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やっぱり日本人は議論下手?ロジカルな議論のポイント/『議論の技術』倉島保美

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はじめに:議論について習ったことありますか?

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私の経験上、多くの日本の会社での議論は、単なる意見(というか感想)の述べ合いをするだけのものに過ぎません。もちろん公正な議論が盛んな日本の会社もあるのでしょうが、一般的に、議論と呼ばれるものの着地点は、一番立場の高い人、いわゆる『偉い人』チームが意見を押し通して勝ち、というところではないでしょうか。

日本社会的に見ても、議論になった、という言葉は、感情的な口論になった、に近い言い回しではないでしょうか。しかし議論はもともとが論理的なもののはずです。でも仕方ありません、日本人は議論の方法をきちんと習わない教育システムのもと育っているのですから。

そもそも議論はどういう結果を生むことを期待されているのでしょうか。

欧米の中学、高校では議論の授業というものがあり、大学の授業でも予習してきたものに対する議論で授業が進む、というものもあります。

 

中学校、高校では、議論の方法を学び、大学では、その方法を使って議論を深めます。授業のゴール=議論のゴールは、互いの意見のメリット/デメリットを論理的に検証し、議論を深め、win-winの着地点を見つけることなのです。決して勝つことが目的ではありません。

 

  

目次

 

議論のテーマ&議論を行うべきシチュエーションとは

議論のテーマは、全て3つに分けられます。

  • 施策の検討 (社内mtg完全英語化を導入すべきか、など)
  • 事実の認定 (原子力発電は火力発電より効率が良いか、など)
  • 価値の判断 (成果報酬制度は良い制度か、など)

さて、問題です。論理的な議論に向いているのはどれでしょうか?

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正解は、施策の検討です。

施策の検討では、メリットがあるか、デメリットはあるか、から始まり、それらの大小を見極めて施策を進めるかどうかの判断に使われます。そのため、ビジネスなどではこの施策の検討に論理的な議論が使われることが多いです。

ビジネスの場合、認定される事実はメリット/デメリットの判断に使われる根拠やデータの一要素に過ぎないからです。その調査に時間を割く必要はありますが、議論に大きく時間を割く必要はほとんどありません。価値の判断に関しては、そもそも論理で説明できることではないため、避けるのが無難です。ビジネスでも使われることはありません。

 

論理的な議論の使いドコロは、施策の是非を検討する際、アイデアを深めるために行うのが良いのです。

議論の基本

議論の要素をまずは抜き出しましょう。論理的な議論になった場合、下記要素が議論の要素となります。

  • 主張
  • 主張の根拠(理由とデータ)
  • 論証型反論(反対の表明及び根拠への反論)
  • 論証型反論への反論
  • 論証型反論への反論への反論
  • ......繰り返し

 
まず主張を持ったものが根拠、メリットとともに主張を述べます。反論がある場合は、この根拠に対して反論します。後々になって反論するのはルール違反なので、すぐに根拠について反論し、デメリットがある場合には付け加える必要があります。もちろん新たなデメリット(論点)を持ち出す場合には、根拠が必要となります。

これを繰り返し行っていくことで、最終的には、メリットが大きいか、デメリットが大きいのか判断できるようになります。こうして議論を深めた結果、双方が納得できる結論が出せるのです。

 

議論の注意点

ロジカルに議論を進める上で注意点がいくつかあります。

 

1. 議論が平行線のまま終わるのを避ける

主張に対する反論を行うときは、デメリットだけを述べるのではなく、きちんとメリットへの反論も行う必要があります。

 

例えば原子力発電推進の議論が行われるとしましょう。推進派がメリットを述べて、反対派の意見を述べる段になったとして、ありがちなのが、危険性や巨額な維持費など、デメリットだけを述べるのに留まるパターンです。そうすると、議論は賛成側がメリットを述べるだけ、反対派がデメリットを述べるだけ、ずっと平行線のまま終わる。というパターンです。政治の現場で見たことありますよね?この議論の進み方。

反対意見を言う時は、メリットの根拠を否定する必要があります。その上でデメリットを出す。そhして議論が深まったあとで、どちらが大きいか判断がされるのです。

 

2. むやみに質問に答えない

これは議論が詭弁だらけにならないために気をつけたいことです。議論のルールとしては、言い出したことは言い出した側が立証する、というルールがあります。立証責任はとても重いのです。


例えば、『原子力発電は安全です』と推進派が主張したとしましょう。そこには根拠が必要なはずですが、なかったため、反対派はこう切り返しました『なぜ安全なのですか?』それに対して賛成派が『何故危険だと思うのですか?原子力発電は危険なのですか?』と切り返し、反対派は『危険に決まっています、なぜなら......』と説明を始めてしまう。そうすると危険ということを立証しなければならないのです。

なのでここは直ちに、『まず賛成派の安全に対する根拠を教えていただけますか?』と答えなければならないのです。

立証責任は言い出した側にある、ということは覚えておきましょう。

 

3. 沈黙は了承である

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立証責任は重い、と書きましたが、逆に、反証を行わなければ、主張へ了承されたものと見なされます。これは主張に対する根拠がいくつもある時にも同じで、全てに反証を行わなければならないのです。あとから蒸し返すのはルール違反です。


ただし、立場が変わってもし議論相手から反論が出てこなかった場合には、『(反論がなかった)この点に関しては、同一見解ということでよろしいでしょうか?』という言質を取っておくと良いでしょう。

 

さいごに:論理的な議論ができるのは議論のルールを知る者同士だけ

身も蓋もないことを言いますが、会社内での施策検討などの議論の際には、社内政治や部署間の力関係が大きな意味を持ちます。そこにいくらロジカルな議論をしようとしても、ダメな場合はダメです。素直に根回しや味方を増やすなどして議論に臨みましょう。

残念な話ですが、それが現実です。ロジカルな議論ができるのは、その理屈を知っている者同士だけなのです。

ただし、議論の方法を知っていて損はありません。何より予め議論を深めることで、考えそのものが深まり、説得力のある主張が行えるからです。

 

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