する様々な怪奇な出来事を描く、ゴシック風の幻想小説である。ポーの代表的な短編として知られており、美女の死と再生、あるいは生きながらの埋葬、得体の知れない病や書物の世界への耽溺など、ポー作品を特徴づけるモチーフの多くが用いられている。
『現代文学って、古典の解釈をし直した作品や、設定をあえて利用した作品が多くある。なので古典を読んでおくのが大切なんだよ』先生だか友人だったか誰かに言われたのを思い出します。
アッシャー家の崩壊はいつまでも作品のイメージが、脳に焼き付くような物語です。作者は死んでしまっても、読者のなかで作品の一部が残り続けるって素敵だなと。
26位 オイディプス王/ソポクレス
古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが、紀元前427年ごろに書いた戯曲。ギリシャ悲劇の最高傑作として、最も挙げられることが多い作品である。テーバイの王オイディプスの物語を題材とする。
この作品のテーマもも現代の物語に何度も使われています。『父を殺し母と交わる』精神的に深淵なテーマほど、身体性も増すのだ、ということを気づかせてくれる作品です。
25位 蠅の王/ウィリアム・ゴールディング
未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと駆りたてられてゆく……。少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追究した問題作。
前ふりであった『十五少年漂流記/ヴェルヌ』の回収の巻。少年漂流モノを読んだことがない人は、こちらを先に読むのはやめてください。少年だって小さな大人です。
24位 ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー
私立探偵フィリップ・マーロウは、ふとした友情から見も知らぬ酔漢テリーを二度も救ってやった。そして彼はテリーの殺害容疑を晴らす為に三たび立ち上るのだった!
探偵フィリップ・マーロウの名言『ギムレットにはまだ早すぎる』で有名。ハードボイルド小説に文学性はない、なんて言う人もいますが、私はそうは思いません。謎解きに主眼を置いた推理モノは確かに文学性が出にくいですが、ハードボイルドでは人間を描く、という意味ではむしろ文学性に溢れているのです。
23位 存在の耐えられない軽さ/ミランクンデラ
たった1回限りの人生の、限りない軽さは、本当に耐えがたいのだろうか?ドン・ファンの外科医と田舎娘、奔放な女性画家の3人がたどる愛の悲劇。甘美にして哀切、究極の恋愛小説。
洒落ているというか優雅というか、クンデラの文章はつかみどころのない軽いイメージを与えてくれるのですが、決して中身は薄っぺらくはない、感動を与えてくれる名著です。
22位 ホテル・ニューハンプシャー/ジョン・アーヴィング
家族で経営するホテルという夢に憑かれた男と五人の家族をめぐる、美しくも悲しい愛のおとぎ話――現代アメリカ文学の金字塔。
アメリカ文学の金字塔、その通りだと思います。アメリカ文学の素晴らしいところが詰まっています。喜怒哀楽全ての感情を揺さぶる物語です。
『開いてる窓の前で立ち止まるな:Keep passing the open windows』を、傷ついている全ての人にお送りしたい。
21位 ダブリナーズ/ジェイムズジョイス
アイルランドの首都ダブリン、この地に生れた世界的作家ジョイスが、「半身不随もしくは中風」と呼んだ20世紀初頭の都市。その「魂」を、恋心と性欲の芽生える少年、酒びたりの父親、下宿屋のやり手女将など、そこに住まうダブリナーたちを通して描いた15編。
『ユリシーズ』、『フィネガンズ・エェイク』など難解小説でお馴染みジェイムスジョイスですが、いきなりそちらから読むのは厳しいと思います。まずはこちらの短編集からをオススメします。相性が良さそうだと思ったら上記作品もどうぞ。
20位 ずっとお城で暮らしてる/シャーリィジャクスン
あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている……。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。
しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。
『お茶でもいかがとコニーの誘い、毒入りなのねとメリキャット…。』語り口が絶妙というほかなく、全体を通して狂気に溢れています。直接的な恐怖は描かれてはいませんが、狂気はずっと続きます。思い出す度に体が震えます。
19位 シッダールタ/ヘルマンヘッセ
シッダールタとは、釈尊の出家以前の名である。生に苦しみ出離を求めたシッダールタは、苦行に苦行を重ねたあげく、川の流れから時間を超越することによってのみ幸福が得られることを学び、ついに一切をあるがままに愛する悟りの境地に達する。
――成道後の仏陀を讃美するのではなく、悟りに至るまでの求道者の体験の奥義を探ろうとしたこの作品は、ヘッセ芸術のひとつの頂点である。
求めるもの=悟り を得るための過程が描かれた大作。『(悟りを)教えによって得られたのではありません(中略)悟りを開かれたときあなたの心に起ったことを、あなたはことばや教えによって何ぴとにも伝えたり言ったりすることはできないでしょう』
『ことば』で真剣に描こうとしていますけどね。読み終えると自分も悟れた気になります。
18位 私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン
互いが不可欠になるために、耳を聞こえなくした“私"と、目を見えなくした“あなた"。その愛の行方を描く表題作。二人きりで過ごすはずの、新婚旅行先のコテージに、夫の知人がどっと押し寄せ、困惑する“私"――「結婚の悦び」。
ホームケア・ワーカーの日常を描き、ラムダ文学賞などを受賞、静かな感動を呼んだ『体の贈り物』の著者が鋭く描く、人間関係と愛の不条理さ。幻想的で美しい短編集。
私たちがやったこと | レベッカ ブラウン, Rebecca Brown, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp
表題『私たちがやったこと』、が強烈なイメージを残します。冷静な文章と相まって、鋭く脳に突き刺さります。柴田元幸もいつもどおり素晴らしい。
17位 変身/フランツ・カフカ
世界文学史上最高の問題作。
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。
事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
さくっと読めるので、これを読んでみて、カフカを探求するかどうか見極めれば良いと思います。
16位 ゲド戦記/アーシュラ・K.ル=クヴィン
ゲドは,自分に不思議な力が具っているのを感じ,真の魔法を学ぼうと,魔法の学校に入る.進歩は早かった.得意になった彼は,禁じられた呪文を唱えた.それに応えたのは死の国の影だった.やがてこの影を追い,影に追われ,彼は世界中をさまよい,苦心の末ついにその正体をつきとめるまでのゲドの生涯を描く一大叙事詩.
本作はもはやこども向けの本ではないと断言したいです。哲学的、求道的、なんと表現すればよいのか、とにかくゲドに惚れこんでいってしまうでしょう。巻が進むにつれて、自らも成長していくこと間違いなしです。
15位 空中スキップ/ジュディ・パドニッツ
素っ頓狂ながら、ブラックに満ち、どこか現代のやるせない気持ちに通じる世界を描いたジュディ・バドニッツの23の短編。妄想爆発。シュールでブラック。救われない笑いの世界にようこそ。
ありえない。妄想がひどい。ひどすぎるのを逆に馬鹿にしていて笑える。そのような類の話のはずなんですが、実際にどこかにこんな世界はあるに違いないと思えてしまうんです。こんな読後感は初めてでした。どんな物語にもない感覚を味わいたいなら是非読んでみてください。
14位 1984年/ジョージ・オーウェル
ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……。
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) | ジョージ・オーウェル, 高橋和久 | 本 | Amazon.co.jp
Radiohead も本作にに影響されて2+2=5を作りました。有名なMV(公式ではなかった?) には豚も出てきていますし、意識していますね。全体主義へのカウンターとして書かれている、とされていますが。私はそうは読んでいません。オーウェルがそのように書いていたとしても知りません。読んだあとにどう考えるかは、読者次第です。
13位 妖女サイベルの呼び声/パトリシア A. マキリップ
〔世界幻想文学大賞受賞〕財宝を集めるドラゴン、聡明な猪、黒鳥……伝説の魔法の獣たちとともにエルドの山深くに住む女魔法使いサイベルは、ふとしたことから王の血を引く赤児タムを育てることになった。だが彼は成長するにおよんでエルドウォルドの王位をめぐる、愛と憎悪に彩られた争いにまきこまれていく!
ファンタジーの傑作です。ただしド派手な演出がたくさんある物語ではありません。
凄まじいまでの心理描写に驚きます。読んだ後に自らもが次のステージに昇れる本です。
12位 第三の嘘/アゴタ・クリストフ
ベルリンの壁の崩壊後、双子の一人が何十年ぶりかに、子どもの頃の思い出の小さな町に戻ってきた。彼は少年時代を思い返しながら、町をさまよい、ずっと以前に別れたままの兄弟をさがし求める。双子の兄弟がついに再会を果たしたとき、明かされる真実と嘘とは? 『悪童日記』にはじまる奇跡の三部作の完結篇。
続けて11位に。どうぞ
11位 ふたりの証拠/アゴタ・クリストフ
戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。強烈な印象を残した『悪童日記』の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて共感を呼ぶ。
続けて10位に。どうぞ
10位 悪童日記/アゴタ・クリストフ
戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。
衝撃。
もうその一言です。糸井重里プロデュースの『Mother3』というゲームのキャラクター、リュカとクラウスはこの物語から取られています。
双子の少年のように生きたい。天才にあこがれる全ての人へ。これを読んでから、少しストイックになれた気がします。三作合わせてどうぞ。
9位 グレート・ギャッツビー/フィツジェラルド
主人公のニック・キャラウェイは、中西部出身でイェール大学を卒業後ほどなくして戦争に従軍し、休戦ののち故郷へと帰ってきたものの、そこで孤独感を覚えた。時代は狂騒の20年代のアメリカ。
彼は証券会社で働くことを口実に、1922年ニューヨーク郊外のロング・アイランドにあるウエスト・エッグへと引っ越してくる。隣の大邸宅に住んでいる人物は毎夜豪華なパーティーを開いている。青みを帯びた庭園には男たちや女たちが蛾のように集まって、ささやきやシャンパンや星明かりの下を行き交った。その屋敷の主がジェイ・ギャツビーという人物であると知り、興味を持つ。
ある日、ニックはギャツビーのパーティーに招かれる。しかし、そのパーティーの参加者のほとんどがギャツビーについて正確なことを知らず、彼の過去に関して悪意を含んだ噂ばかりを耳にする。やがてニックはギャツビーが5年もの間胸に秘めていたある想いを知ることになる。
村上春樹訳も出版されていますが、野崎孝訳をオススメしたいです。村上春樹自身の小説は、リズム感がかなり心地よいと思うのですが、翻訳となると少しぎこちなさが出るのが感じられます。その点野崎訳はリズム感満点。切れ味鋭い文章が楽しめます。村上春樹は『翻訳の賞味期限』という言葉を使ったりしますが、まだまだ野崎訳は楽しめるはずです。
さて、村上春樹も『完璧な小説』と語るように、本当に素晴らしい小説です。20代の若者にこんな小説が書けるなんて考えられません。
8位 カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー
物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。
ドスト大先生の最高傑作。大長編ですが、時間を忘れて読み進められるでしょう。テーマが重厚で重いのに、人間ドラマが物語として単純におもしろい。思っているより簡単に読めちゃいます。読まず嫌いの方も是非読んで下さい。
7位 はてしない物語/ミヒャエル・エンデ
バスチアンはあかがね色の本を読んでいた-ファンタージエン国は正体不明の〈虚無〉におかされ滅亡寸前.その国を救うには,人間界から子どもを連れてくるほかない.その子はあかがね色の本を読んでいる10歳の少年-ぼくのことだ! 叫んだとたんバスチアンは本の中にすいこまれ,この国の滅亡と再生を体験する.
数多くの子どもたちに衝撃を与えたミヒャエル・エンデの傑作。大人になってからたくさん本を読んだ玄人読書家たちでさえ、この本がベストだという人は少なくありません。是非この装丁で読んでいただきたいです。
6位 幸せの理由/グレッグイーガン
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/07
- メディア: 文庫
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12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、事故に遭遇して脳だけが助かった夫を復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、全九篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
理系男子/理系女子が大興奮しそうな内容の短編集です。
古代ギリシャでは、自然科学というものは、哲学の一部だった、とされています。すなわち知の巨人というものは自然科学にも造詣が深かったのです。
グレッグ・イーガンは現代の知の巨人と言っていいのではないかと思います。ストーリーテラーとしての資質も兼ね備えていて、隙がありません。
5位 素粒子/ミシェルウェルベック
人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な“愛”を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル―捨てられた異父兄弟の二つの人生をたどり、希薄で怠惰な現代世界の一面を透明なタッチで描き上げる。充溢する官能、悲哀と絶望の果てのペーソスが胸を刺す近年最大の話題作。
過激すぎる言動と思想もあって敵も多いミシェル・ウェルベックですが、作品そのものはとてもレベルが高いと思います。まず作品のアウトラインがかなり考えられているのと、テーマと構成がとんでもなく重厚になっています。ミシェル・ウェルベックの構築した理論を伝えるために、物語を作った、と言ってもいいのではないでしょうか。生存している作家の中で最も注目している一人です。
4位 いちばんここに似合う人/ミランダ・ジュライ
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人――。強烈な個性と奇妙な優しさに満ちた16の短篇
海外文学の醍醐味が詰まっている作品です。アメリカの女性文学×岸本佐知子で外れの作品はありませんが、これは大当たり中の大当たり。適当にめくったどのページから読んでも楽しめる、そんな本です。
3位 ムーン・パレス/ポール・オースター
人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた…。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
ムーン・パレス (新潮文庫) | ポール・オースター, Paul Auster, 柴田 元幸 | 本 | Amazon.co.jp
私が人生の中で最も大切にしている本です。これを読んで、青春小説がより一層好きになりました。ですが、これが青春小説内でのベストというのは揺るぎません。オースター自身が『いままで書いた唯一のコメディ』という意味がわからなくなるほど、語り口が巧妙で、入り込んでしまうでしょう。
2位 わたしを離さないで/カズオ・イシグロ
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
『日の名残り』をまず読んで、そんなにハマりはしなかったのですが、これにはやられました。感情が爆発してしまいました。粗さもありますし、誤解を生むような記述もあります。欠点はいくつかあるでしょう。ただし本作こそ『信頼出来ない語り手』の本領発揮と言えます。現代も物語の可能性はまだまだ広がっていくのだな、と、未来を感じさせる一作です。
1位 フラニーとゾーイー/サリンジャー
アメリカ東部の小さな大学町、エゴとスノッブのはびこる周囲の状況に耐えきれず、病的なまでに鋭敏になっているフラニー。傷心の彼女に理解を示しつつも、生きる喜びと人間的なつながりを回復させようと、さまざまな説得を試みる兄ゾーイー。
しゃれた会話の中に心の微妙なふるえを的確に写しとって、青春の懊悩と焦燥をあざやかにえぐり出し、若者の感受性を代弁する連作二編。
『ゾーイー』が名作中の名作。どこを読んでも新たな発見があり、若かった時の心が蘇る気持ちがします。
私の中で特別な一作です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。ティーンネイジャーの頃、村上春樹に傾倒していたためか、彼の影響を強く受けてますね汗 サリンジャーにヴォネガットにフィツジェラルドなんて、もろですものね。
みなさんのお好きな小説も紹介いただけますとありがたいです。はてなブックマークでのコメントも募集しています。